帯状疱疹

眼合併症編

 

 三叉神経第1枝では約半数で眼合併症が生じる

 特にハッチンソン徴候陽性だと高率。

 

 

 鼻背部は1枝と2枝の二重支配

 鼻背部はV1領域から分枝した滑車上神経鼻毛様体神経に加え、

 V2領域から分枝した眼窩下神経も分布しており、二重支配となっている。

 

 そのため、V1、V2いずれもハッチンソン徴候を呈することが起こりうる。

 

 しかし、眼球内は第2枝の支配を受けていないため、

 V2単独領域であれば眼合併症の恐れはない。

 

 V1+V2重複例であればV1に準じて眼合併症を考えなければならない。

 

 眼合併症としては角膜炎、虹彩炎、ぶどう膜炎、結膜炎など

 

 外眼筋麻痺は眼合併症全体の3〜10%

 罹患神経は、動眼神経、外転神経、滑車神経 の順。

 複数の神経が同時に障害されることもある。

 外眼筋麻痺の発生機序は不明。

 (解剖学的に三叉N、動眼N、滑車N、外転Nが密接していることが関係)

 診断;造影MRIが有用。(海綿静脈洞の肥厚と造影効果)

 治療;神経浮腫軽減・抗炎症作用目的にステロイドと、抗ウイルス薬併用が行われることがある。

    PSL30~50mg/日、漸減しながら2〜3週間投与

 予後;比較的良好で自然経過でも3ヶ月程度で回復するとの報告もあるが、

    ステロイド投与した方が回復が早い

 

 

 眼症状は遅れてやってくる

 続発性緑内障なども知られており、後遺症として視力障害を来たす恐れもある。

 

 ハッチンソン徴候を伴わないV2領域帯状疱疹で、加療後3週後に急速な視力低下が見られ、VZVー急性網膜壊死(acute retinal necrosis : ARN)の報告もある。

 VZV-ARNは視力予後が非常に悪く、片側発症でも約70%が両側性に進行するとされ、免疫抑制患者ではさらに対側発症頻度が高い。

 

 後日発症のリスクも十分に説明する必要がある。

 

 

 

ハッチンソン徴候は、1863年Hutchinsonによって皮疹が鼻尖部に生じた場合は眼症状の頻度が高いと提唱されたことに始まり、1969年にWelschが鼻毛様体神経の感染と関連付けた。

 

 

 

 

参考;Visual Dermatology Vol.18 No.9 2019 p896-897、p917-918

   『抗がん薬治療中に発症した水痘・帯状疱疹ウイルスによる急性網膜壊死』

   皮膚臨床63 (13) ; 2087-2091, 2021『動眼神経と外転神経麻痺をきたした汎発性帯状疱疹の1例』