たぶん、おそらく…



幾らか加減を知った生温い夜

まだこれから賑わう繁華街

ボクは信号機の赤色に睨まれながら
少しの間そこに留まることにした


無意識に人の流れが視線を奪う

ふと、一人に気が移る


何のへんてつもないオジサン


スッと、僕の横で足を止める

フッと、側の電柱を見上げた



その瞬間



「ブゥ~~~フゥィ、プピッ」



……



…ん?



およそ信号待ちでは聴くことのない音

瞬間的に記憶の中で一致するモノを探し出す


あぁ…

やっぱり…


気付いた時には既に

刺激臭が僕の鼻を犯す


息絶え絶えに辺りを見回すが

オジサンの姿はもう無い



なぜここで

なぜ天を仰いで

なぜ…なぜ…


なぜ…屁を…




疑問と香りだけを残し
消えたオジサン



おそらく、

…いや間違いなく

オジサンに見えた物体



あれは妖精だろう。