【D.Gray-man夢小説】エア編 第1章  暗黒の森3 | 緋月の未来予想図

緋月の未来予想図

今宵、貴方はこの世界に迷い込むでしょう
月も緋色に染まって、今夜きっと災いが降り注ぐでしょう…



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※注意※

この「D.Gray-man夢小説」には、カップリングの設定はありません。

原作と違うのは、緋月が作ったオリジナルキャラクターが出てくる事が主です。

そして視点ですが、最初はアレン視点から始め、途中でオリキャラの視点へと

変わる傾向があります。ご了承下さい。





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汽車から降りると、‘暗黒の森’付近にある村、アドニアはもう夕暮れで直ぐにでも宿を見つけないと、間に合わないと判断される時刻だった。


それと比例するように、現在のアレンの表情も酷くどんよりとしていた。


「…ラビ、いつも言いますけど、人が寝てる時の顔に落書きするのはやめてください…」


「別にいいだろ?汽車の中は暇だし、退屈だし、やる事ないんさよ」


――子どもかッ。僕より年上なはずなのに、どうして思考回路がこんなにも違うんだろう…。


一見楽しそうな会話を繰り広げながら、歩いて10分くらいでアドニアの村に着いた。村の入り口には「ようこそ、アドニアへ!」と書かれた看板がかかっていた。


しかし、村の中は人一人外に出ておらず、どの店も営業していなかった。看板とは真逆な歓迎をされているようだ。


「コムイさんの話とは全然違いますね。もっと賑やかな印象だったのに…」


「近くにあんな不気味な森があったら、仕方ないさよ。自分の子どもが行方不明だってのに、笑顔で営業してる方が異常ってもんさ」


正当な意見を述べながら、ラビは村の建物を興味有り気に見回した。その際に「宿屋」と書かれた建物を発見し、迷いもなく歩み寄り、宿屋のドアを開けた。


「誰かいないか――………あ?」


思わず気の抜けた声を出してしまった。その声を聞きつけたアレンも宿屋に足を踏み入れると、同じように目をパチクリさせて不思議そうな顔をしながら宿屋内を見つめた。


宿屋内は村の外見とは違い、華やかな内装となっていた。花瓶に活けられた花は生き生きと咲き誇り、店内を明るく彩っていた。


その内装を裏切らない満面の笑みを浮かべながら会話をしている男女がおり、まるで何の事件も起こっていないような状態だった。


「…どういう事さ、アレン。俺達何しにこの村に来たんだっけ?」


「僕に聞かないで下さい」


困惑するラビに向かって即答するアレンも、状況が理解出来ていなかった。コムイによると、村の子どもの殆どが行方不明となっていて、何日も帰ってきていない。そんな中で笑顔で営業している店を目の当たりにすれば混乱は当たり前とも言えるだろう。


「あら、そこの旅人さん。今夜はこの宿でお泊りですか?」


会話を楽しむ男女のうち、女の方がアレンたちに声をかけた。呆然と入り口に立っていた二人はハッとして、慌てて女の質問に答えた。


「あ…あぁ、そうさ。今日はもう遅いし、この宿にしようかと思ってたところなんさ」


「お二人はこの宿の従業員の方ですか?」


「私達はこの村に住む住人だよ、ここにいるのは偶然。この宿の従業員はあっちさ」


女が奥を指差した。指が指す方向を見ればそこには質素なワンピースを着た、髪の長い女性がいた。彼女は暗い表情をしており、女に指を指されてようやくアレンたちの存在に気付いたようだ。


「あ…い、いらっしゃいませ」


暗い表情からの無理矢理な笑み、外見だけで見ると20歳は超えていないだろうと思われる。頬には涙腺の後も感じられる。


「あの、お二人様ですか?」


「そうさ。部屋ってまだ残ってる?」


「この村に訪れる人は最近では減ってきています。お二人別々のお部屋のご用意でも構いませんよ」


「お気遣いありがとう御座います。でも僕らは一緒の部屋で大丈夫です」


アレンが女性に向かって微笑みかけるが、女性は目線を逸らしてカウンターに鍵を取りに行った。その様子を見たラビがアレンに小さく耳打ちをする。


「…あの従業員暗いな、さっきまで泣いてたような雰囲気だし…聞き込みは彼女にしてみようぜ」


「構いませんけど、そちらの男女にも聞いてみましょうね」


「勿論さ」


アレンから離れると、同時に彼女が鍵を渡しに近づいて来た。その鍵を受け取ると彼女は2階を指差しながら説明をしてくれた。


「この階段を上って、右手にある部屋が貴方方のお部屋になります。食事は私に言って下されば用意しますので、どうぞごゆっくりお寛ぎ下さい」


「ありがとうございます。よろしければ、貴方のお名前も教えて頂けますか?」


「私はシルフィーと申します。それでは…失礼します」


シルフィーが二人に向かって一礼すれば、直ぐに奥の部屋へと行ってしまった。その時のシルフィーの肩は小刻みに震えていた。まるでここから早く逃げ出すようだった。


「…アレン、今は荷物でも置きにいこうぜ」


「そうですね。今シルフィーさんに深追いする必要はないですから」


アレンとラビはお互い顔を見合わせると、小さく頷いて階段を上って部屋へと向かった。





続く。