―――平日で人影も疎らな街中を俺とユカは歩いていた…。
「それにしてもhidって天才?こんなの獲っちゃうなんてっ!!」
ユカは先程、俺がゲーセンでゲットした大きめのぬいぐるみを重そうに抱えていた。
「ねぇ、ますます幼く見えるんだけど…」
“これじゃ少女を連れ回してる変質者だよ、まるで…”
「もぉ!人が気にしてることズバッと言うなぁ!このっ!このっ!」
「ぬいぐるみでパンチしてくるなっ!!そうゆう行動を含め幼いと言ってるんだっ!!」
しかし…これはこれで可愛いのだが、如何せん周りの視線が痛い。
そこで俺は一計を案じてみた。
「よく聞け、俺達は仮の恋人同士だ。だが、他人はそう解釈してくれないだろう。とくに近所の連中には要らぬ疑念を抱かせたくない。」
「ぅ…仮の恋人だなんて…今、言わなくても…」
「最後まで聞きなさいっ!そこでだ、今日のデートの間は”兄妹“という設定でいこうと思う」
「ほぇ?…兄妹?」
「そ、兄妹」
「へぇ~おもしろそぉ、じゃぁさ!なんて呼ぼうかっ!?やっぱりぃ、ん~?…hidお兄ちゃん?hidにぃ?もしかして私がお姉ちゃんっ!?」
「…最後のは無い…」
「そぉ~?ならばシンプルに“お兄ちゃん”でっ!!」
「それでいいよ…それにしても嬉しそうだな?」
「うんっ!だって私一人っ子だったから兄弟とか姉妹にすっごい憧れてたの!!」
「それはよかった」
「えへっ、兄妹でデートなんて、すっごい斬新っ!!楽しみだねっ!お兄ちゃん!!」
¨お兄ちゃん…か…ちょっと癖になりそうだな¨。
その後、ウィンドウショッピングなどを楽しみ、小腹が空いた俺達は休憩を兼ねてマックに入った。
「…いいなぁ~羨ましぃ」
「何が?」
「マックの店員さんよ、私こんな店でバイトしたかったの…」
「すればいいじゃないか?」
「うぅ~ん…それはちょっと難しいかな…親も反対だったし…」
「難しい?ま、いいや…でも何でマックなんだ?」
「高校に入学したてぐらいの頃に親友の子がマックでバイトして、すっごい楽しいって言ってたからやってみたかったのよね…」
「ふぅ~ん…でも、ユカの両親は厳しいんだな。 ファーストフードはダメ、バイトもダメ」
「そ、そうね、そういう事になるの…かな…」
釈然としない返事に俺は質問を投げ掛けてみた。しかし…。
「ふふっ、教えてあげなぁーい。秘密よ、ひ・み・つ♪」
人差し指を口に当てる仕草を見せるユカ。
「何だよ、そりゃ?」
「だから、秘密。秘密や謎が多い女ってとてもステキだと思わない?」
「また変な持論を展開しだしたね…もういいよ、聞かないよ。」
「そーよ、それが賢明ってやつよ。それじゃ出ましょうか」
こうしてマックを出てデート再開。
“しかしケースの中身といい、これまでの言動といい、この娘は何かを隠している…まさか…”
一瞬だけの過った悪い予感を打ち消す。
「ねっ?お兄ちゃん♪あそこのお店に寄ってみない?」
不意にかけられたユカの声に意識を引き戻される。
「ん?あ、あぁいいよ」
たいして深く考えずに返事をしてしまったことに後悔した。
なぜならユカの指差す場所はジュエリーショップ。
要するにここでの買い物は少々値が張ってしまう。
「お、おいっ!ちょと待っ…」
「わぁ~!このリング、かわいぃー!」
¨遅かったか…¨
かくしてペアリングを購入するハメになったのだが、ユカが店員の前でもお構いなしに“お兄ちゃん!”を連呼するために白い目で見られたのは言うまでもない。
店を出てからの俺の説教タイムにも、ユカはうわの空で…
ため息の先の太陽はもう西の空で…
二人で同じ部屋に帰ること…
¨恋愛ごっこ¨とはいえ、少し幸せを感じている俺がいた…
こうして日は暮れ、三日目の夜を迎える―――
《彼氏?彼女?》後編終わり!!
次回《若奥様!?と晩餐》へ
