◆サッカー選手 傷害発生率を下げる最も効果的な方法とは? | 和久井秀俊オフィシャルブログ「海外サッカー選手のホンネ」Powered by Ameba

◆サッカー選手 傷害発生率を下げる最も効果的な方法とは?

和久井です。

選手の傷害発生率を下げる最も効果的な方法とは?

以前、「サッカー 選手の怪我の頻度は?」で、トレーナー・医学的・選手・審判員の視点から傷害発生率を低下させるために重要なことが書かれている。

今回はこれらをより深く見ていきたいと思います。今回もサッカーに関連した傷害や病因などの研究を目的とした、FIFAが設立した医学評価研究センターの調査結果を参考にします。(要約)

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FIFAおよび管理団体:
また、管理団体は、特にユース選手が1シーズン内に試合に出場できる上限を定めることもできる。さらに、管理団体は、サッカー界で反ドーピング規則を実施する手続を定める責任も負う。

審判員:
選手によるタックルと、それによる傷害およびそれに対する審判員の判定は、試合の結果に大きな影響を及ぼすことが少なくない。
審判員は選手が怪我をしたことを認識し、適切な診断・治療を受けなかった場合に傷害が及ぼす短期的・長期的影響を知っている必要がある審判員は試合中に医療スタッフと効果的なコミュニケーションをとらなければならない。残念ながら審判員は、選手が駆け引きのためや、他チームに対して不当に有利な立場に立つために、怪我をしたふりをする状況で評価を行わなければならない場合が少なくない。審判員には、真の傷害や偽装の傷害につながる状況の見分け方、解釈法および対処法に関する指導が行われている。
審判員の身体能力と知覚認知的解釈技能の向上を目的とするそれだけではファウルプレーによる怪我の件数は減らない。それは選手の行動の変化によってしか達成できないからである。

選手:
医学的視点からは、怪我をした後もピッチでプレーを続行するのかどうかの意思決定過程に医学的意見を織り交ぜられるように、必ず事故時に傷害の程度を評価することが望ましい。しかし、実際の事故時には、理学療法士やドクターの医学的意見を求めることなく、選手が意思決定者の役割を引き受けることが多い。チームドクターが報告した傷害のうち、試合中にドクターの診察を受けなかった事故に起因するものが高い割合(62%)を占めることは、この問題の重要性を示している他の選手に怪我をさせた選手はその行為に対して責任を負わなければならず、審判員は加害選手がサッカー規則に違反していれば一貫した処罰を与えなければならない。選手はスポーツにおける反ドーピング規則を遵守するとともに、ドーピング検査プログラムに公然と誠実に協力する特別な責任を負う。

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コーチ陣:
スポーツ科学の技能を持つさまざまな専門家は、数多くの身体的・認知的分野(身体評価、パフォーマンスの向上、傷害の予防・回復など)で選手をサポートすることができる。
フィットネスアドバイザーは、各選手の弱点(筋力、持久力、スピード、柔軟性など)を改善するため、選手別のトレーニングプログラムを作成することができる。
栄養士は、環境条件や代謝率、身体活動に基づき、食事評価や、栄養素・水分の必要摂取量に関するアドバイスを行うことができる。
スポーツ心理学者は、競技中に各選手とチームがどのようにプレーし、競技中の状況に対してどのように行動し対応するかに影響を及ぼすことができる。また、傷害後の治療・リハビリテーション中の選手の態度と回復にも影響を及ぼすことができる。スポーツ科学の専門家が大いに役立つ点は、医療チームと連帯して、傷害治療後のリハビリテーションプログラムおよび競技復帰基準を作成できることである。それは、効果的なプロトコールにより選手の再受傷レベルが低下するからである。

医療チーム:
ドクターがチームの傷害管理システムの中心的位置を占めている国々もあり、理学療法士がその役割を果たしている国々もある。怪我の治療がどのように管理されているにしても、傷害の種類、重症度、レベルに合った医学的サポートを提供することが不可欠である。このため、例えば、受傷時の現場応急処置や理学療法から、試合後の整形外科医や理学療法士、マッサージ師、カイロプラクティック師、歯科医、放射線科医によるサポートに至るまで、さまざまな医療スタッフが選手をサポートしている。医療チームの主な役割は、軽い打撲傷や擦過傷から、選手生命を脅かす急性・慢性損傷までのさまざまな傷害を対象として、傷害の予防、治療、リハビリテーションの問題に対処する効果的かつ効率的な管理法を提供することである。治療とリハビリテーションが終わったら、医療チームはスポーツ科学の専門家とともに、選手がトレーニングと競技に復帰する管理を行わなければならない。

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様々な視点から選手の傷害発生率を下げる対策案が書かれていて、この調査結果ではどの視点からも改善できる余地はあるようですが、「選手の傷害発生率を下げる最も効果的な方法」については説かれていません。

起因のすべては選手にあり、選手それぞれの管理や責任を高めることが最善な方法かもしれないが、現実は難しい。

そこで僕自身が非常に関心を持った部分は、FIFAおよび管理団体の予防策として挙げられている「ユース選手が1シーズン内に試合に出場できる上限を定めることもできる。」という部分。

実は最近よく話題になっている”試合数”(国内リーグ戦、カップ戦、CLやEL、さらに代表戦、チャリティマッチなど)の多さに全く選手の休む暇もないと多くの人が異を唱えています。その解決案として浮上した、大会削減。

しかし、どんなに大会数を制限しても一人の選手の出場時間が変わらなければ、傷害発生率は変わりません。

こういった調査結果をより向上させると同時に、ユース選手だけでなくプロ選手の出場時間を制限することは傷害発生率だけを考えると最も効果的な方法なのではないでしょうか。

もちろん必ずしも一定の試合時間数を超えると傷害が発生するというデータもなく、個人の記録、チーム構成や契約などそれに伴った改善策が必要になりますが、多くの選手とスポーツの価値を守る上でもより検討されるべき対策ではないでしょうか?