グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ/デイヴィッド・ミーアマン・スコット
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この本は万人にオススメできないけれども、なぜアップルが圧勝し、オバマが大統領になったのか、ということに対してヒントが欲しい人は読むべきだと思う。最近読んだ本では、私の中ではもっともインスパイアされて、今のひふみ投信やレオス・キャピタルワークスの運営にもろに活かせる本だったので、読み終えて非常にわくわくした。AIJ投資顧問事件などで揺れている今こそ、防衛するのではなくて、もっと新しい価値観というか地平線を目指すべきなんではないかということを強く実感した。

1,ユニークなビジネスモデルをつくろう
2、忘れられない名前をつけよう
3、バラエティに富んだチームを作ろう
4,ありのままの自分でいこう
5,「実験」を繰り返す
6,新しい技術を取り入れよう
7,新しいカテゴリーを作ってしまおう
8,変わり者でいいじゃないか
9,ファンを「冒険の旅」に連れだそう
10,最前列の席はファンにあげよう
11,ファンを増やそう
12,中間業者を排除しよう
13.コンテンツを無料で提供しよう
14,広まりやすくしよう
15,フリーから有料のプレミアムへアップグレードしてもらおう
16.ブランドの管理をゆるくしよう
17,企業家と手を組もう
18,社会に恩返しをしよう
19,自分が本当に好きな事をやろう

これは見出しだけれども、実は気になるところか読めばよくて、とても自由だ。

グレイトフル・デッドは米国のヒッピーの流れを組む長寿バンドで、年間5,000万ドルも稼ぐそうだ。非常に儲けているけれどもビジネスの仕方は昔からとても「現代的」でフリー、シェアという方法で大成功した。CDは結果的に売れているけれども、ライブを中心で、ビデオ撮影とか録音自由で、それを巻くのも自由。ものすごく自由にすることで、むしろどんどんお客さんが増えて話題を呼び、ライブの参加者が増えたり結果的にCDも売れる、という魔法のような話が書いてある。

中間業者を排除し、チケットを直販したのも彼らの成功のもとで、最終顧客のデーターベースを持っていることが彼らの強みであるというのもよくわかる。

最近の小飼弾さんの「実は誰もが知っているAppleがSonyになれた本当の理由
の記事でも、最終顧客をダイレクトに掴んだことの価値を書いているけれども、やはりダイレクトに顧客とつながることの意味は大きい。金融業界でもさわかみファンドが12万人の顧客を持っているが、直販なのでまさに12万人のお客様と直接につながっている。さわかみ教団と揶揄する人は多いが、教団を作ることのできない既存の運用会社は所詮、銀行や証券会社などの販売会社に支配される脆弱な存在だ。

ひふみ投信のあるべき姿がずいぶん見えたような気がする。この本は既存の枠組みを変えて圧勝したい人が読む本で、そういう意味ではSOHOの経営者やベンチャー起業家に向くと思う。たぶんこの本を読んで、いろいろできない理由が浮かぶ人はこの本の適切な読者でないと同時にひょっとしたら今いる環境(会社)が恐竜のように滅ぶほうに分類されるかもしれない。