◯ 明治大学ってどういうイメージだろうか。昔のラグビーの重戦車のイメージもかなり強く、割と芋臭いが真面目なというイメージの人が多いだろうが、駿河台にある近代的なビル型のキャンパスのイメージのせいか、最近では都会的で洗練された大学というイメージが大学生全般には強い。それにともなって比較的レベルも上がってきていて、おそらくその裏側には東京の一極集中と地方帝大の地盤沈下というのもあるだろう。地方では公務員や公的サービスに近いところ以外にはよりよいと思われる就職機会が減ってきて(本当は探せばいろいろあるのだが)、それにともない明治大学のような中堅の私立大学でイメージ戦略に成功したところがその受け皿になったという面があると思う。

◯ 私の授業はベンチャーファイナンスという。今は月曜日の18時から21時10分までの3時間である。正確にいえば1時間30分の授業2コマ。後期(9月-1月)集中授業。9月から11月まではだいたい座学で、今年は磯崎さんの「起業のファイナンス」を教科書にしたが、実際はレジュメで授業を行う。去年まで水永さんの「入門ベンチャーファイナンス」を使っていた。両方とも良書である。合間に私の「企業価値」についてや「株式市場の見方」などの特別授業やNTVPの村口和孝さんなどの現役のベンチャーキャピタリストの講演も挟みこむ。

◯ 後半の11月後半から1月後半までは実践編。クラスを5-6班に分ける。そして上場、未上場も含めて5-6社の企業研究をする。今年は、テラ、ウォーターダイレクト、アイスタイル、GMOペイメント、インフォテリア。上場3社、未上場2社である。10年間で80社くらいお呼びした。堀江さん率いていたライブドアやワタミの渡邉美樹さん、三木谷さん、GMOの熊谷社長などの有名経営者から比較的無名な人、さらにお葬儀屋さんや産業廃棄物処理などふだん就職口として考えないような会社を呼んでいる。

◯ 生徒は班ごとに担当の企業を調査し、実際に会社訪問をする。これがミソ。実際に会社訪問をしてIRや広報担当者、場合によっては社長自身からインタビューをする。それをもとに企業研究をする。実際の授業では、社長に来ていただいて、最初の1時間、担当班がパワーポイントなどを使って、社長と学生一同にむけて企業研究の説明をする。社長の前でプレゼンするというのが面白いところで、社長もけっこう喜んでくれます。そのあと社長がそのプレゼンを受けて、講演をし、生徒とQAをしてから、最後に生徒がそれぞれの班ごとにディスカッションして、自分たちの班が経営陣だったとしたら、今後どのような戦略をとるのかを考えて、社長の前で発表する、ということします。これが一連の流れ。

◯ これは6時から9時までの3時間で行うのですが、まあ、これがあっとう言う間におわってしまう。だいたい5-6班行いますから、5,6回やるのですが、さすが学生は若くてあっというまに成長していく。いや、若いっていいね。プレゼンの内容も回を重ねるごとによくなり、QAのレベルもどんどん上がっていくのが驚き。

◯ 私が伝えたい事はたくさんある。まずは面白い会社はいくらでもあるということ。そして受身ではなく自分で会社訪問をして研究をしてみること。またグループワークの大変さと楽しさを学ぶこと。プレゼンを実際にやってみること。生の社長の魅力に触れること。自分の頭で考えることの大切さ。未来は自分で切り開けるということを会社訪問や経営者の話などを通じて感じること、ビジネスに貴賎はないこと。

◯ もちろんこの授業で実際にベンチャー起業家やベンチャーキャピタリストがでることもひとつののぞみではあるけれども、それ以上に、企業の多様性を知ることにより、視野を広げてもらいたいというところに大きな狙いがある。大企業だけが人生ではないし有名企業だけが生きがいがあるわけではない。結果的に大企業に入社しても、必ず仕入先やお客様にそのようなベンチャー企業と無縁である人はいないはず。私の伝えたい事はあまり言葉に出すことはないけれども、一連の作業を通じておのずと感じてもらえる。「ビジネスに貴賎はない」とノートに書け、記憶しろ、テストに出るといってもなんの役にも立たないから。まずは疑似体験であろうがなんであろうが、体験価値に勝るものはないですから。