「財務報告に係る内部統制報告制度」の導入支援の仕事をしたことがある。
企業会計審議会が「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準並びに財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準の設定について(意見書)」というガイドラインを開示したが、これはアメリカの内部統制のフレームワークであるCOSOフレームワークの焼き直しである。焼き直しといっても、創意工夫がされていて、その点、私は評価している。
内部統制の定義は様々だが「財務報告に係る内部統制」はエンロンやカネボウの粉飾事件が発端になっているように粉飾防止のための内部監査制度のことを意味している。もっと簡単に言うと会計上の照合結果を経営者が確認して「弊社は粉飾していません。」と世間に宣言するだけである。
だがガイドラインがいかに良くても、エンロンやカネボウで粉飾行為で刑事罰を喰らったのは経営者やその側近達であって、経営者がそんな宣言をしたところでなんの説得力もない。オリンパスがその良い例である。本家のアメリカではダイレクトレポーティングといって会計監査を担当している監査法人とは別の監査法人が直接、照合結果を監査しているので多少、説得力は増すのだが、適正意見を出さないと株主から訴えられるので、よっぽどのことが無い限り適正意見を出す。とかくこの世は生きにくい。
いや今回はそんなことが言いたいのではない。「COSOフレームワーク」は元々、粉飾防止のためだけに作られたわけではなくコーポレート・ガバナンスの理想的な形の一つとして研究されていることに、改めて気づいたのだ。「今さらかよ!」とつっこまれそうだが。
「COSOフレームワーク」は統制環境の把握、リスクの評価と対応、統制活動(対応の実行)、情報と伝達、モニタリング(内部監査)という活動によって構成されているのだが、情報と伝達を軽視した内部統制関係者は多いのではないだろうか?(私だけだったりして…。)
経営者達の作為的な粉飾等の不正以外で会社組織で事件や事故が起きてしまうのは正確な情報が早期に然るべき部門に伝達されていないことが原因のほとんどだからである。もっとも最近は個人の道徳基準が低下していてバイトテロや農薬混入事件などの事件が起きているのだが、しかし原発事故や列車の脱線事故等、かなり悲惨な事件、事故は情報の伝達がスムーズでなかったことが原因なのである。情報が伝達されても権力者が握りつぶしてしまえば、作為的な犯罪とみなされてしまうが、そもそも情報の伝達経路が明確になっていれば、その権力者は問題となっている情報を握りつぶせなくなる。もし握りつぶしても、その可能性を考慮に入れた伝達経路(例えば2重にする等)をあらかじめ設計しておけば事件や事故は防げるのである。
こう考えると経営者の意図的な粉飾も、財務情報の伝達経路を工夫すれば防止もしくは早期発見できることになる。しかし監査法人も監査役も内部監査部門もそれぞれ事情があって情報を握りつぶしてしまうことがある。執行役に対する取締役の牽制にも限界がある。これ以上書くと闇討ちに合いそうなのでやめておく。
とかくこの世は生きにくい。
