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そろソロ一歩

ブログタイトルの“そろソロ一歩”とは、遅ればせながら人生の再スタートで一歩を踏み出そうという気持ちを込めました。
そして、日頃単独行動が多いため「単独=ソロ」という意味合いもあります。

先週に引き続き、今月3回目のお水取り。

さて、今度こそはと山形行きを目論んだが、またしても天気が良くない。

関東北部はまあまあ好天が期待できそうなので、今月最初のお水取りで行った日光に計画変更する。

せっかく行くなら登山もしたい。

そこで、前から気になっていた、関東百山で最も登頂が困難と言われている錫ヶ岳へ日帰りでチャレンジすることにした。

 

ネット等で錫ヶ岳山行の記録を調べると、この山への登頂ルートは日光白根山から派生する白錫尾根をたどってピストンするのが無難なようだ。

登山口を湯元と菅沼どちらにするか迷ったが、以前に白根山の登った際に歩いた湯元から入山することにした。

 

夜の新4号バイパスは、まるで高速道路のようにスイスイ走れる。

いろは坂を登り、中善寺湖畔から戦場ヶ原を経てほぼノンストップで湯元温泉に着いた。

無料駐車場に車をとめて仮眠する。

とにかく長丁場なので、明るくなる頃には出発したい。

 

4時過ぎに駐車場を出発する。

この時期は明るくなるのが早いが、ホテル街にまだ人の動きはない。

登山口への道を間違えて若干時間をロス。

白根山に登った時に来ているとはいえ、もう16年も前のことである。

案内板で登山口への道を確認する。

 

湯元スキー場手前の登山届に記入してゲレンデ内の道を歩く。

数頭のシカが草を食んでいた。

薄手のジャケットを着ていても寒い。

 

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日光湯元スキー場上より太郎山を望む

 

道標に導かれて、白根沢右岸の急登に取り付く。

雪崩で崩壊したのでは、と思うほどの荒れようでとても登りにくい。

急な傾斜で息が荒れる。

むき出しになった木の根につかまりながら、ひたすら上を目指す。

残雪が登路をふさぐ箇所はかなり登りにくかった。

 

外山から前白根山に続く稜線の鞍部に登り着いてひと息つく。

じっとしていると寒いので、前白根山に向けて歩き出す。

空はどんより曇り、風が強くなってきた。

ふと、目の前を小さな白い物体が舞い降りてくるのに気付いた。

最初は木の実の綿毛かと思ったら何と雪だ。

5月下旬といっても、この寒さなら雪がちらついてもおかしくないだろう。

暑くなると思って防寒対策を怠ったことを後悔した。

 

針葉樹からダケカンバ林に変わると、登山道が完全に残雪に隠された斜面が出てくる。

前白根山手前で、日光白根山の偉容が姿を現す。

暗灰色の岩肌に白い残雪が混ざり合う山肌が荒々しい。

前白根山頂に着くと、身を切るような寒風にさらされた。

風を避けるためケルンの陰に腰を下ろしていると、1人の男性が白根山方面から登ってきた。

昨日は白根山に登って五色沼の避難小屋に泊まり、今日はもう下山すると言う。

避難小屋では寒くて寝られたものではなかったと、うんざりした顔で話していた。

 

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前白根山より日光白根山を望む

 

男性と別れて前白根と白根隠山の鞍部に向けて下る。

眼下には五色沼が不思議な青さでたたずんでいる。

五色山の方に目をやると、遠くに青い雨具を着た人が写真を撮っていた。

先ほどの男性が話していた、避難小屋で泊まり合わせた人に違いない。

青空がが広がり、陽光が白根山と五色沼を強烈に照らし出した。

このまま晴れてくれればいいのだが‥。

 

鞍部で避難小屋へ下る道を見送り、錫ヶ岳に向かう白錫尾根の入口である白根隠山への稜線に足を踏み入れた。

地図に登山道の表記はないが、実際には踏み跡は付けられているという。

確かに踏み跡ほどではないが、何となく人が歩いた道らしきものが延びている。

 

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白根隠山のダケカンバ

 

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白根隠山の“謎”の観測小屋

 

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白根隠山稜線の草原

 

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白根隠山より白桧岳と錫ヶ岳を望む

 

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白根隠山山頂部を望む

 

残雪で覆われた平坦地にトタン板を無造作につなぎ合わせたボロボロの小屋を見る。

ネットの山行紀によればは何かの観測小屋らしい。

入口の扉には針金が巻きつけられていて、中に入り込むことはできない。

 

白根隠山の稜線は強風が吹き荒れていた。

風上に顔を向けると息ができないほどだ。

吹きさらしの草地では風を避けるものはなく、時々風にバランスを崩しつつも風上に身体を倒し気味にしながら進む。

崩れそうなガレ斜面を慎重に下ると風は弱まった。

右手の白根山と前方の白桧山との間に錫ヶ岳の山頂部がようやく望まれた。

はるか彼方に見えるその頂に気が滅入る。

尾根の北側を巻く道ではまたしても強風の洗礼を受けたが、残雪に覆われた東側の稜線に出ると風も止み、雪を踏みしめて白桧山の広大な山頂にたどり着いた。

 

白桧山からは正面に錫ヶ岳を望みながら、残雪に覆われた稜線を下る。

木に付けられたトタンの目印やビニールひもが頻繁にあって迷うことはないが、明瞭な尾根筋は目印をはずして残雪の上を歩いたほうが分かりやすい所もある。

しかし、2296mピークの手前になると樹林が密になって視界が悪い上に尾根が広くなり、目印を頼りに歩かざるを得ない。

所どころ踏み跡はあるものの、ほとんど残雪の上を歩く状態になる。

緩んだ雪に足がひざ上まで潜ることもしばしば。

こんな状態で果たして日帰りできるのか不安になる。

雪が完全に消えてから来ればよかったか‥。

しかし、ここまで来たなら山頂まで行きたい。

五色沼避難小屋に泊まった男性の話では、小屋には毛布が用意されているという。

いざとなれば避難小屋で1泊すればいい、と気持ちに余裕を持たせる。

 

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白桧岳山頂

 

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白桧岳より錫ヶ岳を望む

 

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白錫尾根の残雪

 

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白錫尾根より錫ヶ岳を望む

 

2296m峰のアップダウンはかなり難儀した。

目印を見失ってルートを探したり、緩んだ雪に足を取られたりとかなり体力を消耗した。

錫の水場入口でへたり込むようにして休む。

ここにはテントを張ったと思われる空地がある。

錫ヶ岳は湯元方面から白錫尾根を往復するなら、ここでテント泊するのが妥当なのかもしれない。

 

いよいよ山頂に向けての最後の急登に取り付く。

ササ原に出て視界が開けた。

振り返ると白根山の山頂に雲がかかっている。

群馬県側から荒天を予感させる灰色の雲が、強風に乗って次々と押し寄せてくる。

天気予報では今日と明日は晴れるとのことだが、山の上では当てにならない。

何とか天気がもってくれることを祈りつつ、疲労困憊の身体を山頂に向けて押し上げるようにして登る。

やっと山頂かと思ったら、まだその先に斜面は続いているというのは毎度のこと。

最後の我慢のしどころだ。

山頂の一角にやや窪みがあり、その先の斜面の上に本当の山頂があった。

 

ようやく錫ヶ岳の山頂にたどり着いた。

疲労と寒さであまりうれしさは感じない。

帰路のことを考えると、とにかく無事に下山することが頭の中の大半を占めていた。

通常の登山ならどんなに長丁場でアップダウンがあっても、全体的に高度を下げていく帰路の方が時間がかからず体力的にラクなはずである。

しかし、今回の錫ヶ岳のコースではそうはいかないだろう。

何しろ錫ヶ岳とほぼ同じ標高のピークを幾つも越え、一気に標高を下げるのは湯元スキー場から外山鞍部にかけてのひと区間だけである。

疲労の蓄積とコースの状態を考えると、帰路の方が往路に倍する労力がかかりそうだ。

 

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錫ヶ岳山頂にて

 

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錫ヶ岳山頂の3等三角点

 

写真を撮るのも億劫なほど疲れていたが、登頂の証拠と珍しい「×印」三角点を撮影してから下山にかかる。

スパッツを着けるのを無精したので、靴の中はぐしょぐしょに濡れている。

いまさらスパッツを着けても意味がない。

残雪に手こずりながら錫の水場入口に下り着いた。

 

やっかいな2296m峰の登り返しが眼前に立ちはだかる。

雪面に自分が付けてきた足跡は目印になるが、足跡は所どころで目印をかなり外していたり、脇に歩きやすい所があるのにわざわざ歩きにくい所に付いていたりする。

こうして自分の足跡をたどってみると、往路と復路でコースの状態がかなり違って見えるということがよく分かる。

 

ネックであった2296m峰も自分の“足跡目印”のおかげで難なく越え、少しゆとりをもって白桧岳への登り返しに取り付いた。

景色を眺める余裕も出てきた。

右手には男体山などの日光連山や中禅寺湖、戦場ヶ原が穏やかな青空の下にくっきりと望まれる。

対照的に左手の群馬県側は灰色の雲に覆われて眺めも悪く、残雪をまとった尾瀬の燧ヶ岳や至仏山が姿を見せる程度だ。

栃木県側の男体山や女峰山に雪はほとんど見られないが、尾瀬や奥会津方面の山々はまだ真っ白な雪に覆われている。

上空に寒気が入っているらしく、今いる県境尾根を境にして天候の違いがはっきり分かる。

 

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白桧岳より白根隠山を望む

 

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白根隠山より男体山と戦場ヶ原を望む

 

白桧岳の次は白根隠山を超える。

白根山が大きく迫ってくる。案の定、風が強くなってきた。

白根隠山手前のガレ場では、風にあおられないように慎重に登る。

風が弱まったスキをついて一気に高度を稼ぐ。

山頂稜線の草地は往路の時と同じで、相変わらず強風が吹き荒れていた。

休むことなくペースを上げて通過する。

「掘っ立て観測小屋」脇を通って下りとなり、五色沼避難小屋からの道を合わせる。

時間は午後3時を過ぎたが、ここまで戻ってこれれば今の時期なら日のあるうちに何とか下山できるだろう。

 

黒い雲が上空を漂う中、前白根山の急登にかかる。

背後の白根山が真っ黒な巨体で不気味に見える。

雷でも起きそうな感じだ。

前白根山山頂はそそくさと通過する。

 

外山鞍部への下りで樹林帯に入ると、ようやく強風から逃れることができた。

雪の斜面には自分のほかに数人の足跡がある。

往路の前白根で会った人たちのものだろう。

私が錫ヶ岳を往復している間、彼らの他にここを通った人はいるのだろうか。

日曜日の白根山のメインコースで、これほど人に会わないとは思わなかった。

錫ヶ岳へのコースでも他に登っている人が1人でもいれば、少しは心強かったかもしれない。

グリセードの跡があるので真似してみる。

気持ちにだいぶゆとりが出てきた。

 

外山鞍部から一気に湯元まで高度を落とす。

コースのひどさは往路で十分知っているので、転倒しないよう慎重に下る。

もう焦る必要はない。

湯元スキー場が下に見えて緊張が緩んだ。

そのせいではないが、コースを間違えてゲレンデに出るヤブに入ってしまい、草に足を滑らせて尻もちをつく。

せっかくここまで転ばずに来たのにと苦笑したが、ケガだけはしないように注意しなければ‥。

 

スキー場のゲレンデからは、湯ノ湖と男体山の取り合わせが一服の絵のような景観を見せていた。

湯元温泉のホテル群の脇を通り抜け、車を置いた駐車場に戻ってきたのは午後5時半。

実に出発から帰着まで13時間半の長丁場だった。

車のシートにへたり込み、思いっきり脱力した。

関東百山最難関と言われる錫ヶ岳登頂を成し遂げた喜びがじわじわと湧いてきた。

 

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日光湯元スキー場上より男体山と湯ノ湖を望む

 

湯元で日帰り温泉を探そうと思ったがよく分からない。

疲れているので探すのも面倒になり、最初に調べておいた日光の清滝にある「やしおの湯」まで下った。

湯船にゆったりと浸かりながら、久々に燃焼しきった山行の充実感に浸った。

 

翌日、お水取りの時間前に裏見ノ滝を見た。

早朝の清々しい緑に周囲を彩られた滝は素晴らしかった。

 

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裏見ノ滝


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日光二荒山神社参道の大鳥居

 

二荒山神社の霊泉でお水をいただく。

厳しい山行の後でのお水取りは、いつもとは違って晴れやかな感覚だった。

手水舎で清めていると、隣にいた初老のご婦人が声をかけてきた。

日光の寺社やお水取りのことに詳しく、二荒山神社についてもいろいろと説明してくれた。

「昨日、山に登ってきました」と言うと、「山に登るということは、神様にお参りしたことと同じだから、神様も喜んでくださるでしょう。きっといいことがありますよ」とにっこり笑いながら答えてくれた。

 

【山のデータ】

・山 名:錫ヶ岳(すずがたけ)

・所在地:栃木県日光市・群馬県沼田市

      2万5000分の1地形図:丸沼

・標 高:2388m

・備 考:関東百名山,栃木百名山,ぐんま百名山

 

【山行データ】

・登山日:2007年5月27日(日)

・天 気:晴れ時々曇り

・同行者:単独

・登山コース

 湯元温泉4:05→堰堤4:45→外山鞍部6:05→前白根山7:00~7:40→白

 根隠山8:10→白桧岳8:35→錫の水場入口10:00→錫ヶ岳

 11:00~11:35→錫の水場入口12:20~12:30→白桧岳14:00~14:10→

 白根隠山14:40→前白根山15:40→外山鞍部16:10→堰堤17:15→湯

 元温泉17:50