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そろソロ一歩

ブログタイトルの“そろソロ一歩”とは、遅ればせながら人生の再スタートで一歩を踏み出そうという気持ちを込めました。
そして、日頃単独行動が多いため「単独=ソロ」という意味合いもあります。

6月に入って東北の山が気になってきた。

残雪とブナの新緑がきれいで、かつ展望が良さそうな山は?と思案していると、月山の東にある葉山が頭に浮かんだ。

'11年5月に法体の滝を見に行った際、山形新幹線の車窓から見えた残雪を従えたのびやかな山容を目にしてから気になる山でもあった。

標高も手頃で登り応えもそこそこありそうだ。

ただ、残雪の状況だけが気がかりだった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


前夜に自宅を出発し、東北道、山形道と走って山形北ICで降りる。

国道13号沿いのコンビニで食料を買って給油も済ませ、村山市街地を抜けた所で県道36号に入る。

道は分かりやすい。

登山口手前の大鳥居集落に「葉山のブナ清水」という葉山の湧き水を引いた取水場があったので、水もしっかりと補給していく。


ここから山ノ内林道に入って行く。

舗装路はやがてダートに変わるが走りやすい林道だ。

山ノ内コース登山口を確認し、少し引 き返した道脇の広い空地に車をとめて車中泊とする。

周囲に人家などまったくない山中でいかにもクマが出没しそうな雰囲気だ。

寂しさを紛らわすためにカーラジオを聴きながら、コンビニで買った弁当を食べる。

ラジオから流れた時任三郎の「川の流れを抱いて眠りたい」がなぜか心に染みた。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


翌早朝、登山口まで車を移動する。

ここには数台ほど車がとめられそうなスペースがあるが、もちろん他に車はない。

平日だし、たぶん山中で誰にも会わないかもしれない。

登山口を示す標柱の脇から山道へと取り付いた。


開けた伐採地後にはサンカヨウが咲き、杉林に入って沢を渡る。

幅は狭くて飛び石伝いに渡れるが、滑りやすいので要注意だ。

沢からブナ林に覆われた尾根の急登が始まる。

早朝の冷涼な空気の中なのであまりきつさは感じないが、暑い時期の日中には避けたいところだ。


しばらく登ると視界が開けて滝見台に着く。

名の通り、視界が開けた右手の谷間の奥に糸滝が見える。

スラブに懸かるナメ滝の落差は100メートルほどか。

遠目にも立派な滝で、前後は雪渓に覆われている。

下流は登山口近くで横断した沢のようだ。

滝の上部は残雪がまばらに付いた稜線が仰がれ、左手に烏帽子岩のピークが突き出している。


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滝見台より糸滝と烏帽子岩を望む

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滝見台~水場間より雲海を望む


滝見台でひと息入れて、再び急な尾根道を登る。

背後に雲海が広がり爽快な気分になる。

ムシカリやムラサキヤシオの花が見られるようになり、「清水」と記された木札が付けられたブナの木を見る。

地図には水場の表記があるが、それと思しき場所は残雪に覆われている。


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滝見台~水場間に咲くムラサキヤシオ


登るにつれて残雪が多くなり、傾斜が緩んで尾根が広がった雪原に出る。

左手に葉山の山頂稜線が一望され、その景観にしばし見とれる。

早くあの稜線を歩きたいと気持ちは高ぶるが、まだ先は長いのでひと息入れた。


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水場~烏帽子岩間より葉山を望む


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水場~烏帽子岩間より烏帽子岩を望む


再び尾根は狭まって傾斜が増し、眼前にそびえる烏帽子岩の基部に一気に突き上げている。

残雪で夏道が不明瞭なことに加え、急斜面の箇所は雪で滑りやすいために手間取った。

何とか烏帽子岩の基部に着き、今度は左手にトラバースしていく。

ここは岩壁基部と残雪に覆われた急斜面との境い目を通過するのだが、残雪の切れ目にシュルンド状の隙間があったり、ヤブに覆われたりして難儀した。

一応ロープが張られてはいるが、ほとんど雪に埋もれているようで役に立たない。

雪がなければ通過はそれほど困難ではなく、目の前の葉山山頂稜線と富並川源流部の爽快なパノラマを眺める余裕もあるのだろうが‥。


トラバースを無事に通過すると、また急斜面の急登。

幸い雪はなく、張られたロープの助けを借りて登り切る。

本コース最大の難所だった烏帽子岩の巻き道をクリアすると、そこは山頂稜線の一角。

蹄形の山頂稜線が手に取るように眼前に展開し、ここまで見ることのなかった月山や鳥海山の優美な姿が目に飛び込んできた。

緊張感から解放された後に大展望のご褒美とは、何ともニクイ演出である。


急登&難所を乗り越えて待望の稜線漫歩。

道に雪はなく快適に歩ける。

周囲は灌木帯で展望も良く、真冬のように真っ白な月山が目前に大きい。

足元にシラネアオイの花を見つける。

古御室山はピークを通らず南側を巻くのだが、ここには「お花畑」と記された標柱が立つ小湿原がある。

名の通り一面に花が咲くのだろうが、この時期は花期にはまだ早いようで、ほとんど残雪と枯草に覆われている。


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古御室山付近より葉山を望む


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古御室山付近に咲くムシカリ


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古御室山付近の湿原と月山を望む


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古御室山付近の湿原


湿原の木道を過ぎるとコースは西から南寄りに向きを変え、見通しの悪い低木帯を抜け出ると目の前に雪原が広がった。

登山道は残雪に隠されているが、尾根上なので迷うことはなく、雪の切れ目ですぐに道が見つかる。

足元にカタクリやショウジョウバカマ、頭上には満開のタムシバと花も豊富で楽しい稜線歩きだ。


雪庇の崩壊した雪のブロックを見て小ピークを越えると、「座禅石(入口)」と記された標柱を見る。

左に座禅岩への踏み跡が分かれているが、見た感じ少し荒れ気味だ。

帰りに余裕があれば立ち寄ってみることにして先に進んだ。


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座禅石分岐付近に咲くショウジョウバカマ


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座禅石分岐の標柱


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座禅石分岐付近に咲くタムシバ


再び雪原に出て目の前の小ピークを西側から巻き気味に越えていく。

雪解けのぬかるんだ急傾斜でちょっと厄介だった。

さらに雪原に出て、越えてきた烏帽子岩から続く稜線を振り返る。

もう山頂の一角である奥ノ院は目の前だ。

分岐を右に入って赤い鳥居をくぐると、間もなく葉山神社の建つ奥ノ院に着いた。


誰もいない奥ノ院で休憩する。

神社の脇に現在地を記した標柱が立ち、標高と経度緯度、所在地は番地まで細かく表記されている。

しかし、標高が1462メートルで所在地が寒河江市とあるのは、すぐ南にある最高点の葉山本峰ピークのものだと思われる。

ガイドブックにも記されているが、ここは葉山の山頂ではない。

しかし、展望は格別にいい。

目の前の月山はもとより鳥海山、そしてここで初めて目にする朝日連峰が素晴らしい。

天気は申し分ないが、日差しが強くて少し暑さを感じる。

この葉山と周囲の山々の残雪を見ればまだ春先のような錯覚にとらわれるが、考えてみればもう6月、季節的には初夏なのである。


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奥ノ院のピークに建つ葉山神社


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葉山神社(奥ノ院)より鳥海山を遠望する


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葉山神社(奥ノ院)より葉山を望む

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葉山神社(奥ノ院)~葉山間に咲くミネザクラ


奥ノ院で休憩を十分に済ませ、目の前のこんもりとした本当の山頂である葉山本峰に向かう。

分岐に戻って傾斜のある雪原を下ると登山道に出て、山頂稜線を南に向かう。

ミネザクラが咲いている。

ひと登りするとほどなく「葉山山頂」と記した標柱があり、その脇の踏み跡をやや西に進んだ場所に三角点のある開けた葉山本峰に着いた。


このピークにも誰もいなかった。1等三角点本点のある山頂だが、周囲は灌木に囲まれて展望はイマイチ。

眺めは先ほどの奥ノ院の方が優れている。

小休止して登頂の記念写真を撮ってから奥ノ院へ引き返す。

できればこのまま山頂稜線を南下して、岩野コース方面へ縦走したいところだが、交通不便な山域での車の回収を考えると仕方がない。


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葉山山頂付近より大僧森から小僧森にかけての稜線を望む


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葉山山頂より月山を望む


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葉山山頂付近より葉山神社(奥ノ院)から烏帽子岩方面を望む


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トンボ沼より月山を望む


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トンボ沼より朝日連峰を望む


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トンボ沼より葉山を望む


奥ノ院の西側直下にある「トンボ沼」に立ち寄ってみる。

直径15メートルほどの小さい沼は周囲を木道が敷かれ、最短コースの十部一峠コースと肘折コースとの分岐になっている。

ここからの月山の眺めも雄大で惚れ惚れする。


奥ノ院を後に往路を下山にかかる。

座禅石には結局立ち寄らなかった。

日が高くなって気温が上がり、往路より雪が緩んだ感触が靴底を通して伝わってくる。


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座禅石分岐付近に咲くサンカヨウ


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座禅石分岐付近に咲くエンレイソウ


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座禅石分岐付近に咲くカタクリ


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古御室山付近に咲くシラネアオイ


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烏帽子岩基部の巻き道


烏帽子岩の巻き道も無事に通過して尾根道を一気に下降する。

振り返る葉山の山頂稜線が午後の陽光に映えている。

ブナの緑と残雪の白とのコントラストが鮮やかだ。

糸滝も往路に比して明るい。

やはりこの時期の東北の山は格別なものがある。


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滝見台~水場間より糸滝を望む


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滝見台より糸滝を望む


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山ノ内登山口付近の沢の徒渉点


順調に下って来てもう少しで下山というところで、沢の徒渉で足を滑らせて片足を膝まで水に浸かってしまった。

最後の最後でやらかしてしまった(笑)。

“百里の道も九十九里をもって半ばとせよ”である。

林間から登山口を通る林道が見える。

仕事関係らしい1台のライトバンが走っている。

14時15分、無事に登山口まで戻ってきた。

山中で誰にも会わないたった1人の山行。貸切りで山を楽しめた充実感に浸りながら帰り支度をする。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


帰路に再び「葉山のブナ清水」に寄った。

まだ時間的に余裕があるので、名水百選の月山山麓湧水群に立ち寄ってみることに。

国道347号を寒河江市街に向かい、国道112号を西進して月山湖から六十里旧国道に入り、県立自然博物園のネイチャーセンターに車を置く。


ネイチャーセンターの職員に湧水までの道を尋ねるが、残雪が多くて行くのは困難だと言う。

確かに道はほぼ雪に埋まっていて分かりにくい。

途中で単独の女性ハイカーに出合って湧水までの道を教えてもらわなかったら、たぶんたどり着けたかどうか‥。

何とか「月山の湧水」と記された標柱がある湧水池を見つけることができた。


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山形県立自然博物園の「月山の湧水」


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山形県立自然博物園のネイチャーセンター


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ネイチャーセンターの山形県立自然博物園コース案内板


帰路は別コースでネイチャーセンターに戻ろうとしたが、往路にも増して残雪が多くて道に迷ってしまった。

時間は午後5時半を過ぎている。

昼の長い時期で助かったが、日が暮れたら遭難していたかもしれない。

何とかネイチャーセンターに戻れた時は、正直ホッとした。

難儀した名水巡りだったが、ブナの原生林は見事で背後の残雪豊富な姥ヶ岳の眺めも良かった。

また、時期を改めて再訪したい。


自然博物園を後に国道112号を走って寒河江市街に戻り、山形道の寒河江SA近くにある「寒河江はなさか温泉 ゆ~チェリー」で湯に浸かってリフレッシュ。

寒河江ICから山形道、東北道と高速道を長距離ドライブして帰途についた。


[山行日:2013年6日4日]


[コースタイム]

山ノ内登山口4:50→滝見台5:25~5:40→烏帽子岩7:30→座禅石分岐8:45→葉山神社(奥ノ院)9:10~9:30→葉山9:50~10:05→葉山神社(奥ノ院)10:30(トンボ沼散策)~10:50→座禅石分岐11:15→烏帽子岩12:30→滝見台13:35~13:45→山ノ内登山口14:15