グロリア(1980年 アメリカ)
監督:ジョン・カサベテス
出演:ジーナ・ローランズ

ジョン・カサベテス監督のフィルム・ノワール。

ギャングの金を横取りしたことで命を狙われた一家から、6歳の息子を託されたグロリア。少年がマフィアの資金の秘密を持っていたことと彼女自身がマフィアの仲間だったことで裏切り者として追われる羽目に・・・
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ジョン・カサベテスらしいリアリティ重視の演出。ハリウッドの派手なアクション描写とは一線を画すものの、その独特のリアリティから溢れ出すサスペンス感がとても面白い一作。熟女と6歳児というどうしようもないコンビがニューヨークをタクシーや地下鉄で逃げ回るところが、どうしようもなく焦れったい。大阪市内を舞台にしても可能な雰囲気が親近感をもたらしてますね。ラストは賛否両論ですが、そこまでのグロリアおばさんの自棄っぱちの孤軍奮闘ぶりを楽しめたら十分OKかと思います。ベネチア映画祭金獅子賞受賞作品。

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ねぇさん、かなり無茶でっせ (汗
続・激突!/カージャック(1974年 アメリカ)
監督:スティーブン・スピルバーグ
出演:ゴールディ・ホーン

昔から観たかったのに観れていなかった映画の一本。TVドラマ「激突」で一躍有名になったスピルバーグが撮った劇場映画1作目。
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自身も出所したばかりのルー・ジーンと、刑務所に服役中の夫クローヴィス。ルー・ジーンは裁判所の命令で子供の養育権を取り上げられてしまうが、何とか息子を取り戻そうと、服役中の夫を脱獄させ、成り行きでパトカーを警官ごと奪うと、子供が保護されているシュガーランドを目指す。パトカーを奪われた警察は群れを成して後を追いかけるものの、凶悪犯でもない二人と人質の警官の間に奇妙な友情が芽生え始める。事件が明るみになると何故か二人を応援する野次馬が現れ、パトカーの群れの後ろに更に群れを成し、シュガーランドへの行列が生まれるのだった。
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実話をもとに、奇行に走った夫婦と二人を取り巻く警官、野次馬たちをスピルバーグが温かい眼差しで描いた佳作。「続激突」とあるものの、全く前作の「激突」とは関係ありませんが、すでに監督としての手腕を期待されてプロモートされているところが、すごいですね。そしてそういう期待を理解した上で製作会社も観客も納得する作品を作り上げているスピルバーグが本当に素晴らしいです。
また、これが実話というところがいかにもアメリカらしく、馬鹿馬鹿しいのに懐の深さを感じてしまいます。ゴールディ・ホーンでないと、愛らしい犯罪者にはなり得なかったでしょうね。期待通りで楽しめました。
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SOMEWHERE(2010年 アメリカ)
監督:ソフィア・コッポラ
出演:スティーブン・ドーフ、エル・ファニング

「ロスト・イン・トランスレーション」のソフィア・コッポラ監督作品。映画スターがセレブな生活で自分を見失う中で、前妻との一人娘との束の間の心のふれあいを綴った2010年ベネチア映画祭金獅子賞受賞作品。
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ハリウッドの人気映画スター、ジョニー・マルコ。ロサンゼルスの高級ホテルに住まい、フェラーリを乗り回し、パーティーで酒と女に明け暮れるセレブな日々を過ごしていた。しかし、何をしてもどこか空虚に感じていたジョニーだが、唯一たまに会いにきてくれる前妻との間の一人娘クレオといるときが心に平穏をもたらしてくれていた。ある日、前妻が突然家を空けるためクレオを数日間預かることになるが・・・・
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初ソフィア・コッポラでした。そのセレブ生活自体はそれ程羨ましくはないものの、誰もが持っている輪廻のような日常から抜け出せない主人公の虚無感に次第に自分を重ねてしまいます。様々な誘惑や快楽に飲み込まれながらも、月に数回会う前妻との間の11歳の一人娘との時間に癒やされていくことに少しづつ気付いていきますが、もう普通の生活というものを手に入れることも、想像することすら困難なことに彼は気付いてしまうのです。その振り幅は派手な生活をすればするほど大きく反対側が遠く感じてしまうのでしょうね。
そして、それは偉大な父親を持つ監督自身が幼い頃に抱えていた思いなんでしょう。故にそれを簡単に、雑には表現できるはずもなく、カット一つ一つに、少し長めに感じる程度に時間をかけ、思いを込めているように感じました。それがとても良かった。親密な人々に纏わり付くくだらない輪廻との葛藤を、時に滑稽に、でも突き放すことなく、朝食に知らない女性がいることへの違和感を訴える少女の眼差しで伝えています。この監督自身を投影したエル・ファニングがとても良かった。少女のかわいらしさと、女性の美しさの丁度狭間、本当に丁度狭間の奇跡的な瞬間なのだと思います。
夜遅くに仕事から帰って、深夜から観る映画としては、最高によかった気がします。怒ってばかりの13歳の娘とどっか行きたいなぁ、としんみり思ったりしました。
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ファンタスティック Mr.FOX(2009年 アメリカ、イギリス)
監督:ウェス・アンダーソン
声優:ジョージ・クルーニ、メリル・ストリープ

「ライフ・アクアティック」のウェス・アンダーソン監督が贈るストップモーション・アニメ。原作は「チャーリーとチョコレート工場」のロアルド・ダール。監督は子供の頃からこの原作が大好きだったらしく、創る喜びに溢れております。
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子供が生まれて以来、泥棒稼業からすっかり足を洗ったMr・Fox。妻と息子の3人で貧乏な穴ぐら生活にも、そろそろ嫌気が指し始め、愛する家族のために丘の上の大木の家に引っ越すことを計画する。その丘の向こうには悪名高い3人の農場主がいて、そこで育てられている家畜を前に彼の本能が目覚めてしまう・・・
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かなり手の混んだストップモーション・アニメで、その技を観るだけで心踊ります。そしてキャラクターの手作り感やその描写が独特でオリジナリティがあります。ハチャメチャなところと、どこか突き抜けきれないところがウェス・アンダーソンワールド満載といったところでしょうか。しかしこの映画のターゲットは一体どの辺りなんでしょうね。誰でもそこそこ楽しめる、という感じですが、完全子供向けでもなく、かといって大人用でもない、若者が観るのかというと、そうでもなく、微妙な感じですね。決して嫌いじゃないんですけどね。彼の映画全般に言えることなんですかね。でも、やはり自分流を貫いてるところは大したものだと思います。

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これはビル・マーレイかな

裏切りのサーカス(2011年 イギリス・フランス・ドイツ)
監督:トーマス・アルフレッドソン
出演:ゲイリー・オールドマン、コリン・ファース、ジョン・ハート

ジョン・ル・カレのスパイ小説を「僕のエリ 200歳の少女」のトーマス・アルフレッドソン監督が映画化したサスペンス。

東西冷戦下の英国情報部(サーカス)のリーダー「コントロール」は、長年組織に潜んでいると見られる「もぐら」と呼ばれるソ連の二重スパイを見つけ出そうと独断で作戦を実行するも失敗し、その責任をとって彼の右腕「スマイリー」と共にサーカスを去る。しかし、英国政府のレイコン次官から極秘に「もぐら」を突き止めるよう「スマイリー」に指令が出される・・・

初めは全くチェックしていなかったのですが、「僕のエリ」の監督の最新作とのことで、慌てて観てきました。昨今の派手なスパイものとは完全に一線を画す、心理戦を中心にしたスパイものです。予想通りこの時代にはあまりにも地味ですが、今だからこそ、こういう映画が必要なのだと思います。推理ものというよりも、スパイたちの孤独な生活や人間関係を哀愁たっぷりに描いており、好感がもてます。
スパイ達の心理戦と、俳優陣の演技戦がシンクロしています。ゲイリー・オールドマンは今回の演技でアカデミー賞にノミネートされていますが、今回が初めてのノミネートなのですね。その仕事ぶりからは意外でした。
監督のトーマス・アルフレッドソンは、まだ2作目というのにとても老獪です。そのクオリティの高さから今後に期待せざるを得ません。しっとりと、いい映画を撮り続けて欲しいですね。またカメラと音楽もしっかりとしてとても良かったです。


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