運動靴と赤い金魚(1997年 イラン)

監督:マジット・マジディ


修理に出した妹の靴をおつかいの途中に失くしたお兄ちゃんのアリ。
妹にどうやって学校にいけばいいのか詰め寄られ困ってしまいます。
父親に怒られることも怖いのですが、それよりも家が貧乏で新しい

靴を買わすことができず、親に言うことができません。

結局、自分の靴を妹と共有することに・・・・。それからというもの毎日、

妹が学校を終えると走って帰り、靴を交換すると兄が走って学校に

通います。ぶかぶかの靴を履く妹が溝に靴を落としてしまったり、

学校に遅れて教頭先生に怒られたりとトラブル続きの毎日。

それでも二人は健気に一生懸命学校に通います。
そんなある日、妹は校庭で自分の靴を履いている女の子を見つけ、
お兄ちゃんはマラソン大会の3位の商品が運動靴であることを知り

出場を決意します・・・


貧しい生活の中で一生懸命、そして健気に助け合う兄妹の姿は、

いじらしく応援せずにはいられません。また、いろいろな問題は

発生するものの、そこに悪が存在しません。ただ、巡り合わせが

悪いだけ、というところに一層のやるせなさと、現実の厳しさを

感じてしまいます。それでもお互いを信じ、苦境を乗り越えていく

兄妹を映画は愛すべき眼差しで描いていきます。


自分の失敗を親に言えず、兄弟で秘密を共有してなんとか乗り

切る感覚は些細なことでもとても印象強く残っているのか、具体的に

覚えていないけど同じような感覚があったなぁ、と観ててとても身近に

感じました。


また、実は私は海外赴任で5年ほどイスラム圏で生活していたことも

あり、彼らの貧しいながらも、更に自分より貧しい人のことを思い、

助けるという教えに、時に感心したり、やるせなかったり、共感できな

かったりと様々な複雑な感情が持っていたのを思い出しました。

ただ、宗教観の違いはあるものの、子供の純粋な感覚は、たとえ

それが教えであっても、やはり大切にしてあげたいものです。


アカデミー賞外国語作品賞ノミネート。

見て損はしません。

観る気のなかった妻はついつい最後まで付き合ってしまってました。



泣き虫のお兄ちゃん。でも賢く、努力家。

可愛い妹。心から優しい。