(無期限の派遣の拡大)

労働者の派遣期間について上限を設けない「無期限の派遣」を認める「改悪」を含む労働者派遣法「改悪案」の取扱いを巡って、国会が紛糾しています。この「改悪」は、これまで専門26業種にのみ認められていた無期限の派遣を、仕事内容に関わらず認めようとするものです。

この「改悪」に対しては、労働組合関係団体も、それぞれの立場を超えて「超党派」的に「反対」の態度を表明しています。連合の神津事務局長は「生涯ハケンで低賃金を招く」と、全労連の井上事務局長も「派遣労働が臨時的・一時的なものであるという大原則を変え、労働者が使い捨てにされる」と、それぞれ批判しています。

(大臣の誤答弁)

おまけに、この「改悪」の内容を、法案担当大臣の塩崎恭久・厚労相も間違って理解して答弁をし、その答弁を厚労相の官僚による一枚の文書で訂正されるという呆れた状況も生じています。GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の株式運用の拡大のために厚労相に抜擢された塩崎氏なら、「さもありなん」という印象です。

法案では、3年の派遣可能期間を延長する場合は、過半数を占める労働組合等から意見聴取することを義務付けていますが、「会社は、労働組合などが反対しても従う義務はなく、方針を伝えるだけ良い」ことになっています。この点に関し、塩崎大臣は、「労働組合の反対を無視して会社が派遣を継続させた時は、労働局が指導するのは当然だ」と答弁したのです。

 これに対し、厚労省は、労働局が会社を指導するのは、会社が労組の反対にもかかわらず派遣を継続させた場合ではなく、会社の方針を労組に説明しなかった場合に限るという考えの下に、「会社が対応方針を説明しなかった場合には、労働局が指導・助言を行う」との文書を提出し、事実上、大臣の答弁を変更させたのです。

(厚労省内でも徹底議論を)

大臣の答弁が役所の紙切れ一枚で変更させられてしまうという自民党政権の「官僚主導」にも呆れてしまいますが、塩崎大臣の法案に対する理解不足と言うか誤解は、深刻な問題です。大臣として「こうあるべきだ」と考えていることが、法案では「そうなっていない」ということだからです。

更に、「生涯ハケン」への不安にどう対処するのかも重要な点です。派遣が、臨時的・一時的な労働力の調整弁ではなく、一つの継続的な雇用形態となって、正社員の減少、契約社員の増加につながることへの不安です。この不安は、派遣制度そのものの問題であり、派遣制度をどのように位置づけるのか、政府の方針を再確認する必要がありそうです。

こうした点について、大臣も含めて厚労省の中でもっと徹底的に議論して、法案を出し直すべきです。

(了)