(9条がノーベル平和賞受賞を逃す)

今年のノーベル平和賞で一時最有力候補にもなっていた「憲法9条を保持する日本国民」が、ノーベル平和賞の受賞を逃しました。10日、今年のノーベル平和賞は、パキスタンの女子学生マララ・ユスフザイさん(17歳)とインドの児童労働問題活動家のカイラシュ・サティヤルティさん(60歳)に授与されることが発表されたのです。

「憲法9条にノーベル平和賞を」と呼びかける運動は、神奈川県で子育て中の主婦が始めて、全国に広がっていきました。その運動の下で集まった署名は、憲法解釈の変更により集団的自衛権の行使を容認する閣議決定を行った今年7月1日前後に急増し、40万人を超えたそうです。にもかかわらず、今年ノーベル平和賞の受賞を逃したことは大変残念です。

(「9条にノーベル平和賞を」運動を諦めない)

しかし、これで諦める必要はありません。来年の2015年は、「第2次世界大戦終戦後70年」という節目の年ですし、解釈改憲の閣議決定に基づいて自衛隊が活動するために不可欠な法律改正の是非を巡って争われる年でもあるからです。ノーベル平和賞委員会委員長は、「憲法9条」が受賞の検討対象になったことを明らかにし、「受賞しなかったことは特定の候補の否定ではない」とも語っています。

(今年のノーベル平和賞)

一方、今年ノーベル平和賞を受賞した二人は、「すべての子どもの教育を受ける権利のために奮闘している点」が受賞理由になっています。子どもの権利の尊重は、平和的な世界の発展のために不可欠である、としたのです。受賞したお二人に心からお祝い申し上げますとともに、子どもの権利の拡大に向けてお二人の益々の活躍を期待したいと思います。

(サティヤルティさんの功績)

ところで、マララさんは既に世界的に有名になっている人ですが、サティヤルティさんは、私も良く知りませんでした。彼は、ガンジーの非暴力の伝統を守り、子供からの金銭搾取に抗議する活動を30年間以上率い、これまでに保護した児童就労者は8万人近くに上るそうです。推定では、現在でも、インドで強制的に働かされている子供は約6千万人もいるそうです。

彼の活動の原点は、小学校に通い始めた6歳の時に学校の正門前で靴磨きをする子に出会い、先生に「なぜ」と尋ねると「貧しいからだ」と言われ、学校に通う自分との違いに疑問を抱いたことだそうです。私も、1980年代にインドに住んでいましたが、貧しい子供たちが働いている姿をよく見かけました。物乞いをする女性が抱えていた赤ん坊も、「お金を払って借りた赤ん坊(赤ん坊が働いている)」と聞かされたことがありました。

(児童労働の撲滅を目指して)

 インドのモディー首相は、サティヤルティさんの受賞に際し、「国中が誇りに思っている。彼の断固とした意志を持った努力をたたえたい。」とコメントしたそうですが、彼や彼が主宰する非営利組織「子供を救え運動(BBA)」など民間に任せるのではなく、児童労働の問題を抱える国が、国を挙げて撲滅を目指すべきであることを忘れてはなりません。