香港で9月28日から起きている民主化デモに対して、米国オバマ政権と安倍政権との反応が違っています。何故なのでしょうか?

(香港の民主化デモの発生)

今回の香港民主化デモは、中国政府が8月、香港のトップである行政長官を選ぶ2017年の選挙候補者の選択を制限する決定を下したことに対し、香港の民主派がこの決定を撤回するよう要求していることから起きています。

そして、この民主化デモでは、民主化を求める若者を中心とする抗議参加者たちが街頭に殺到して幹線道路を封鎖し、普段人々で賑わう主要な地区をマヒ状態にしており、これに対し、香港当局は、催涙弾などを使って実力行使による排除を行おうとしています。

(オバマ政権の反応)

この香港民主化デモに対し、オバマ大統領は、「香港当局と抗議する人々の間で、平和的に(問題が)解決されることを望む。米国は、香港の安定と繁栄に絶対必要な開かれた社会と、普通選挙、人々の熱望を支持している。」と述べて、香港民主化デモに理解を示すような姿勢を見せています。

米ホワイトハウスのアーネスト報道官は、「中国政府が、(香港)市民と有権者の声を代弁した候補者を正当に選べるようにすべきだ」と指摘し、香港の憲法である「香港基本法」に基づく公正な選挙が行われなければ、香港行政長官の「根源的な正当性」が後退するとまで言い切っています。

(安倍政権の反応)

これに比べて、安倍政権の香港民主化デモへの反応は、ハッキリしません。菅・官房長官が10月3日の記者会見で、我が国と香港の密接な交流関係の重要性を指摘するとともに、「香港の問題は香港で民主的に解決するのが一番であり、政府として具体的なコメントは控える。」とありきたりのことを述べるに止まっています。

この安倍政権の反応は、中国の王毅外相が、10月1日香港での普通選挙を支持する立場をオバマ大統領等から伝えられた際に、「内政干渉だ」と反発したことを踏まえたものかもしれません。しかし、歴史認識問題などであれほど中国を刺激してきた安倍政権が、何故、香港民主化デモに関してハッキリしたことが言えないのか、疑問が残ります。

(安倍政権の恐れていること)

 それは、安倍政権が、民衆運動を軽視してきていることに原因があるのではないでしょうか。首相官邸や国会周辺で繰り広げられている「原発再稼働反対デモ」や「集団的自衛権容認反対デモ」に対して聞く耳を持とうとする姿勢も見えませんし、「普天間基地の辺野古への移設反対運動」も今や無視しようとしています。

もし、香港民主化デモについて、安倍政権が、それに理解を示したり、それを支持したりするような言動をとれば、それが安倍政権自体に跳ね返って、安倍政権の姿勢に対する批判が高まってくることを恐れているのではないでしょうか。

(了)