(コピペの安倍首相挨拶)

 いつもはありきたりの挨拶で注目されない首相の「原爆の日」平和記念式典での挨拶が、意外なことで注目されています。「今年の安倍首相の挨拶は、昨年の挨拶のコピペ(コピーして貼り付けたもの)だ」と批判されているのです。

(加藤官房副長官の言い訳)

この点について、加藤・官房副長官は、「(過去)1年間の施策の進展が盛り込まれている。(昨年と)全く同じものではない。」と苦しい言い訳をしていますが、89日付ハフィントンポストの記事「安倍首相、『広島原爆の日』の挨拶 "去年のコピペ"疑惑を検証する」を見ますと、見事にコピペの状況が示されています。

(日本政府の1年間の施策の進展状況)

それでは、加藤副長官が言う「過去1年間の施策の進展」がどれだけのものであったのか見てみたいと思います。果たして、国民が評価し得るだけの進展・成果が挙げられているのでしょうか。

1は、「昨年、安倍首相が、国連総会の『核軍縮ハイレベル会合』において、『核兵器のない世界』に向けての決意を表明した」(安倍首相挨拶の一部)ことです。与えられた場で、これまでと大して変わらない『決意』を示すことは、大きな「進展」にはなっていません。

2は、「包括的核実験禁止条約の早期発効に向け、関係国の首脳に直接、条約の批准を働きかけるなど、現実的、実践的な核軍縮を進めている」(同)ことです。抜本的な「核廃絶」を求める「核兵器禁止条約」に向けて踏み出せない安倍政権が「現実的、実践的な核軍縮」という言い訳をしているとしか言いようがありません。

3は、「本年4月には、『軍縮・不拡散イニシアティブ』の外相会合を、ここ広島で開催し、被爆地から我々の思いを力強く発信した」(同)ことです。昨年の挨拶で、「広島での開催」を自ら述べていましたので、「それを実行した」という意味でしかありません。

4は、「昨年末には、3年に及ぶ関係者の方々のご議論を踏まえ、認定基準の見直しを行った」(同)ことです。認定基準の見直しができたことは歓迎すべき話ですが、それは当然のことで、政府のこれまでの対応が拙かったことが反省されるべき話です。

(安倍政権の来年の施策)

以上が、安倍首相が挨拶で触れた「過去1年間の施策の進展」です。国民が評価し得る成果が出ているとはとても言えません。他方で、安倍首相の挨拶の中には、これからのことで新しく触れたものもあります。

それは、「来年は、被爆から70年目という節目の年であり、5年に一度の核兵器不拡散条約(NPT)運用検討会議が開催される。『核兵器のない世界』を実現するための取組をさらに前へ進めていく」(同)ことです。しかし、この言葉とは裏腹に、何か成果が期待できるものではないと考えます。

(核廃絶の原則を示せ)

このような挨拶の中身になってしまう原因は、「大事なことは、1年間の『施策の進展』ではなく、我が国がどのような原則に基づいて核兵器の廃絶に向けての行動をしているのかであるにもかかわらず、安倍首相の挨拶には『原則』の部分が欠如している」からなのです。

これは、これまでの政権が「核の傘」に依存してきたことの結果です。我が国が、真に「核兵器の廃絶」を目指し、実現していくためには、先ず「核の傘」による安全保障政策から脱却する必要があります。そして、世界に向けて、今や非現実的と批判される「核抑止」論からの脱却を訴えていくことが大事であると考えます。

(了)