NHK日曜討論の問題点)

本日(20日)のNHK日曜討論「集団的自衛権の行使容認は?小野寺防衛大臣に問う」を録画で見ました。週刊フライデーで報道されていたように「クローズアップ現代問題で官邸の圧力に屈したNHK(注)」の島田敏男・解説委員は、安倍政権の反応を意識した番組進行をしていました。

(注)フライデーは、今月3日のNHK「クローズアップ現代」をめぐる首相官邸とNHKのやりとりを報道。報道によれば、この番組では集団的自衛権を特集、菅官房長官がゲストで番組キャスター等の質問に答えたが、番組終了後に、菅官房長官サイドがクレームをつけNHKが土下座をして謝罪した模様。菅官房長官は、これらの事実を否定している。

(集団的自衛権と集団安全保障)

とりわけ、政権に批判的な発言(私から見れば、非常に論理的で鋭い指摘)をしていた首都大学東京の木村草太・准教授に対しては、島田解説委員は、彼の発言を遮ったり、彼が展開する話題を変えたりしていました。そして、そのような取り扱いを受けた話題の中に、「集団的自衛権と集団安全保障(注)の問題」がありました。

(注)「集団的自衛権」とは、「自国と密接な関係にある外国(例:米国)に対する武力攻撃を、自国(例:日本)が直接攻撃されていないにも拘らず、実力をもって阻止する権利」。「集団安全保障」とは、「国連の参加国がどこかの国から武力攻撃を受けた時、国連の他の参加国が協力してその武力攻撃に対抗していこうとする安全保障の方式」。

(木村准教授の指摘と防相の説明)

 木村准教授は、この問題に関し、次のように指摘しました。すなわち、「ホルムズ海峡に敷設された機雷に対しては、集団的自衛権に基づいて、武力行使である機雷掃海を行うことが可能である」とする安倍政権の主張に対し、「今回閣議決定された『自衛権発動新3要件』を満たす限り、我が国は、集団安全保障でも武力行使を行うことができるのか。」と指摘したのです。

これに対し、小野寺五典・防相は、「集団安全保障では、我が国は武力行使できない。集団的自衛権に基づいて機雷掃海を行っているときに集団安全保障の措置が取られても、機雷掃海は、集団的自衛権の行使として行われる。」と説明しました。この点について、もっと突っ込んだ議論がされなければならないのに、島田解説委員は、別の話題に移って行ったのです。

(防相説明は間違いだ)

小野寺防相の説明は、間違いなのです。すなわち、国連憲章(第51条)では、個別的自衛権や集団的自衛権が行使可能なのは、「安保理が…必要な措置をとるまでの間」に限られているのです。つまり、集団安全保障の措置がとられたら、集団的自衛権に基づく武力行使(機雷掃海等)は止めなければならないのです。

(やはり解釈改憲は誤りだ)

このような問題は、今回の閣議決定による憲法解釈の変更が、「つぎはぎ」の論理で出来上がっており、政権関係当事者(首相、内閣法制局長官、自民党副総裁等)の間でも意思統一が図られていないことによっても発生しています。いかに、解釈改憲の道が誤っているのか、今後も色々な場面で明らかになるでしょう。

(了)