(「骨太の方針」の提言)

 安倍政権が13日にまとめた「骨太の方針」(経済財政運営と改革の基本方針)素案では、「法人税の実効税率を来年度から引下げ、数年間で30%台半ばから20%台にする」ことが決まりました。日本企業の国際競争力を高めたり、外国からの日本投資を拡大することを狙ったものです。

(法人税減税の財源は?)

 確かに、税金を払う側からすれば、「税金が減る」ということは、ありがたいことです。しかし、これだけ財政事情が厳しい中では、誰かの税金を減らせば、他の誰かの税金を増やさざるを得ないことも確かです。この点、法人減税の財源をどこに求めるのか、安倍政権は明らかにしていません。

 これまでの流れでは、消費税率の引上げ、相続税の増税など、個人への課税が強化されています。その流れからすると、個人への課税のうち、大衆にかかる税金が増税されたり、金持ち課税から大衆課税化が進んだりしてくるおそれが十分にありそうです。

(日本の法人税は本当に高いのか?)

 そのような状況にありますから、私たちは、今一度、日本の法人税の実効税率が本当に高いのかを検証する必要があると思います。と言うのは、以前から「日本の法人税は決して高くない」という主張があるからです。今回の「骨太の方針」策定に当たっては、その点がどう検討されたのか、十分に説明されていません。

 「日本の法人税の実効税率が高い」という主張に対しては、次のような反論が出されていました。

(社会保険料負担と合わせた比較の必要性)

その一つは、企業負担を国際比較する場合には、法人税だけでなく社会保険料の事業主負担も合せて行うべきだという点です。そして、そうした国際比較を行った場合には、決して、日本の企業負担は他の先進国と比べても高くないという実証結果も以前出されていました。

手元にあるのは、少し古いデータですが、2006年のデータでは、自動車製造業の「企業負担」は、フランス42%、ドイツ37%、日本30%、アメリカ27%、イギリス21%で、日本は先進5カ国中3位です。このような国際比較の情報を、国民にもっと開示すべきです。

(企業優遇税制を考慮に入れた比較の必要性)

もう一つは、「高い」と批判されている「法人税の実効税率」は、実際に企業が負担している税率とは大きくかけ離れているという点です。その理由は、「研究開発費減税」等の企業優遇税制というものがあって、特に、大企業はこのような税制で優遇され、実際の税負担が大きく減っているからである、と言われています。

ある専門家が、日本の大企業の実際の税負担を、企業が公表している有価証券報告書を使って計算してみたところ、経常利益上位100社平均で31%だったそうです。表面税率での当時の実効税率は約41%でしたので、大企業は、様々な優遇税制によって実際の税負担が10%も下がっていることになります。この点の情報も、国民にもっと開示すべきです。

(政治献金の見返りか?)

結局、このような疑念が残ったまま、法人税の実効税率を下げて行こうとすれば、「庶民の犠牲において、儲かっている大企業を優遇するもの」と批判せざるを得ません。安倍政権が、「政治献金の復活」を考えている財界にその見返りとしての「利益供与」を行うとしているとすれば、それは許すことはできません。

(了)