(原発運転差し止めと自衛隊機飛行差し止めの判決)

昨日(21日)、地方裁判所レベルではありますが、福井地裁と横浜地裁が、「画期的」と言われる二つの判決が出ました。福井地裁判決は、「原発の運転差し止め」を命じた判決であり、横浜地裁判決は、「自衛隊機の夜間・早朝の飛行差し止め」を命じた判決です。

(判決の画期性は理由にあり)

マスコミ的には、判決の結論部分が「画期的」と評価されるのでしょうが、私は、むしろ、判決の結論を導き出した「理由」に興味をひかれました。

(原発運転差し止めの理由)

先ず、原発(関西電力・大飯(おおい)原発3、4号機)の運転差し止めを命じた福井地裁判決です。

この判決では、「脆弱(ぜいじゃく)な技術等の下での運転により、人格権が侵害される危険がある」、「人格権が奪われる具体的危険性が万が一でもあれば、差し止めが認められるのは当然だ」、「国富の喪失は、燃料費輸入による多額の貿易赤字等ではなく、事故によって豊かな国土や国民の生活を取り戻せなくなることだ」と断じています。

(自衛隊機飛行差し止めの理由)

次に、厚木基地(神奈川県)を米軍機と共同使用する自衛隊機の夜間・早朝の飛行差し止めを命じた横浜地裁判決です。

自衛隊機の飛行差し止めを認めた判決は初めてで、「自衛隊機の運航は防衛相による公権力行使に当たり、騒音被害を理由に差し止めを請求できる」、「防衛相は住民が受忍限度を超える被害を受けないような措置を講じる義務を負っており、義務に違反する運航は違法となる」と示しました。

ただし、米軍機について、「防衛相に権限はない」として飛行差し止め請求を退けている点は、今後論議を呼びそうです。米軍機の方が、自衛隊機よりも大きな騒音被害を与えているからです。受忍限度を超える被害をもたらす米軍機に対し、それを防御する国の責任が認められなければ、我が国は、主権国家や独立国とは言えなくなってしまいます。

(二つの判決は他人事ではない)

この二つの判決は、山口県東部に暮らす私たちにとっては他人事ではありません。建設が計画されてきた上関原発には、大飯原発で指摘された危険と同様の危険があるのではないか、厚木基地の空母艦載機が移駐する予定の岩国基地周辺での騒音被害は耐え難いものではないのか、私たちの不安は拭えていません。

(国の負うべき責任)

いずれにしても、国は、これらの判決を不服として控訴の意向を示し、原発訴訟については控訴しました。控訴するならば、国は、原発や基地の周辺住民に対し、国がどこまで責任を負うべきなのか、負うつもりなのか、シッカリと示すべきです。それが、国策の下で苦しんでいる国民に対する国の責任というものです。

(了)