(安倍首相はアフガン戦争に言及せず)

 先日(15日)、安保法制懇が、「集団的自衛権の行使を憲法解釈の変更によって認めるべし」等の内容を盛り込んだ報告書を安倍首相に提出し、首相は、この報告書を受けて、政府の考え方を示す「基本的方向性」を記者会見で表明しました。

 安倍首相が「基本的方向性」を示す中で語った内容については、「邦人輸送中の米輸送艦船防護の想定事例」について私が15日付の「今日の一言:安倍首相の茶番劇『集団的自衛権』」で指摘した問題を含め、既に各方面から多くの問題点が指摘されています。

 そうした問題に加えて、私が、安倍首相が発言した内容で「おやっ!」と思ったことは、安倍首相が「自衛隊が武力行使を目的として、湾岸戦争やイラク戦争での戦闘に参加するようなことは、これからも決してない。」と言ったことです。そこには、「アフガン戦争」が入っていなかったのです。

(多くの国が集団的自衛権でアフガン戦争に参戦)

「アフガン戦争」が入っていなかった理由は、アフガン戦争に「集団的自衛権」が関わっているからでしょう。アフガン戦争は、米国が「自衛権の発動」を口実として開始した戦争ですが、英、仏、独、加、豪が参戦しました。そした、その参戦の理由は、「集団的自衛権の発動」だったのです。

(日本のアフガン戦争参戦の可能性)

日本は、憲法によって集団的自衛権の行使ができないとされていることから、自衛隊による「インド洋上の給油活動」に止まりました。しかし、もし、集団的自衛権の行使が認められていたら、日本は、給油活動でアフガン戦争に協力したのですから、アフガン戦争に参戦していたでしょう。

(アフガン戦争参戦による影響)

しかし、アフガン戦争に参戦することがどれだけ大きな問題を引き起こすことになるのか、私たちは、アフガン戦争時にアフガニスタンに関わった日本人の意見を聞くべきです。そこには、安倍首相が思いもつかない世界、「平和憲法の役割」があるのです。

(中村哲・ペシャワール会代表の意見)

その第1は、アフガンで農水路建設、医療などの支援をしている「ペシャワール会」の中村哲・現地代表の意見です。中村代表は医師でもあり、私も現職国会議員時代に中村代表から同趣旨のお話を聞いたことがあります。

「(自衛隊が武力行使のためにアフガンに来たら、)武力を使う日本に対する敵意が、アフガン人の中に生まれてしまう。(自分たちの)活動はこれまでになく危険になる。私たちに何かあれば、主権国家として現地の政府や警察が動いてくれる。(日本政府は、)武力でトラブルを起こすようなまねはしないでほしい。」(5月17日付け朝日新聞)

(伊勢崎賢治・東京外大教授の意見)

その第2は、アフガンで軍閥勢力6万数千人の武装解除を指揮した伊勢崎賢治氏の意見です。伊勢崎氏は、アフガンでの武装解除に取組む前に、東チモールの県知事として国連平和維持軍を統括したり、シエラレオネでのPKO(国連平和維持活動)武装解除部長を務めた経験があります。

「アフガニスタンで不可能と思われてきた武装解除の仕事を日本ができたのは、どの武装勢力にとっても(日本は)中立だと見られてきたからだ。僕は、アフガニスタンの経験から、日本は憲法9条を堅持することが大事だと思った。」(伊勢崎著「自衛隊の国際貢献は憲法9条で」から抜粋)

(了)