本日(53日)は、憲法記念日です。私は、本日、福井県で設立された「平和憲法を未来につなぐ福井県民の会」の結成総会にお招きを戴き、憲法に関する記念講演をしました。私が依頼された講演の演題は「平和憲法と安倍政権の狙い」というものです。以下、その講演の概要をご紹介します。

『平和憲法と安倍政権の狙い』(講演概要)

1、問題意識

先ず、講演の「問題意識」は何か、だ。「現在・将来の国際社会の中で、『平和憲法』は存在意義があるのか?『平和憲法』を活かす道はあるのか?」を問題提起したい。平和憲法を亡きものにしようとする人達に対抗するために、この問題提起に対しては、「国際社会の中で平和憲法を活かす道があること」を積極的に示す必要があると思う。

2、安倍政権の狙い

(1)「戦後レジームからの脱却」

次に、「安倍政権の狙い」は何か、だ。安倍首相は、「戦後レジームからの脱却」を訴えている。この言葉を分析したい。

1は、何が「戦後レジーム」なのか、だ。安倍首相は、「憲法を頂点とした行政システム、教育、経済、雇用、国と地方の関係、外交・安全保障などの基本的枠組み」(20075月 憲法施行60周年の総理談話)と言っている。

2は、「脱却」して何を実現しようとしているのか、だ。安倍首相は、「突き詰めて言えば、命をかけても守るべき価値の再発見」(20117月修学院政経セミナー)とか、「日本国民の生命と財産および日本の領土は、日本国政府が自らの手で守るという明確な意識を確立する。」(20131月発行 「新しい国へ」)とか言っている。

3は、「脱却」のための手段は何か、だ。安倍首相は、「戦後レジームからの脱却を成し遂げるためには、憲法改正が不可欠」(安倍晋三ホームページ20096月最終変更)と言っている。

(2)安倍政権はこれまで何をしてきたのか。

それでは、安倍政権は、これまで何をしてきたのか。

1次安倍政権(2006,9,262007,8,27)では、① 教育基本法改正(200612月成立)、②防衛庁から防衛省への昇格(20071月)、③憲法改正のための国民投票法制定(20075月成立)を行っている。

2次安倍政権(2012,12,26~現在 )では、①国家安全保障会議(日本版NSC)の設置(201312月)、②特定秘密保護法の制定(201312月)、③武器輸出三原則から「防衛装備移転三原則」への変更(20144月)、④教科書検定への介入(領土問題記述の指針等)、教科書選定への圧力(竹富町教委への是正要求等)、④「中期防(2014年度~2018年度)」で、自衛隊の増強(「海兵隊」創設、陸自5000人増加)と防衛費の増大(1,2兆円増加)を行っている。

(3)安倍政権はこれから何をしようとしているのか(狙いは何か)

安倍政権は、これから、憲法の解釈変更によって「集団的自衛権の行使」を認めようとしている。これは、立憲主義を否定する動きでもある。「安保法制懇」の報告書が5月の連休明けに出され、その後、それを閣議決定で権威づけ、自衛隊の具体的活動のための法整備(「国家安全保障基本法」の制定、自衛隊法などの個別法の改正)を目指すであろう。

そして、20124月に作成された自民党の憲法改正案に示されているように、「国防軍の創設」、「集団的自衛権の容認」、「軍事審判所の設置」等を行うための憲法改正を行おうとしている。以上のように、これまでに行ってきたこととこれから行おうとすることとを合せれば、安倍政権は、正に、我が国のあり様(制度、社会、意識、教育など)を「戦争のできる国」に変えて行こうとしている。

3、「狙い」実現の手法

安倍政権は、自らの「狙い」を実現していくために、普通の政権では考えられないことを臆面もなく実施している。先ずは、「マスコミの懐柔」だ。大手マスコミトップと飲食やゴルフを頻繁に伴にしている。次に、「恣意的な人事」だ。NHK会長やNHK経営委員の問題人事しかり、内閣法制局長官の異例人事しかりだ。

更に、「私的な会議体」を作って、同質の意見を持った人達だけで協議した結果を基に自分の意見を押し通そうとしている。「安保法制懇(安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会)」(20075月設置)は単なる首相決裁で、道徳教育に関する提言を行った「教育再生実行会議」(「教育再生会議」の復活、20131月発足)は閣議決定だけで発足させた。

4、「平和憲法」と共に我々が目指すべきもの

(1) 真の「戦後レジームからの脱却」

私は、真の「戦後レジームからの脱却」は、①核(核抑止による安全保障、原発に依存するエネルギー政策)への依存からの脱却、②米国アイゼンハワー大統領も指摘した「軍産(学)複合体」の過大な影響力の排除、③集団安全保障体制としての「東アジア共同体」の形成、④平和憲法があるからこそできる国際社会(国連等)での役割の構築である、と思う。

(2) 「自衛隊」組織を世界各国に広める

また、安倍首相は、「自衛隊は海外では軍隊だ。軍隊として認識してもらえなければ、国際法の社会の中で活動ができない。」と言っているが、これまでの政権の努力不足だ。先ず、世界各国で、軍隊を専守防衛の「自衛隊」と同様な組織に変えて「自衛隊」の仲間を増やす努力をすべき。と同時に、「自衛隊」組織に相応しい国際法上の位置づけを整備する努力をすべきだ。

(3)結び

これらのことが、「国際社会の中で平和憲法を活かす道」だと思う。我々は、平和憲法を国際的に活かす道があることを国内外に示し、自身をもって積極的に行動することが大事だと、思う。

(了)