(日米共同声明に対する両首脳の評価)

昨日(25日)午前、日米共同声明が、米国オバマ大統領の離日直前という極めて異例なタイミングで発表されました。TPPの閣僚レベルでの交渉が難航したためですが、安倍首相は、この日米共同声明について、高揚して「両国にとって画期的な声明」と表現しました。

安倍首相の恒例の大見得発言で、そのまま額面通りに受け止めることはできません。オバマ大統領の日米共同声明に対する「評価」を英文報道も含めてインテ―ネット検索しましたが、何も報道されていませんでした(注:何か情報があったら教えて下さい。)。

(安保とTPPとの取引)

安倍首相が「画期的な声明」と言いたかったのは、特に、安全保障に関する部分(尖閣諸島への安保条約適用、集団的自衛権検討への支持)でしょう。しかし、米国側がそれだけ我が国に対してサービス分、TPP交渉については日本側が譲歩をしたと推測されます。

TPPについては、共同声明で「重要課題で前進する道筋を特定した」との表現に止まったことから、大方の報道機関では「大筋合意見送り」と報道される一方、一部には「事実上、合意はできている」とも報道されています。

「事実上合意」との報道の中では、具体的には「コメは関税維持(輸入数量拡大約束)、豚肉は双方主張の中間、牛肉は大幅関税引下げ、米国産自動車の安全基準は特例設定」といった事項が合意されたとされています。

TPP交渉をしている際中、米国側は、TPPについての日本側の譲歩がない場合には、共同声明を出さないことや「尖閣諸島への安保適用」文言を入れないこと等を示唆したそうです。「実質上合意」の具体的事項で日本にとって新たに獲得したものは何もありません。

(知らぬは、麻生副総理と国民)

「実質上合意」があったとしたら、なぜ、こんな共同声明になったのでしょうか。それは、一つには、日米の国内を説得する時間がいること、一つには、今後予定されるTPP交渉12ヶ国の合意を目指すのに「日米の手の内」を見せたくないことがあると思います。

麻生副総理は「11月の米国中間選挙までは答えは出ない。国内でオバマが全部まとめきれる力はないだろう。」と言っていました。恐らく、麻生副総理には「実質上合意」のことは知らされていないのでしょう。「知らぬは、麻生副総理と国民」ということでしょうか。

(了)