(袴田事件の再審決定)

昨日(27日)、静岡地裁は、「袴田(はかまだ)事件」(注)の第2次再審請求審で、裁判のやり直しを認める決定と共に、「拘置を続けることは耐え難いほど正義に反する」として、刑の執行停止(釈放)の決定を出しました。事件発生から48年後の釈放となったのです。

(注)袴田事件とは、1966年に静岡県清水市(現静岡市清水区)で発生した、一家4人が殺害された強盗殺人放火事件。元プロボクサーの袴田巌氏が犯人とされ、1980年に最高裁で死刑が確定した後、2次にわたって再審請求が出されていた。

(お姉さんとの面会)

実は、私が法務大臣時代に、袴田巌氏のお姉さんが、「袴田巌死刑囚救援議員連盟」所属の国会議員の方々と一緒に法務大臣室に来られたことがありました。当時は、お姉さんの面会申入れに対して巌氏が応じない状況が続いており、お姉さんは、巌氏の精神健康状態を心配されていたのです。

早速、事務当局に対して、巌氏の健康管理がどのように行われているのか、巌氏の健康状態について親族にどのように伝えているのか等について報告を求めました。当局の対応に大きな問題がないことは確認しましたが、死刑囚の処遇の在り方については課題があることも感じたところです。

(袴田事件から学ぶべきもの)

個別事件への対応は、司法判断に委ねざるを得ない部分が多いのですが、以上のことも含め、今回の袴田事件の再審決定と釈放決定を契機にして、国民の皆さんにもっと関心を持ってもらって、できるだけ早く国民的議論をして欲しいことがあります。

(死刑の存廃問題)

その第1は、死刑制度維持・廃止問題です。昨日は、偶然にも、アムネスティ・インタナショナルが「2013年の死刑判決と死刑執行」報告会を開催していました。死刑廃止国が140ヶ国に上る中、死刑存置国(58ヶ国)において冤罪で死刑が執行される問題が改めて指摘されていました。

(死刑執行等の問題)

その第2は、死刑執行の在り方や死刑囚の処遇の在り方の問題です。死刑問題がタブー視されている我が国では、死刑執行や死刑囚の処遇については、その実態がほとんど知られていません。死刑の告知、執行方法、死刑囚の病気治療などの課題について議論される必要があります。

(取り調べの可視化問題)

その第3は、取り調べの可視化の問題です。今、法制審議会で協議中の課題でもあります。袴田事件でも、連日にわたる長時間の取り調べで「自白」が強制・誘導された可能性が極めて高いのです。そうした取り調べによって冤罪が生じないためにも、取り調べの可視化は真剣に検討されるべきです。

(了)