1、TPPの公開講演会(下松市内)

 昨日(15日)、平岡秀夫政治スクールは、首藤信彦氏(すとうのぶひこ 元東海大学教授、前衆議院議員)をお迎えして、下松市の「ほしらんど くだまつ」で、TPPに関する公開講演会「暮らしはどうなる!? TPP交渉の行方!」を開催しました。

4年前にインドネシア政府閣僚の訪日団から「日本はTPPに入らないで欲しい。米国は、アジア・太平洋の制度を米国化しようとしている。」と言われたことを契機に調査に入った首藤氏の話は、各国の「生の情報」を踏まえた新鮮味のあるお話でした。

 以下、首藤氏の話を含め、TPPの実態等をご紹介したいと思います。

2、TPPの実態

 TPP構想は、イラク・アフガンの巨額の戦費(1か月あたり1兆円)により米国政府が業務閉鎖(シャットダウン)に陥るほどに財政赤字を抱えることになった事態に対処しようとするものです。TPP参加各国の制度を米国化し、米国中小企業が各国に進出(投資、輸出等)し易くする、米国の得意な知的財産権による収益を拡大する、等を目指しています。

 TPPの交渉分野は、マスコミで良く取り上げられている関税(日本の農産品、米国の自動車等)だけでなく、24の作業部会で幅広く取り扱われています。金融・電気通信等のサービス、衛生植物検疫、知的財産権、政府調達、投資、環境、労働、紛争解決(1SD等)等の交渉分野は、国民生活に大きな影響を与えるものです。

 具体的には、日本の軽自動車の規格を廃止する、「エコカー」制度を廃止する、地方自治体にも英語での入札を義務付ける、エイズ薬などの新薬の特許権期限を延ばす、「地産地消」政策を違法とする、外国人労働者規制を廃止する、農産品等の関税を撤廃する等が検討・交渉されています。ただし、交渉は秘密交渉ですから、詳細や正確なことは知らされていません。

3、TPP交渉の行方

 2月22日から25日まで、シンガポールで閣僚会議が行われましたが、最終素案を目指していたこの会議は合意に至っていません。今後、4月下旬にオバマ大統領が日本を含めアジアを歴訪しますが、交渉の進展は望み薄です。米国議会は、大統領に貿易交渉決定権(TPA)を与えておらず、交渉の余地がない(イエスかノーかしか言えない等)からです。

 米国では今秋に中間選挙があり、米国民主党を支える勢力を意識せざるを得なくなって、交渉妥結は一層難しくなりそうです。支援勢力の一つである労働組合はTPPに反対していますし、同じくシエラクラブ等の環境団体も、日本の漁業は環境に害を与えているとして、日本の漁港・漁船に支出されている補助金を容認した米国政府を強く批判しています。

4、我々の心構え

 TPPは、我々(日本)にとってどんなメリットがあるのか、改めて検証する必要があります。内閣府の試算でも、TPP参加による実質GDPの増加はわずか0,5%前後でしかありません。他方で、TPPによる脅威は、関税交渉で仮にコメの関税が守られても、ピラフ材料(関税率0%)等の姿で輸入することが阻止できない虞がある等、随所にあります。

 結局、韓米FTA(自由貿易協定)が韓国側に不利な内容になっていると批判されていても、最後には「韓国の安全保障のために必要なのだ」と言って強引に締結されたのと同様、日本も、安倍政権の右傾化・軍事路線を巧みに利用する米国外交に押し切られてしまう虞があります。安倍政権の動きをシッカリと監視する必要があります。

(了)