(沖縄県知事の意向)
普天間基地の辺野古移設に必要な沿岸部の埋立てについて、仲井真・沖縄県知事の承認が出るか出ないか、今週が山場になっています。埋立て承認に当たっては、仲井真知事は、沖縄県内の基地負担の軽減を求めており、その中には、在日米軍の法的地位を定めた「日米地位協定」の改定が含まれています。
(日米両政府の意向)
これに対し、米側は、「日米地位協定の改定交渉に合意したことはないし、交渉開始を検討することもない」として否定的な態度を示しています。他方、日本側は「できるだけ米国側と交渉することが大事」(小野寺防衛相)、「沖縄の負担軽減は最優先かつ最重要の課題の一つ。沖縄の要請を受け止める以上、あらゆる可能性を検討しないといけない。」(岸田外相)と前向きな態度を装っています。
しかし、この日本側の態度は、「相手があるからどこまでできるかどうかは別」(防衛相)、「相手がある話なので具体的にどうするかは控えたい」(外相)として、協定改定の中身について全く具体的な事項に触れていない点で、どこまで本気なのか疑問です。特定秘密保護法案を通すために、第3者機関の設置などについて「今後検討する」を連発した政府の姿勢を思い起こさせます。
(日米地位協定の運用問題)
地位協定の改定については、例えば、「刑事裁判権」をどちらが先に行使するのかが良く問題になります。私が法務大臣時代にも、沖縄県で起こった「ラムジー事件」(米軍属が死亡交通事故を起こしたもの)の取扱いを巡って日米間で交渉が行われ、「地位協定の改定が必要ではないか」との指摘もありました。
その事件については「地位協定の運用改善」ということで問題の決着が図られましたが、私は、それだけでは不十分と考え、法務省事務当局に対し、刑事裁判権の問題も含め「日米地位協定の改定」として検討し得る事項を調査するように命じました。しかし、時間的制約もあったためか、事務当局からは何の具体案も提示されることはありませんでした。
(地位協定改定の本気度)
このように、事務当局の姿勢は消極的です。とりわけ、「ラムジー事件」の交渉を経験して感じたことですが、外務省事務当局は極めて消極的だと感じました。このような状況に加えて米国が否定的な意見を述べている中で、安倍政権の閣僚が具体的な改定項目を挙げることなく「協定の改定」に言及しているのは、初めから「逃げ」を予定していると感じられます。
(地位協定の何を改定するのか)
地位協定の改定が必要と思われるものは、たくさんあります。その主なものの幾つかをご紹介したいと思います。
① 米軍への提供施設の利用に関し、その利用を定期的に見直し、その際、基地所在地の自治体などの意見を聴取する。米軍の施設・区域使用には原則として日本法令を適用する。
② 合衆国軍隊は、その活動において、環境への影響(人、動植物、土壌、水質、大気、文化財への影響を含む。)を最小限にするとともに、起こしてしまった環境被害に対して適切な原状回復・補償義務を負う。
③ 米軍の「提供施設及び区域」以外の日本国の領域における演習及び訓練の実施は、日本政府の承認を条件とする。また、演習及び訓練のための日本国の領域の使用には、航空、航行及び道路交通に関する日本国の法令を適用する。
④ 公務執行中の犯罪であっても、米軍提供施設外で起こった犯罪には日本側が第1次裁判権を行使する。凶悪な犯罪等の場合に日本国が要請したときは、米軍は、被疑者の拘禁を起訴前に移転することに同意する。我が国当局が捜索、差押え又は検証を行う権利の行使を希望するときは、原則として、米軍はこれに同意する。
(地位協定改定の困難度)
実は、以上の協定の改定内容は、民主党が2005年に作成した改定案を参考にしてご紹介したものです。民主党が政権交代しそうになった段階で米国が心配した問題の一つが、この地位協定の改定問題でした。結局、民主党政権下でも、見直し推進派が主導権を取れない状況で交渉は進みませんでしたが、米国はホッとしていたと思います。自民党政権下での協定改定の動きが、その場しのぎのポーズに終わらないことを願っています。
(了)