猪瀬直樹・東京都知事が、19日に知事辞職願を提出し、24日の都議会で辞職が認められることになりそうです。昨年12月の都知事選で史上最多の434満票を獲得して当選しましたが、わずか1年余で知事の座から降りることになりました。

 これだけの大量得票をしたのは、猪瀬氏に大きな期待が寄せられていたからでしょう。しかし、私は、正直言って、猪瀬知事がなぜこんなに多くの投票を得たのかその理由が良く分かりませんでしたし、猪瀬知事に大きな期待を持つことはできませんでした。

 私が当時そのように思った理由は、多分、猪瀬氏が、社会の不正や不条理を暴いていく作家として一定の評価を得ていたものの、小泉首相や石原都知事といった権力者の「虎の威を借る」ような言動をしていたことが垣間見られたからでしょう。

 しかし、東京都知事の座を追われた猪瀬氏には、大いに期待したいことがあります。それは、猪瀬氏がかつて書いた「道路の権力」という本に倣(なら)って、「都知事の権力」という本を書いて欲しいという期待です。

 「道路の権力」は、その書評として、「『道路こそが政治であり、富の分配であり、すべての権力の源である』その権力の中枢に当事者として斬り込んでいった猪瀬直樹氏によるノンフィクション」と評価されています。

 今度の「都知事の権力」は、「都知事こそが地方政治における最大の権力者である。その権力に、どのような勢力がどのように接近し、地方政治が実行されているのだろうか。その権力の中枢に身を置いた当事者として、その真相に迫る猪瀬氏によるノンフィクション」と書評されることを期待したいのです。

 「都知事」という職に政権与党に近い立場で立たなければ経験できなかったことや、知り得たことがきっと沢山あると思います。今度こそ、作家という立場で、本当に日本社会のために資する本を書いてくれることを期待します。

(了)