(「共謀罪創設」の動き再開)

12日に複数の報道機関で「共謀罪の創設が検討されている」旨の報道があり、同日、自民党の高市早苗・政調会長が記者会見で、共謀罪の創設に前向きの発言をしました。共謀罪は、5、6年前の自公政権時代にその創設が目論まれましたが、国民・マスコミ・野党の厳しい反対があって、廃案になっています。

しかしながら、次の点を考えると、「共謀罪の創設」は現実味を持ってきているのではないかと危惧します。

1、 2年前、私が法務大臣時代に、自民党の石破茂・衆議院議員(当時は、自民党の政調会長)が、衆議院・予算委員会で、法務省や外務省の官僚にしつこく「共謀罪の創設は必要だ」と迫っていた。その石破氏は、現在、自民党の幹事長である。

2、 前回の「共謀罪創設」法案は、野党の抵抗が激しく(もちろん、国民の反発も強かった)、支持率の高かった小泉首相でも強行裁決ができなかったが、今回は、国民が反対する特定秘密保護法でも強行採決で成立させる実績ができた。

(「共謀罪創設」は何のため)

 共謀罪の創設が必要な理由として、「東京五輪を控えてテロ対策の強化は急務との声がある」ことが挙げられていますが、この理由は、国民を欺くものです。と言うのも、共謀罪創設の提案の基となった国連の「国際組織犯罪防止条約(パレルモ条約)」は、「テロ防止のため」と言うより、「マフィアのような犯罪組織による犯罪防止のため」のものであったからです。

また、私が法務大臣時代に、官僚達(財務省、法務省、外務省等)から、「『国際機関』からパレルモ条約の批准が勧告されており、条約批准のためには、共謀罪を創設する必要がある。」との説明を受けましたが、その説明も、国民を欺くものです。共謀罪を創設しなくても、パレルモ条約の批准は可能です。

なぜなら、パレルモ条約が定める重大犯罪のほとんどについて、我が国では現行法で既に予備罪、準備罪、幇助犯、共謀共同正犯などの形で「共謀」段階で犯罪とする措置が取られているからです。後は、国際的に批准手続きを取るだけです。

しかも、官僚達が引き合いに出した『国際機関』というのは、FATF(「金融活動作業部会」:マネーロンダリング防止のための組織で、1989年アルシュサミット経済宣言によって設立された。)のことですが、この組織は、条約によって「正式に」設立されたものではなく、その勧告等に対し我が国がどこまで拘束されるのか定かではありません。法務大臣時代にも、FATFに理解してもらうようにしっかり説明すべきことを指示しました。

(特定秘密保護法の二の舞にならないように)

これから、自公政権は、色々な理由(特に、「国際的な要請」を根拠とする理由)を付けて「共謀罪の創設」を国民に迫ってくると思いますが、その理由を鵜呑みにすることなく、精査していかなければなりません。さもなければ、「特定秘密保護法の成立」の二の舞となってしまいます。

(了)