かつて、人気絶頂期にあった橋下徹大阪知事(当時)が、「安全保障は国の専管事項であって、地方自治体は口を挟んではいけない。」と言ったことがある。正に、岩国で起こっていることは、そのことを立証するかのようだ。

以前、05年の在日米軍再編において、厚木基地の空母艦載機59機を岩国基地に移駐させることが決まったとき、時の岩国市長は、その受入れに難色を示したことがあった。その時、時の政府は、既に交付を約束していた「市役所建替え補助金」約35億円を削除するという暴挙に出て、力づくで政府判断を押し付けたのである。

今回、今月3日に出された「2プラス2(日米安全保障協議委員会)」共同発表でも、岩国基地に関しては基地周辺住民への負担の押し付けが一方的に行われている。すなわち、上述の空母艦載機の移駐に加えて、空中空輸機「KC130」15基の移駐、F35B戦闘機の海外初の配備などの負担増である。

海上自衛隊の岩国残留も、地元からの要請に応えるものではあるが、海上自衛隊機の騒音が、移駐・配備される空中空輸機、空母艦載機、F35B戦闘機の騒音に加わるわけなので、それらを合わせた騒音の程度は計り知れない(騒音予測を政府に求めない自治体の姿勢も不思議だ。)。騒音や事故リスクから考えれば、海自残留も、地元負担の追加である。

にもかかわらず、これらのことについて、「2プラス2」の前に何の情報も与えられず、30日に地元自治体への伝達に訪れた政府高官(この中には、地元選出の政治家も含まれている。)も「政府間で決めたことだから受け入れてもらうしか他に道はない。」と言わんばかりの姿勢であるのは、歯がゆい限りである。

政権政党である自民党と密接な関係のある岩国市長も、さすがに、「これまで(12機だったのが)15機に増えたことが説明されなかったことは釈然としないものがある。」と言わざるを得なかった。岩国市長や山口県知事(病気で今後1か月間入院予定)には、市民や県民の安全と平穏な暮らしを確保するために、「専管事項」の壁を破ってほしいものだ。

(了)