平成24年(2012年)の民間給与の実態が、国税庁の「民間給与実態統計調査」で明らかとなりました。新聞報道では、見出しで「2012年の給与平均は408万円」、「民間給与2年連続減」等と報じられていましたが、平均給与が過去最高であった平成9年(1997年)と比較してみると、色々な実態が見えてきます。



 なお、以下で「給与所得者」と呼んでいるのは、「1年を通じて勤務した給与所得者」を示しています。また、今回(12年)は正規・非正規に分けて給与実態を調査しているのに対し、97年では正規・非正規の区別はありません。97年当時は正規職員が大多数であったでしょうから、平均給与の実態を比較する際には、97年の全体と12年の正規職員との間で行うことが適当な場合もあると思います。

 第1点は、給与所得者の男女別の構成に変化が生じていることです。併せて、男女間の給与格差が減少していることです。給与所得者の総数は4526万人(97年)、4556万円(12年)とほぼ同じですが、男女別でみると、97年は男2860万人・女1666万人、12年は男2726万人・女1829万人と、男性が減少(△134万人)し、女性が増加(+163万人)しています。



 因果関係(女性職員の需要が高まっているので女性の給与が高くなっているのか、女性の給与が高くなってきているので女性の職場進出が進んでいるのか。)は分かりませんが、男女間の平均給与額の格差が減少しています。97年は男577万円・女278万円でしたが、12年(正規職員のみ)は男521万円・女350万円となっています。

 第2点は、給与総額が大きく減少していることです。給与総額は、97年211兆円・12年186兆円と、大幅減少(△12、1%)しています。財務省の「法人企業統計調査」では、企業の経常利益が増加しているのに対し、そこで働いている職員の給与総額は減少しているのです。この傾向は、日本において特徴的で、他の先進国では、給与所得(雇用者報酬)は増加しています(95年→10年比で、仏2,2倍、独・韓・英1,7~1,8倍、米1,2倍)。

 第3点は、正規・非正規労働者の給与格差が大きいことです。新聞報道では、「平均給与は、ピークだった97年から59万円減少」となっていますが、97年の「(全体の)平均給与」を12年の「正規職員の平均給与」と比較しますと、97年467万円、12年468万円とほとんど変わりません。要は、非正規職員の数が大幅に増加し、非正規職員の平均給与が正規職員の平均給与に比べて極端に少ない(4割程度)ことが、全体の平均給与を押し下げているのです。



 具体的には、12年では、男について正規521万円・非正規226万円、女について正規350万円・非正規144万円、男女合計について正規467万円・非正規168万円となっています。

 このような給与の実態及び実態の推移を踏まえて、私たちがこれから取り組まなければならない労働環境の課題を明らかにし、社会全体でその課題克服に向けてシッカリと取組んでいかなければなりません。

(了)