昨日、英国サウサンプトン大学の政治学者であるジェリー・ストーカー教授にお会いする機会を戴きました。ストーカー教授は、2006年にその著書「政治をあきらめない理由;民主政治で世の中を変えるいくつかの方法」で英国政治学会賞を受賞しておられ、その著書は、今年3月、北海道大学の山口二郎教授によって日本語訳で出版されています。

ストーカー教授は、その著書の中の随所で「政治は重要だ」と強調しており、「民主主義は20世紀の栄光ある成果である(アマルティア・セン氏)が、民主主義の確立こそ21世紀の最高の成果と位置付けられるべき」と述べています。そして、「人々は、抽象的な観念としての民主主義を好んでいるが、その実践についてはうまく機能しないと感じている。」との問題意識から、その原因を分析し、解決策を提案しています。

そんなストーカー教授は、昨日、「現在落選中で、次回総選挙で捲土重来を期している」と述べた私に対して、「政治家をしている人を尊敬している。落選してもなお挑戦しようとしている政治家は、より一層尊敬している。」と言ってくれましたが、その際、英国労働党の復活の秘訣を以下のように教えてくれました。

1979年、83年、87年、92年と4度の総選挙で敗北した労働党は、94年に若いトニー・ブレアを新党首に選んだ。ブレア党首は、一方で、自由主義経済と福祉政策の両立を謳った「第三の道」路線を提唱し、労働組合の影響力を大幅に減少させて、「ニュー・レイバー(新しい労働党)」をアピールすると共に、他方で、地域を含めた経済界からも意見を聞く行動を起こしたそうです。取り敢えずは、意見を聞くだけで信頼関係を深め、実際の政策の提案は政権を奪取してから打ち出したそうです。

また、1枚のカードに、労働党の中で合意した政策の5項目を書いて、労働党の「約束」としてみんなでそれを使ったそうです。これは、現在の民主党が寄り合い所帯で、なかなか政策の一致を見出すことができない状況にあることを踏まえての助言です。安全保障政策、エネルギー政策等の難しい政策でも、その一致するところまでを明らかにして1枚のカードに書くことで有権者には分かり易くなるのではないかと思います。

英国労働党は、2010年の総選挙で政権を失ってしまいましたが、ミリバンド新党首は、その復活をかけて奮闘中だそうです。我が国の民主党も、英国労働党の教訓を生かして復活の足掛かりをつかんではどうでしょうか。

(了)