いわゆる「秘密保護法案」(特定秘密の保護に関する法律案)に対するパブリックコメントの募集期間(今月3日から15日間)を2か月間に延長すべきとの要請が、本日(13日)、日本弁護士会連合会から政府に出されました。民主主義国家における「国民の知る権利」の重要性に鑑みれば、当然の要請でしょう。

秘密保護法案では、諸外国との情報共有を進めたい等の思惑から、▽防衛▽外交▽安全脅威活動防止▽テロ活動防止--の4分野で機密性の高い情報を「特定秘密」に指定した上で、厳格な管理体制を敷くと共に、特定秘密の漏えいに対しては漏えい行為及び取得行為並びにその周辺行為(共謀、教唆、扇動など)を厳罰をもって対処しようとするものです。

政府がパブリックコメントに付した法案の概要を見たところ、内閣法制局参事官として何百本もの法案の審査をしてきた私には、数多くの問題点があると感じられました。その中で私が特に重要と考える問題点を以下にご紹介したいと思います。

第1点は、「特定秘密の指定」に関してです。「特定秘密」は行政機関の長が指定することになっていますが、指定の妥当性を担保する仕組みがありません。行政機関の長が勝手気ままに指定するわけではないでしょうが、指定のための公正な手続きもなければ、指定を監視する仕組みもありません。これでは、国民にとって重要であっても、政府にとって都合の悪い情報は、一方的に隠されてしまいます。

第2点は、「特定秘密の管理」に関してです。法案では、特定秘密を取扱う人たちの管理を徹底するために、取扱い候補者の「適正評価制度」を設けて、候補者とその関係者(家族、友人等)のプライバシーを調査することとしています。形式的には本人の「同意」を得て調査を行うこととしていますが、「同意」しなかった人は、その後、人事や処遇で不利益を被る恐れがあります。実質的強制によって、情報取扱い者の「飼い犬」化が進められるでしょう。

第3点は、「特定秘密の漏えいに対する処罰」に関してです。

処罰の対象となる「特定秘密」の範囲が広範であるにもかかわらず、一般市民には何が「特定秘密」になっているか知らされることはありません。にもかかわらず、一般市民であっても、「特定秘密」と知らずにその情報の入手のための行為(犯罪行為以外に社会通念上是認できない行為なども含まれます。)をすれば、厳罰に処せられるのです。

更に、処罰の対象となる行為が広範で、曖昧なことも問題です。特に、「特定秘密漏えい行為」や「特定秘密の不当入手行為」の実行行為がなくても、単に、共謀、教唆、扇動の行為のみであっても処罰の対象とされています。これでは、5年前、自民党政権が「共謀罪」を創設しようとし、「近代刑法の原則に反する」として国民に拒否された時と同じ過ちを犯そうとしていることになります。

こんなに大きな問題を含んでいる「秘密保護法案」は、その是非について国民的議論を行う必要があります。国民的議論を行うためにも、パブリックコメント期間は十分に取るべきです。

(了)