最近、安倍政権のご都合主義が顕著になっている。その一つが、シリアの化学兵器使用に対する安倍政権の見解であり、もう一つが、福島第1原発の汚染水問題に対する安倍政権の方針である。

1、シリアの化学兵器使用問題

 安倍首相は、先月28日のドーハでの記者会見と本日(9月3日)の米国オバマ大統領との電話会談で、「化学兵器の使用は、人道上、いかなる場合でも許されない」と明言した。

しかし、今年4月のジュネーブでの核不拡散条約(NPT)再検討会議の準備委員会で決議された「核の非人道性」を訴える共同声明に対しては、安倍政権は、「いかなる場合でも核兵器を使用しないことが人類の生存に資する」とする一文のうち「いかなる場合でも」の文言を削除するよう求めた。結局、その要求は実現できずに声明を拒否している。

シリアは、1997年発効の化学兵器禁止条約に加盟をしておらず、形式的に言えば「条約違反」をしているわけではない。それでも、安倍首相が、化学兵器について「いかなる場合でも使用は許されない」と言い切れるなら、核兵器についても同じことが言えるはずだ。

結局、安倍首相の対応は、米国のご機嫌取りのためのご都合主義でしかない。

2、汚染水漏えい問題

安倍政権は、本日(3日)、東京電力福島第1原発の汚染水漏えいに対処するための基本方針と総合的対策を決定し、その中で、本年度の予備費210億円を含む国費470億円を投入(国民が負担することを意味する。)することとした。

安倍首相は「東電任せにせず、政府が前面に立ち、解決に当たる。」と言ったが、事態の深刻さを考えると政府が乗り出すことは必要であろう。しかし、このようなその場しのぎの対応では、汚染水対応について、なし崩し的に国の負担が拡大していく虞がある。

根源的な問題は、原発政策の基本的方針の決定が先送りされている中で、政府と東電との責任の所在(分担)は曖昧なままになっていることだ。このままでは、汚染水問題に限らず、それ以外の問題についても、「政府が前面に立ち」、国民が負担を負わされる虞がある。

結局、安倍政権の対応は、東電救済を目的としたご都合主義でしかない。

(了)