参院選挙前に、安倍首相周辺は「参院選挙までは、安全運転」と言っていた。裏返して言えば、「参院選挙後は、危険運転や暴走運転」となるが、いよいよ、安倍政権の暴走運転が始まったようだ。



 一つは、麻生副総理の発言撤回に関する国会での取り扱いだ。先月29日の都内の講演で「ある日気づいたら、ナチス憲法に変わった。あの手口に学んだらどうかね。」と発言したことが、国内外から大きな批判を浴び、発言の撤回に及んだ。



 発言の中身も大問題であるが、この発言に関する野党の国会審議要求に対して、菅官房長官は「国会で審議する性質のものではない。これで決着だ。」と一蹴したようだ。



しかし、麻生副総理は「私の真意と異なり誤解を招いたことは遺憾だ。」と言っているのだから、その誤解をシッカリと解いて真意を伝えるためには、国会での審議は格好の場であるはずだ。



また、副総理・財務大臣という要職に総理から任命されている人がその職に相応しい能力と識見を備えているのかを国会で確認することを、「国会で審議する性質のものではない」言い切るのは、自分勝手で横暴な理屈だ。



 もう一つは、内閣法制局の長官人事だ。内閣法制局は、「内閣の法律顧問」であり、「内閣における法の番人」という専門性に富んだ組織だ。だからこそ、その長官には、これまで、一定の経験と訓練を積んだ人が任命されるのが通例であった。



 その職務性に適した人であるならば、「任命の通例に従うべき」と言うつもりはない。しかし、今回は、「憲法で禁止されている」と一貫して政府が答弁してきた「集団的自衛権の行使」について、異例の人事で憲法解釈の変更を実現しようとしているのだ。



憲法解釈として確定化したものを、自己の都合に良いように変更しようとするのは、憲法や法規範に対する国民の信頼性を失わせるだけではない。今回の対象は、各国の安全保障政策に影響を与える問題であることから、海外から疑念を持たれる虞のある問題だ。



安倍政権の「暴走」を国会が止められないなら、国民やマスコミがシッカリと声を出さなければならないと思う。