今日は、昼過ぎから夕方まで、山口大学が主催した公開シンポジウム「東日本大震災3年目の課題―山口で考える広域避難と被災者支援の在り方―」に聴衆の一人として参加しました。



 第1部は、「東日本大震災後の2年間を振り返る」と題して、大学の先生方による調査研究の報告です。

先ず、福島大学の加藤真義先生の「福島の被災と定住・避難の支援」。一昨年11月に「収束宣言」が出されて以降、避難した人たちに対し「帰れるのになぜ帰らないの?」として帰還への圧力がかかっている厳しい現実が指摘されました。また、「フクシマ」の人たちは、フクシマの「教訓」を今後どう生かすのかという「事後の立場」と、事故をどう収束させ今をどう生きるのかという「渦中の立場」との二つの立場に置かれ、複雑な心境にある点も指摘されました。被災者の立場の多様性と、避難者と支援者との関係性を考えると、困難だけれども『連帯』が必要であると訴えられていました。

 次に、名古屋大学の黒田由彦先生の「異郷の被災者―愛知県における広域避難者の現状と被災者支援」。「愛知県被災者支援センター」の活動状況が説明されると共に、1200名を超える愛知県滞在の被災者に対するインタビューの内容が紹介されました。子供たちの甲状腺異常などの健康不安と政府の対応に対する不満、家賃補助終了に伴う家計不安、被災者であることを隠さざるを得ない生活、避難地域への違和感、同じ被災者への複雑な感情などの回答があったそうです。これらの調査結果を踏まえ、今後どのような具体的施策を講じるか課題です。

次に、山口大学の速水聖子先生の「東日本大震災における自治体間広域支援の現状」。東日本大震災では、地域社会・自治体機能喪失と原発事故による広域避難が発生しました。そんな中で、山口大学、名古屋大学、弘前大学と香川大学は、協力して約600自治体に対して各自治体による大震災被災自治体に対する支援の状況についてアンケートを実施したそうです。既に、各自治体間では災害時応援協定を結んでいるところも多いのですが、より優れた協定の在り方が検討されるべきでしょう。

 第2部は、「山口で考える広域避難と被災者支援」と題して、山口県を含む日本の各地で被災者問題に取り組んでいる方々からの実体験の報告です。

先ず、NPO法人「北九州ホームレス支援機構」の谷瀬未紀さんの「『絆』プロジェクト北九州における伴走型支援の事例報告」。北九州市では、社会福祉協議会、自治会総連合会、商工会議所などが構成する「『絆』プロジェクト北九州会議」を設立し、住宅、生活支援、雇用などを支援する「伴走型支援事務所」にパーソナルサポーターを置いて活動しています。支援者側の「思い込み」で共感しないで、心配して寄り添うことが大事である、と訴えておられました。

次に、「福島の子どもたちとつながる宇部の会」の橋下嘉美・代表代行の「山口県における避難の受入れと被災者支援」。福島県の自閉症の子どもたちを宇部に迎え入れての活動が紹介されました。その活動の熱心さに感動すると共に、宇部市民が復興支援のために寄付を集め、「復興支援うべ」に7千万円(うち、2千万円は子ども支援用)基金を設け、それを原資に活発な活動をしていることに感心させられました。

次に、「福島避難者のつどい・沖縄じゃんがら会」の桜井野亜・会長の「沖縄じゃんがら会のこれまでの活動と今後の課題」。沖縄県には、被災地から1000人を超える避難者が、福島県からは700人を超える避難者が滞在しています。その昔、いわき地方出身の「袋中上人」が沖縄に漂着して、いわき地方の念仏踊りである「じょんがら踊り」を伝承したことに因んで、「じょんがら会」と名付けたそうです。不安を抱えた避難者の健康診断、親睦会、ボランティア活動、沖縄の人達との交流などに取り組んでいるそうです。

次に、「福島の子どもたちを守る法律家ネットワーク:SAFLAN」の仲里歌織・弁護士の「子ども被災者支援法の背景と現在の課題」。昨年6月に議員立法で制定された「子ども被災者支援法」は、理念や目標を定めた法律であって、具体的な支援策はこれから決めていかなければなりませんが、法で策定が義務付けられている「基本方針」が未だに策定されていません。支援法の具体化に向けて全国的にどのような活動をすべきかが課題となっていると説明されました。

第3部では、上記7人の報告者によるディスカッションが行われましたが、印象に残ったのは、「東日本大震災の被災者のために我々が今できることは何でしょうか?」との会場からの質問に対して、「最も必要なことは、忘れないことである。」と回答があったことです。

東日本大震災の発生から間もなく3年目を迎えようとしています。あの甚大な災害を忘れることなく、今後、我々は、現実と将来にどのように向き合っていくべきなのか、改めて真剣に考えなければならないと思います。

(了)