【総選挙の結果と敗因】

 16日投開票の第46回総選挙は、自民党の圧勝・民主党の大敗で決着しました。私も、多くの落選した仲間と同様、6回目の選挙にして、比例区での復活当選もできずに正真正銘の「大敗」をすることになってしまいました。

 私の敗因は、幾つかあると思いますが、その一つは、全国的に吹いた「民主党への逆風」であったと思います。比例区での政党別得票率を見ると、山口県は全国で最高の自民党得票率(41%)になっていました(ただし、山口県内の民主党の得票率は、都市部での第3極の得票率が相当率あるために、全国で最低と言うわけではありませんが、最低レベルの得票率となっています。)。

 その他の敗因としては、自民党山口県連の「山口第2区の議席を奪還したい」とする執念だったと思います。自民党山口県連は「山口第2区の議席奪還が至上命題である」と唱え、ブランド力(元総理大臣の「岸信介」氏の孫で「岸」姓を名乗る。)を有する「岸信夫」氏を参議院から鞍替えさせました。その後、自民党総裁選挙で岸氏の実の兄である安倍晋三氏が総裁に選ばれ、選挙後には総理大臣の可能性が極めて高くなったのですから、地元の有権者の期待が膨らんだのも尤もだと思います。それに加えて、山口県議会の大半を占める自民党所属県議会議員が山口2区での選挙活動をし易くすることを狙って県議会の開催を総選挙後に延期して総選挙に臨んだのです。さらに言えば、これまで無所属であった山口第2区の県会議員2名が、総選挙前に自民党に入党を認められています。

 もっとも、私のこれまでの政治活動に対する厳しい評価(地元に何をしてくれたのか、死刑執行に慎重な態度をとるなら法務大臣を受けるべきではなかった等)も敗因の一つであることも、率直に認めなければなりません。



【新政権で心配されること】

ところで、年内にも発足する自民党を中心とする新政権で心配されることが幾つかあります。

(その1:「景気と雇用」対策)

 その第1は、選挙中有権者の最大数が関心事項とした「景気と雇用」対策に関してです。自民党は、一方で「国土強靭化法」を作って「10年間で200兆円」の公共事業を行うと共に、他方でその財源としての建設国債を実質「日銀引受け」させることを目論んでいます。しかし、近時の公共投資がその後の景気回復につながらなかったことは明らかですし、安倍総裁が頼りにする浜田宏一氏(エール大学教授)は、2001年から03年まで、政府の経済政策の顧問とも言うべき内閣府経済社会総合研究所長を務めましたが、その就任の効果は上がっていません。「無駄な公共事業+実質的な建設国債の日銀引受け」は、我が国の戦時下の「軍備増強+戦時国債の日銀引受け」と極めて近く、戦後のハイパーインフレーションを想起させるものだと思います。

(その2:原発を含むエネルギー政策)

 その2は、総選挙前の「今日の一言:総選挙の争点」でも触れた、「原発を含むエネルギー政策」です。民主党が「2030年代に原発稼働ゼロを可能とするよう、あらゆる政策資源を投入する」との方針を示したのに対し、自民党は「10年以内に電源構成のベストミックスを決める」との方針示していました。自民党の場合は、要は、「どちらの方向に行くか分からない」ように一見見えて、本音は「原発をできる限り維持していこう」としているように思います。安倍総裁は「軽々しくゼロと言わないのが責任政党だ」と言っていますが、結局は、エネルギー政策決定の先送りをし、「ほとぼりが冷めるのを待とう」としているに過ぎないと思われます。そんなことでは、今最も必要な政策であると考えられる再生可能エネルギー分野への投資の促進や技術の革新に繋がらないのではないかと懸念します。

(その3:「国防軍保持」の憲法改正等)

その第3は、同じく、総選挙前の「今日の一言:総選挙の争点」でも触れましたが、自民党が、憲法を改正して「国防軍」を保持することを目指していることです。自衛隊が専守防衛の実力部隊(自国が武力攻撃を受けた時反撃するための武力行使をするために必要最小限の武力を有する部隊)であるのに対し、軍隊(国防軍)は、国際的な基準では、専守防衛に限定されません。要するに、自民党は、軍隊(国防軍)とすることによって、海外でも武力行使できるようにしようと目論んでいると言ってよいでしょう。総選挙後の安倍総裁の発言は、その点に触れずに、「先ずは、憲法改正の発議要件である『衆参各院議員の3分の2以上の賛成』を規定する憲法96条の要件を緩和して『衆参各院の過半数の賛成』に改正しよう。」と言っていますが、真の狙いは、「憲法9条の改正」であることは間違いありません。

なお、外交・安全保障に関しては、安倍政権下においては、その他に、尖閣諸島と竹島の領有問題、靖国神社参拝問題、韓国の従軍慰安婦問題など、東アジア諸国との摩擦が生じ得る問題が多発しそうな心配があります。



【私のこれから】

 選挙後に、私の支持者の方々、私が国会・政府内で付合いのあった方々の中には、「是非、捲土重来を期して欲しい」と言われる方が大勢います。私としては、「私のこれから」は色々な方々と相談しながらジックリ考えたいと思っていますが、最低限しなければならないことがあると思っています。

それは、13年前に初出馬を決意した際、「日本にも、自民党に代わり得る、政権交代可能な複数の政治勢力を作ることが絶対に必要である」と訴えたことの灯を山口県内で絶やさないことです。13年間「自民党王国」と言われる山口県で何とか12年余り現職を続けてこれた政治家として、その経験を若い人に繋げていかなければなりません。私の13年間は、正直言って、試行錯誤を繰り返し、反省の連続でした。そのことをシッカリと引き継いでいかなければ、私に続く人も同じことの繰り返しになってしまいます。

若くて有能な人を見出して、その人に私の経験を引き継ぐまでは、私も引き下がるわけにはいきません。これを「捲土重来を期す」と言うかどうかは疑問ですが、色々な可能性を求めて、多方面にわたって前向きに行動していきたいと思っています。

(了)