本日、6日の広島及び9日の長崎の「原爆の日」を前に、私は、連合、原水禁及び核禁会議が主催する「2012平和シンポジウム」にパネリストとして参加しました。私の他にこのシンポジウムに参加したパネリストは、広島市立大学広島平和研究所副所長の水本教授と外務省軍備管理軍縮課の吉田課長ですが、シンポジウムの初めには、それぞれのパネリストが30分から40分かけて自ら設定したテーマに基づいてお話をしました。

水本教授は、2010年のNPT(核不拡散条約)再検討会議とその後の動きについて核兵器廃絶に関する全般的な話題についてお話をし、吉田課長は、「2015年NPT再検討会議の準備委員会」として、2010年NPT再検討会議の後今年に初めて開催された第1回準備委員会についてお話をしました。私は、二人の話を受けて、特に私がこれまで取り組んできた個別のテーマである「北東アジア非核地帯」の2010年NPT再検討会議前後の動向についてお話ししました。以下、私の話の概要をご紹介いたします。


1、2010年NPT再検討会議前の動き

民主党核軍縮促進議連は、2008年8月、当時の岡田克也会長、平岡秀夫事務局長らが長崎で「北東アジア非核地帯条約案」を発表し、その後、民主党は「北東アジアの非核化」を政権公約(マニフェスト)に掲げてきました。ここで、「北東アジア非核地帯条約」の特徴を説明すれば、「3+3の構造」(域内3カ国(日・韓・北朝鮮)が核兵器の保有、使用等を行わないこととすると共に、域外核保有3カ国(米・中・露)が消極的安全保障(核兵器非保有国に対しては核攻撃を行わないこと)を提供する構造)を取っていることです。

09年5月、私が、民主党核軍縮促進議連の事務局長として、ニューヨークで開催された2010年NPT運用検討会議の準備委員会の関連行事において「北東アジア非核地帯条約案」を国際的に発表したほか、09年11月に韓国で、そして10年2月に日本で、日韓国会議員等によって、北東アジアの非核化について協議を行いました。このうち、日本での協議においては、両国国会議員による共同声明を発表し、日本の国会議員では86名、韓国の国会議員では7名がそれぞれ賛同しています。

2、2010年NPT再検討会議で残された課題

2010年にニューヨークで開催された2010年NPT再検討会議においては、「北東アジア非核地帯」について様々な動きがありました。そのうち、4月29日に開催された「非核地帯に関する市民社会フォーラム」では、「中東、北東アジア、北極、中欧における非核地帯の設立に向けての可能性を探求することを支持する」と総括されましたが、4月30日に開催された「2回非核地帯条約締約国会合」や5月28日に採択された本会合の「最終文書」では、「朝鮮半島の非核化」に言及されただけでした。

なお、NPT再検討会議の関連行事として NGOが5月6日に開催したワークショップ「北東アジア非核地帯」においては、私から民主党の「北東アジア非核地帯条約案」を紹介し、参加者の皆さんと熱心に協議を行っています。

3、2010年NPT再検討会議のその後

米国政府の高官(ニクソン政権の国家安全保障会議メンバー、クリントン政権の国防次官や国務省政策立案部長等)を務めたM.H.ハルペリンは、昨年11月に、北東アジアに関する包括的条約の一部を構成するものとして、「北東アジア非核兵器地帯」を提案しています。また、核軍縮・不拡散に熱心なG.エバンス(元・豪外相)が音頭を取り、我が国の福田康夫・元総理や岡田克也・元外相(当時)らが賛同署名した「核軍縮・不拡散のためのアジア太平洋指導者ネットワーク(APLN)」が、昨年12月に発足し、その重要課題の一つとして、「北朝鮮を含む北東アジア非核地帯実現の見通しと実現可能性を吟味すること」をあげています。

国内でも、国会(今年4月5日の参議院予算委員会)で北東アジア非核地帯条約案が取り上げられ、これまで、構想自体には積極的であったが、現時点で政府が提唱することに消極的であった岡田克也氏が、「外交は総理大臣、外務大臣が行うべきものだ」としつつも、「北東アジア非核地帯構想の条約案は、是非実現したいと思う。」、「これ(北東アジア非核地帯条約案)は核を北朝鮮に諦めさせるための手段としても活用することは可能だと思っている。」と答弁しています。

更に、関連する動きを紹介すれば、現在でも引き続きNPO法人「ピースデポ」が呼び掛けている北東アジア非核兵器地帯を求める国際署名において、7月末現在で全国で400名超の市町村長が署名しています。そして、国際的な議員連盟である「核軍縮・不拡散議員連盟(PNND)」の日本支部でも、超党派の「北東アジア非核兵器地帯」促進ワーキングチームが今年5月に創設され、現在、私を座長として、超党派の「北東アジア非核地帯条約案」の作成作業が行われています。

4、2015年NPT再検討会議に向けて

2015年NPT再検討会議において、「北東アジア非核地帯」が本会合の最終文書で明示的に取り上げられるように、これから積極的な活動をしていきたいと思っています。その点で、今年5月の第1回準備委員会の議長総括において、「朝鮮半島非核化の達成の重要性と平和的解決の必要性が強調された。北は核実験を含む更なる活動を慎むべき。」とされたことは今後の手掛かりをつかめるものと考えてます。

今後の話として、今年8月末に開催される「PNNDカザフスタン会議」では、「核兵器なき安全保障―非核兵器地帯」をテーマに協議が行われることになっており、私もカザフスタン国会議長の招へいにより出席する予定です。更に、非核地帯を含むことになる非大量破壊兵器地帯として1995年に決議された「中東非大量破壊兵器地帯決議」について、その実現を図る国際会議が、その推進役であるフィンランド国務次官によって今年中に開催されるように努力されており、このような動きは、「北東アジア非核地帯」を本会合で取り上げる動きにつながっていくことが期待されます。』

(了)