脱原発基本法案の国会提出に向けて

 本日、私が世話人の一人を務める民主党「脱原発ロードマップを考える会」の世話人である、近藤昭一、福山哲郎、辻元清美の各議員と私の4名が、民主党の輿石東・幹事長に対し、「脱原発基本法案」の国会提出に向けての協議を民主党の正式機関において行うことを要請しました。

 6月27日付けの「今日の一言」でもお伝えしたように、民主党「脱原発ロードマップを考える会」は、同日、「脱原発ロードマップ第1次提言」を策定し、公表しました。その後、関係大臣(藤村修・官房長官、枝野幸男・経済産業大臣、細野豪志・原子力行政担当大臣、古川元久・国家戦略担当大臣)に直接、「第1次提言」を手渡し、政府内における検討を依頼しています。

 そして、「脱原発ロードマップを考える会」は、「第1次提言」を踏まえた脱原発を実現するための更なる段階として、「脱原発基本法案」を国会に提出すべく、「脱原発基本法案要綱案」(下記参照)を作成し、本日、この要綱案を輿石幹事長に手渡して、上記の要請を行ったのです。輿石幹事長は、「要請は真剣に受け止めたい。早速、党の役員会で、今後の取り扱いについて協議したい。」と回答してくれました。今後の民主党内での協議を期待したいと思います。

 以下に、本日、輿石幹事長に手渡した「脱原発基本法案要綱案」をご紹介いたします。


脱原発基本法案要綱案

(趣旨)

 2011年3月11日、東日本大震災において福島第一原発の事故が発生し、16万人の福島の人々は故郷を追われ、働く場を失い、あるいは家族を引き裂かれた。それに加え、周辺地域に甚大な被害をもたらし、食や健康の安心・安全への脅威も含めて国民全体に大きな不安と恐怖を与えるとともに、国民経済に大きな打撃を与えた。

 原発は、リスクの巨大さでも、放射性廃棄物の問題でも、「倫理的」なエネルギーではない。一旦事故が起これば無限大の被害が発生する可能性があるうえ、一度に大量の電源が失われることなど、エネルギー安全保障上、極めて脆弱なシステムである。また、未だに放射性廃棄物の最終処理が確立できておらず、仮に確立できたとしても、10万年以上の長い管理が必要とされるものである。

 原発による被害を受けるのは、原発の利益を享受している現世代の人々にとどまらない。「未来の世代」の人々も、事故のリスクに晒され、放射性廃棄物を大量に抱え込むことになる。今意思決定することのできない未来の世代に、膨大な付けを回すべきではない。

 一方、原発を利用しなくなった場合には、電力の需給がひっ迫し、電力の安定的な供給に支障を及ぼす可能性があり、このような問題を回避するためには、省エネルギーを一層推進しつつ、代替的なエネルギー源を確保することが必要不可欠である。また、代替的なエネルギー源の確保に当たっては、地球温暖化の防止に配慮して、再生可能エネルギーの活用を図ることも重要である。

このような状況に鑑み、原発を利用しなくなることに伴う各般の課題への適確な対応を図りつつ、原発を利用せずに電力を安定的に供給する体制を早期に確立することは、我々にとって緊要な課題となっている。

[趣旨関係1]  よって、ここに、我々は、脱原発を確実に実施するため、この法律を制定する。

第一 総則

 一 目的

   この法律は、原子力発電所の事故による災害が発生した場合に国民の生命や経済社会に及ぼす被害が甚大になること、使用済核燃料の長期にわたる管理及び保存が極めて困難であること等に鑑み、脱原発基本計画について定めること等により、できる限り早期に脱原発を実現することを図り、もって国民の生命と健康を守るとともに国民経済の安定を確保することを目的とすること。

 二 定義

   この法律において、「脱原発」とは、原子力発電を利用しなくなることに伴う各般の課題への適確な対応を図りつつ、原子力発電を利用せずに電力を安定的に供給する体制を確立することをいうこととし、その他の所要の定義規定を設けること。

 三 基本理念

  1 脱原発は、遅くとも平成37年度までのできる限り早い時期に実現されなければならないこと。

  2 脱原発を実現するに当たっては、電力の需給がひっ迫し、電力の安定的な供給に支障が生ずることとならないよう、省エネルギーを一層推進するものとすること。

  3 脱原発を実現するに当たっては、原子力発電を利用せずに電力を安定的に供給する上で二酸化炭素排出量の増加ができる限り抑制されるよう、再生可能エネルギー電力の拡充(つなぎとしての天然ガスの利用拡大を含む。)を行うものとすること。

  4 脱原発を実現するに当たって生じる原子力発電施設等立地地域及びその周辺地域の経済問題については、その発生が国の政策の変更に伴うものであることを踏まえ、適切な対策が講じられるものとすること。

 四 国の責務

  1 国は、脱原発を実現するため、三の基本理念にのっとり、省エネルギーの推進及び再生可能エネルギー電力の拡充のために必要な政策を推進するとともに、脱原発を実現するに当たって生じ得る電力会社等の損失に対して適切に対処する責務を有すること。

  2 国は、三の基本理念にのっとり、脱原発を実現するに当たって原子力発電施設等立地地域及びその周辺地域における雇用問題が生じないよう、再生可能エネルギー産業、省エネルギー産業、エネルギー総合サービス産業その他のエネルギー産業における雇用拡大のための措置を含め、十分な雇用対策を講ずる責務を有すること。

 五 地方公共団体の責務

   地方公共団体は、三の基本理念にのっとり、国の施策を当該地域において実施するために必要な施策を推進する責務を有すること。

 六 電力会社等の責務

   電力会社等は、三の基本理念にのっとり、第二の脱原発基本計画に基づいて、脱原発を推進する責務を有すること。

 七 国民の協力

   全ての国民は、脱原発の実現に必要な協力をするよう努めなければならないこと。

 八 法制上の措置等

  1 国は、この法律の目的を達成するため、必要な関係法令の制定又は改正を行わなければならないこと。

  2 政府は、この法律の目的を達成するため、必要な財政上の措置その他の措置を講じなければならないこと。

第二 脱原発基本計画

 一 脱原発基本計画の策定等

  1 政府は、脱原発を計画的に推進するため、脱原発のための施策に関する基本的な計画(以下「脱原発基本計画」という。)を定めなければならないこと。

  2 脱原発基本計画は、次に掲げる事項について定めるものとすること。

   ① 発電用原子炉の運転期間を40年までとすることを前提とした平成37年度までの各原子炉の運転の廃止に関する事項

   ② 発送電分離、電力系統強化等の電力システムの改革に関する事項

   ③ 再生可能エネルギー電力の拡大及びエネルギー効率の向上に関する事項

   ④ 電力の安定供給を維持し電力料金の高騰を防ぐ対策(省エネルギー及び化石燃料調達対応を含む。)に関する事項

   ⑤ 脱原発を実現するに当たって生じ得る電力会社等の損失に対する対策に関する事項

   ⑥ 直接処分を前提とした使用済核燃料の管理又は処理の進め方に関する事項

   ⑦ 原子力発電施設等立地地域及びその周辺地域における雇用機会の創出及び地域経済の健全な発展に関する事項

   ⑧ 原子力発電、核燃料再処理及び核燃料サイクルに係る事業の廃止に伴う必要な措置に関する事項

   ⑨ 廃炉及びこれに関連する核廃棄物の処理、放射能汚染対策、核セキュリティ等における原子力関連の技術・研究レベルの向上並びにそのための人材の確保に関する事項

  3 内閣総理大臣は、脱原発基本計画の案につき閣議の決定を求めなければならないこと。

  4 内閣総理大臣は、前項の規定による閣議の決定があったときは、遅滞なく、脱原発基本計画を公表しなければならないこと。

  5 3及び4は、脱原発基本計画の変更について準用すること。

 二 関係行政機関との連携

  1 内閣総理大臣は、脱原発基本計画の案の作成に当たっては、関係行政機関の長に協議するものとすること。

  2 原子力規制委員会は、1による内閣総理大臣の協議があったときは、必要な協力を行わなければならないこと。

 三 年次報告

   政府は、毎年、国会に、脱原発基本計画の実施状況に関する報告書を提出し なければならないこと。

第三 その他

  施行期日等の所要の規定を設けること。』