1、最近の動き

 最近の国政で話題となっているものとして、消費税率引き上げ法案、原発再稼働問題などがありますが、昨年後半に注目されたTPP(環太平洋経済連携協定)についても、これから再び注目されることになると思われます。と言うのも、来月(5月)に野田総理が2回の訪米を予定しており、訪米の際に「TPP交渉への参加」を伝えるのではないかと憶測されているからです。

現在、民主党では、経済連携PT(プロジェクト・チーム)でTPP問題について議論・検討しているのですが、上記の野田総理の今後の動きを睨んで、今月9日から12日にかけて、経済連携PTの調査団(国会議員3名)を米国に派遣して、関係者(米国通商代表部、国務省、現地企業等)と意見交換をすることとしています。

2、TPPとは

復習の意味で、TPPの概要をお示しします。

 TPPは、自由貿易協定(FTA)の基本的構成要素である物品市場アクセス(物品の関税の撤廃・削減)やサービス貿易に止まらず、非関税分野(投資、競争、知的財産、政府調達等)のルール作りのほか、新しい分野(環境、労働、「分野横断的事項」等)も合わせて21の分野を含む包括的協定です。

06年5月に、シンガポール ニュージーランド 、チリ、ブルネイ 4カ国が参加して発効し、その後、米国、オーストラリア、ペルー、ベトナム、マレーシアが参加を表明し、現在、新たな枠組みの合意に向けて9カ国で交渉しています。我が国は、昨年11月に、野田総理が交渉参加に向けての協議(事前協議)を関係国と開始する意向を表明し、現在その事前協議を行っています。

3、韓米FTAを巡る動き
 実は、今年1月に「TPPを考える国民会議」が米国調査団を派遣した際、米国通商代表部のカトラー通商代表補が「日本は、米韓FTA(自由貿易協定)をよく見ておくとよい。TPPの全体像を把握するには良いだろう。」と言っていました。

昨年11月に李大統領によって署名され、今年315日に発効した韓米FTAは、我が国では「韓国に先を越された」と評価されていますが、韓国国内においては「不平等条約」と評されるような事態に陥っています。韓国国会での協定承認後でありながらも、韓国国会では米韓FTAの再交渉を求める決議が行われ、今年28日に、96名の韓国国会議員連名で、オバマ大統領あてに再交渉を求める書簡が送られるという事態に至っています。

4、TPPの本質

 国際的な経済連携を強化するに当たって、「アジア・太平洋地域の開かれた経済体制を構築する」とする考え方には賛同できますが、米国を含む9か国が参加するTPPがその役割を担えるものであるのかは、しっかりと見極める必要があります。

TPPについては、農業分野(特に、農産物の関税撤廃)が良く取り上げられていますが、農業分野は、TPPの交渉対象21分野のうちの2分野でしかありません。もちろん、その分野も大事なのですが、韓米FTAのケースを見ると他の分野(投資、競争、知的財産、政府調達、環境、労働、紛争解決、「分野横断的事項」等)にも十分注意を払う必要があります。米国が何を狙ってTPP交渉を進めようとしているのかを私たちは見失ってはいけないと思います。

米国がTPPで狙っているのは、先ず第1に、国際的な活動(輸出、投資、ライセンス提供等)をする米国企業が他の国の「国家権力による制約」を受けないようにしようとしていることだろうと思います。TPPによって、米国企業にとって競争上不利になる制度を止めさせたり、その導入を阻止したりして、できる限り米国の制度に近いものをFTT参加国に広めようとしているのではないかと考えられます。第2に、TPPを、アジア、特にこれからの経済成長が期待される中国やインドの成長力を取り込むための第一ステップにしようとしているのではないかと思います。中国やインドの制度等は、米国と異なったものがありますが、TPP参加国の力を合わせることによって、これらの制度等を米国の制度等に近いものにする圧力をかけて行こうとしているのではないかと考えます。

5、まとめ

 我が国にとってプラスとなる可能性があるのであれば、TPP交渉に参加していくことを頭から否定するものではありませんが、以上のような状況をしっかりと踏まえ、21分野にわたる交渉の行方について一つ一つ吟味しながら、TPP参加の是非を検討すべきものと考えています。そのために必要な情報をシッカリと収集してくるのが、今回の経済連携PT調査団の大きな役割になっていると考えます。

(了)