今日は、東日本大震災が発生してからちょうど一周年です。この日、東京では、「東日本大震災一周年追悼式」が行われ、私も出席しました。この式典には、天皇・皇后両陛下が天皇陛下の手術後間もないにもかかわらずご臨席され、野田総理大臣をはじめ国権3権の長、岩手、宮城、福島の被災三県の遺族の方々も出席されました。


 野田総理大臣が式典の式辞を述べられたのですが、その中で、野田総理は、「三つの誓い」をしています。その第1は、一日も早い復興です。原発事故のあった福島については、「福島を取り戻す」と表現しています。その第2は、震災の教訓を未来に伝えていくことであり、災害対策を強化していくことです。その3は、助け合いと感謝の心を忘れないことです。海外からの温かい支援に、今度は我が国が応えていくとしました。


 野田総理大臣の「三つの誓い」に全く異存はありませんが、大震災発生後1年間が経ったところで、大変心配することが出てきています。


 その第1は、震災復旧・復興の進捗状況が芳しくないと言われていることです。これだけ大きな自然災害に加えて、いまだかつて経験したことのない異質な原発事故が加わったのですから、そう簡単には物事が進まないのは仕方ないと思います。


 しかしながら、今年度の補正予算(第1次、第2次と第3次)における東日本大震災復旧・復興予算(14,3兆円)が本年1月末時点(私が「教えてほしい」と言って出てきた最新のものです。)での執行率(実際に使われた金額ではなく、実施計画に記載されたり、事業費が内示された金額の割合だそうです。)は、54,6%に過ぎませんでした。また、地方自治体が自分の判断で使える「復興交付金」の地方自治体の要望額に対する国の承認額の割合は、岩手県が98%であるにもかかわらず、宮城県は60%を切っているようです。


 この状況を早く改善しなければならないと思っているのは、式辞で「一日も早い復興」を誓った野田総理に限らず、皆が皆だと思います。進捗状況が芳しくないのは、私が総務副大臣として大震災直後に関わった経験から言えば、「人材不足」が大きな原因ではないかと思います。ただ単に人(例えば、ボランティアなど)が集まればよいというのではなく、復旧・復興事業に関係する仕事、特に、地方自治体での公共事業の計画づくり等に関わった経験を有する人材が必要です。


 被災地の地方自治体は、その職員に多くの犠牲者を出していましたし、応援をする国や地方自治体の職員も、「職員削減」の全国的風潮の中でなかなか余裕がないのではないでしょうか。今朝のテレビ番組で、平野・復興大臣が「復興庁の職員の増員を検討したい」と言っていましたが、これは、復興庁だけでできる話ではなく、政府全体で取り組まなければ実現できないことです。野田総理の覚悟が問われます。


 その第2は、原発への取り組みがなし崩し的な対処になっている嫌いがあることです。私は、私が法務大臣に就任して以降原発問題に関わる余裕がなかったのですが、法務大臣退任以降、党に設置されている原発関係のプロジェクトチーム、私的な勉強会等に積極的に参加しています。しかし、率直に感じるのは、「今後のエネルギー政策、原発政策についての議論を責任を持ってリードしているのはどこか」という疑問を感じています。


 党のプロジェクトチームも多角的な調査・検討を行い私にとって大変参考にはなるのですが、具体的な方向性を持った議論は行われていません。政府の政務三役・官僚も、自分の所掌のことについては良くフォローしていると思いますが、全体のことになるとどこが責任を持って進めているのか分かっていません。勉強会等で話をしてくれる有識者の方々も、自分の意見をしっかりと述べられるのですが、その意見が権威のある場でしっかりと議論の対象としてもらっているという印象は持っておられないようです。


 結局、原発問題も、当面の問題(例えば、原発再稼働、東電の電気料金値上げ、東電処理など)に追われており、中長期的な方針を踏まえて計画的に対処していこうとしているとは思えず、なし崩し的に対処しているようにしか見えません。このままでは、今夏は電力不足だからとか、東電の経営を当面維持する必要があるからとか、といったような言い訳の下で、大事なことが決まってしまうことを懸念します。


(了)