再生可能エネルギー促進法


 27日(月)、菅総理は、自らの総理辞任の「一定の目途」として、①公債特例法の成立、②第2次補正予算の成立、③再生可能エネルギー促進法の成立の3つを挙げました。前2者は、野党は成立を渋る格好は取っていますが、成立しないと国民経済・国民生活に大変な影響を与えることになりますから、野党もいずれ妥協点を探って来るでしょう。しかし、再生可能エネルギー促進法は、与野党入り乱れての賛否がある法案ですので、成立は、そう簡単ではありません。


 一方、今月14日には、二百数十名に上る超党派の国会議員が、「『再生可能エネルギー促進法』の早期成立を求める提言」に署名し、菅総理や田中慶秋・衆議院経済産業委員長などに申入れをしています。私も、署名の呼びかけ人の一人となって、他の呼びかけ人と一緒に菅総理にこの提言を届けに行きました。今や、この法律が成立しないままに延長国会の会期末を迎えることになる事態になれば、もしかしたら、菅総理は「解散・総選挙」に訴えるかもしれないと噂されています。そんなこの法律は、一体どんな法律なのでしょうか。


 「再生可能エネルギー促進法」は、正式には、「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法」という名称です。法律の眼目は、「全量固定価格買い取り制度」と呼ばれるもので、(陸上、海上)風力、太陽光、地熱、小水力、バイオマスなどの再生可能エネルギーについて、その発電量の全量を一定の固定価格で電力会社が買い取ることを義務付ける制度です。本当に再生可能エネルギーを促進することができるか否かは、実は、「どのような価格で買い取るのか」の条件次第なのですが、それは、経済産業大臣が定めることになっています。


 それでも、この法律が成立しない限り、再生可能エネルギーの促進を図る前提が整わないのですから、菅総理がこの法律の成立に熱心になるのも分かります。


 と言うのは、再生可能エネルギー比率(全発電量に占める再生可能エネルギー電力量の割合)を急速に伸ばしているドイツでは、全量固定価格買い取り制度を盛り込んだ「再生可能エネルギー法(EEG法)」が施行された2000年以来10年間で、再生可能エネルギー比率は10%上昇(シェア16,8%)し、2004年にEEG法が改正されて太陽光発電が約16倍に急拡大している一方で、我が国では、再生可能エネルギー比率は、ここ10年間でむしろ減少(2000年度9,2%から2009年度8,1%)しているのです。


 このような状況になった原因としては、我が国では、再生可能エネルギーに対する評価が低かったこと(発電コストが高い、発電量が不安定である等)や、原子力発電に対する評価が比較的高かったこと(発電コストが低い、CO2発生量が少ない等)が挙げられます。しかし、福島第1原発の事故が発生してからは、その雰囲気が一変しました。そして、福島第1原発の事故が発生した3月11日に奇しくも閣議決定された再生可能エネルギー促進法案に、多くの国民の関心が集まってきたのです。


 しかしながら、この法律が本当に「再生可能エネルギー促進法」となるのか否かは、実は、法律成立後の運用次第であることに注意をしなければなりません(逆に言えば、仮に法律が成立しても、政府や電力会社がいい加減な運用をすれば、再生可能エネルギーは停滞したままになるのです。)。例えば、次のような課題が提起されています。


 第1に、再生可能エネルギーの価格設定の種類分け(経済産業省令で定めることになっています。)の問題です。一部には、「再生可能エネルギーの種類として、『太陽光』と『その他』の2種類で良い」という意見もあるようですが、それでは、現在コストは高いが将来の普及によってコストが低くなることが期待される再生可能エネルギーに投資が向かうことが期待できずに、再生可能エネルギーの促進につながりません。ドイツ等の経験からしても、個々の再生可能エネルギーの種類ごとにその将来の可能性も考慮に入れた買取価格を設定することが必要であると考えます。


 第2に、再生可能エネルギーの発電者と電力会社の送配電線への接続の問題です。我が国の電力会社は、発電と送配電を一体として行っていますが、この法律では、「電力会社は、自身の電気の円滑な供給の確保に支障が生じるおそれがあるときは、再生可能エネルギー発電者との電気的な接続を拒むことができる」とされており、電力会社の恣意的な判断が心配されます。「発電と送配電の分離」という政策を主張する人もありますが、そこまで行かなくても、接続の透明性、公平性をどう担保するか重要な課題であると考えます。


 いずれにしても、どのような価格設定にするか、どのような場合に接続の拒否を認めるか、などの問題を考えるに当たっての最大のキーポイントは、再生可能エネルギーの発電量又は発電比率の「目標」をどう設定するのかであると思います。その「目標」こそ、正に、国民的選択の問題であり、経済産業省や電力会社だけで決められる問題ではないように思います。これから、大いに、国民的議論が高まることを期待したいと思います。