2011年5月6日 原発と民主党政権

 今日、菅首相は、記者会見で、静岡県にある浜岡原発のすべての原子炉の運転停止を中部電力に要請することを発表しました。菅首相は、「文科省の地震に関する審議会が、今後30年間でマグニチュード8クラスの地震が発生する確率が87%あるとする以上、防潮堤建設など中長期の対策が完成するまでの間、すべての原子炉を停止すべきだと私は判断した」と語っています。

 民主党政権の今までの原子力発電に関する政策が、自民党政権時代とほとんど変わらない、いや、人によっては「自民党政権以上に積極的」と評されている中で、今回の菅首相の要請は、「菅首相であるからできた要請」と言えると思います。3月11日に起こった福島第1原発及び第2原発の事故に対しては、菅首相は、大変な緊張感の中で原発災害対策本部長として陣頭指揮を執り、大いに悩み苦しまれていました。それ故に、自分自身で確信をもって出した要請だと思います。

 ところで、上述したように、「民主党政権は、自民党政権以上に原発に積極的だ」と言われることがありますが、それは一部の人の一面的な見方ではないかと思います。これまで、民主党政権下においても、慎重派の民主党議員が行動していたことを皆さんに知っておいてほしいと思います。色々な民主党議員が声を上げていましたが、今日は、私の活動についてご紹介したいと思います。

 その1は、政権交代直後の衆議院予算委員会で行った質疑です。小沢鋭人・環境大臣と直嶋経産大臣に対して、原子力発電が環境に与える影響、原子力安全規制委員会の設置などに関して質問しています。私が与党議員ということもあって、私自身もちょっと突込みが足りなかったかなという感じがしますが、質問時間が限られている中でしたので、ご容赦いただきたいと思います。なお、質疑応答の概要は、文末の【参考1】に掲載していますので、ご覧になってください。

 その2は、内閣府に設置された原子力委員会における私の活動です。原子力委員会は、原子力安全委員会、原子力安全保安院が安全問題を中心に所管しているのと違って、原子力政策の全体(安全の確保のための規制の実施に関する事項は、原子力安全委員会の任務なので除かれます。)を所管し、「原子力政策大綱」を策定しています。私が、昨年6月に内閣府副大臣になってその担当の一つに原子力委員会が入っていましたので、事務局の一員として色々な場に参加しました。

 特に、原子力政策大綱が策定されてから5年が経とうとしていたことから、その見直しをすべきか否かを原子力委員会が協議していましたので、私にとっては関心の高い活動分野となっていました。その時の私の視点は、「原発に不安を持っている人がいる以上、政府はその不安にしっかりと向き合って行動すべきである」というもので、原子力委員会の定例協議(41回、45回、48回、49回に出席)や福井県、青森県で行われた「ご意見を聴く会」に出席をしています。青森県の公聴会での私の挨拶が私の基本的な考え方を示していると思いますので、文末の【参考2】に掲載しました。参照してみてください。

【参考1】
2009年11月2日衆議院予算委員会

○平岡委員 原子力発電の問題について、まず、環境大臣にお尋ねいたします。
 環境大臣は、(2010年)9月28日に、CO2削減に関して原子力発電の活用を求める意見書を経済産業大臣に提出されたと報道されているが、原子力発電については、放射性廃棄物の処理の問題、廃炉による解体の問題、あるいは生態系への影響等を非常に心配している人たちが実は大勢いる。そういう人たちがいるという状況の中で、環境大臣としては、環境に対するさまざまな影響についてどのように考えているのか。

○小沢国務大臣 委員の質問は、川内原発(鹿児島県)の件である。これまでも環境行政としては、原発の安全性の確保が第一、二番目には、いわゆる生態系への配慮、土壌を含めた、そういった点で環境省としては意見を申し上げてきた。
 今回、川内原発に当っては、新たな視点として温室効果ガスの削減という話を加えた。総理の国連での1990年比2020年25%削減という国際的な発言にかんがみ、私としては、新たな視点として温室効果ガスの削減という話を意見書に加えた。
 しかし、委員が御指摘のさまざまな配慮は当然のことであって、この意見書においても、温室効果ガスの削減が一つの柱、もう一点は今までと同様のいわゆる自然環境への保護の観点も申し上げている。これは同時並行的に両方とも必要だとの思いでいる。

○平岡委員 ぜひ環境大臣には、幅広い視点からしっかりとした環境行政をやっていただきたい。
 そこで、経済産業大臣に原子力発電の安全性の問題について2点お尋ねしたい。第1点は、これまでの政権(自民党政権のこと)下で行われてきた安全検査に関する体制とか運用についてはどのように評価しておられるのか。第2点は、民主党の政策インデックス2009の中にも「安全チェック機能の強化のため、国家行政組織法第三条による独立性の高い原子力安全規制委員会を創設する」としているが、この点について鳩山内閣としてどのように取り組んでいかれるつもりなのか。

○直嶋国務大臣 平岡議員の御質問二点にお答えする。
 まず、今の体制を簡単に言うと、原子力保安院が一義的には規制をしているが、従来から少し改善をされているのは、数年前から予算、人事等はエネ庁から切り離して独立する形にして運用している。したがって、その効果を今後見てみたい。もう一つは、保安院に加えて内閣府に原子力安全委員会があって、さらにそれをチェックするというダブルチェック体制です。
 今後ともこの体制でいいのかについては、民主党の政策集の見解も含めて今後よく議論していきたい。
 もう一点、この間のさまざまな出来事の中で明らかになってきたのは、運用面での問題、例えば、柏崎原発で起きた火災の問題は想定外のことであったが、それを広報する体制などの運用面で幾つか課題が出てきている。したがって、当面、その運用面での課題もきちっと対応しながら、今後の安全のあり方というのは不断にチェックをしていきたいと考えている。

○平岡委員 国民の皆さんは、安全性第一ということの民主党の考え方を、できる限り具体的なものにしてほしいという気持ちを持っているで、ぜひその観点から進めていただきたいと思う。

【参考2】
原子力委員会主催「ご意見を聴く会in青森」(2010年9月11日)での私の挨拶

 内閣府は原子力委員会の事務局を務めており、私は、事務局をつかさどっている立場から参加させていただいている。そもそも原子力委員会とは一体何ぞや、あるいは原子力政策大綱というのは一体何ぞや、それと政治とのかかわりはどうなのか、こういうことについても、皆様方もよくわからない点もあるかもしれませんし、私たちもその辺りの間合いというか、関係というのについては大変いろいろ難しい点があるんではないかと思っている。つまり、委員会制度をとっている以上は、透明性、公正性、専門性あるいは普遍性というものをできる限り求めていきたいという思いがあって、原子力政策の基本的な指針が示されている。しかしながら、その指針も、国民の皆さんに支持されるものでなければならないという意味においては、政治あるいは政治家とのかかわりというものもあると、私は思っている。その意味で今日は、事務局一員でありながらも、政治家の一人として皆さんの声をしっかりと聞かせてもらいたいという思いで来ている。

 そういう状況の中で、本日は、原子力政策に非常にかかわりの深い施設がたくさんある地域である青森県で、きょうは石田さん、遠藤さん、そして山田さんという有識者の方々にもお話を伺わせていただくし、一般の方々、23人ぐらいの方がご発言いただくとも聞いている。私は、現在の原子力政策大綱が国民の目線で支持されるものであるかどうなのか、そしてそういう視点から見たときに今の原子力政策大綱を見直す必要があるのかどうか、その点についてしっかりと皆さん方からのお話を伺いたいと思っている。最終的にどうするかを判断するのは原子力委員会ということであるが、我々も、政治とのかかわり、少しでも国民の声が反映されるような努力をしていきたいと思っている。