補正予算の国会提出

 本日の午後、政府は、平成23年度の補正予算を閣議決定し、国会に提出しまし
た。 今回の補正予算は、東日本大震災の発生により緊急に必要となる経費を支出し
ようとするものに過ぎず、いずれ6月頃には、復興を主眼にした大規模の補正予算が
策定されることになります。今回の補正予算の歳出額は4兆153億円で、菅直人首
相の本日の答弁では、阪神淡路大震災発生直後の補正予算の約4倍の規模となってい
るそうです。補正予算の歳出の中身は、災害救助等関係費4,829億円、災害廃棄
物処理事業3,519億円、災害対応公共事業関係費12,019億円、施設費災害
復旧費等4,160億円、災害関連融資関係費6,407億円、地方交付税交付金
1,200億円、その他の東日本大震災関係経費8,018億円です。

 補正予算の規模も話題となりましたが、もっと話題となったのは、その財源をどう
調達するのかです。歳入として計上されたのは、独立行政法人「日本高速道路保有・
債務返済機構」からの納付金2,500億円(高速道路料金の割引利便増進事業を中
止することに伴って、既に拠出していたものを取り戻したものです。)と公共事業費
からの地方負担金収入551億円だけで、残り37,102億円は、「既定経費の減
額」によって賄われています。「既定経費の減額」の中では、野党は、民主党がマニ
フェストが後退することによって捻出された、子ども手当の減額2,083億円と高
速道路無料化の社会実験費用の減額1,000億円は「してやったり」と見ているよ
うであり、基礎年金の国庫負担減額24,897億円や政府開発援助の減額501億
円は「けしからん」と見ているようです。なお、この既定経費の減額には、国会議員
歳費の減額22億円(議員一人当たり月50万円を6か月間)も含まれています。

 「既定経費の減額」のうち「基礎年金の国庫負担減額24,897億円」は、私
も、あまり感心していません。と言うのは、年金財政が厳しくなっている中で既に政
策決定して実行している「基礎年金支給額の国庫負担の3分の1から2分の1引き上
げ」を停止することは、いわば「隠れ借金」とも言うべきものだからです。かつて、
各年度の多額の歳入確保措置が、いずれ返さなければならないのだから借金であるは
ずなのに、表面的な国債発行額を減らすためのものであると、批判されたことがあり
ました。「第2次補正予算では国債発行に頼らざるを得ないが、第1次補正予算は国
債発行を避けたい」という思いが強すぎたのではないでしょうか。

 その気持ちも分からないわけではありません。と言うのは、我が国の国債に対する市
場の信認が弱くなってきている傾向が見られるからです。昨日(27日)米国の債券
格付け会社「スタンダード&プアーズ」社は、日本国債の格付けのアウトルック(格
付けが中期的(通常6か月から2年間)にどの方向に動きそうか)を「AAマイナス・
安定的」から「AAマイナス・ネガティブ(格付けが下方に向かう可能性あり)」に変
更しています。日本の今後の財政見通しは、政府の政治的リーダーシップと、いかに
財政再建策に関する政治的コンセンサスを形成できるか、に大きく左右されると言わ
れています。

 国債に対する市場の信認が弱くなれば、国債価格の下落(=長期金利の上昇)を起こ
し、それによって財政がより悪化し国債発行額の増加が余儀なくされ、高率のインフ
レを発生させる惧れがあります。そうならないために、正に政治のリーダーシップが
問われる時がまもなくやって来ると思います。