統一地方選挙が終わって、民主党内には、菅首相や岡田幹事長の執行部の責任を追
及しようとする動きが出ています。選挙で厳しい結果が出た責任は、確かに、その時
の執行部が問われるべきものではありますが、現在の政府・与党に対する有権者の厳
しい批判は、何も執行部だけに向けられたものではないように思います。「民主党
は、党内でゴタゴタしないで、一致団結して難局に当たるべきだ」という声は、私の
周りには多く聞こえてきます。


 有権者の皆さんからそのような声が出ている要因の一つとして、これまで「財源不
足からくるマニフェスト見直しの是非」に関する路線対立がありましたが、東日本大
震災の勃発後には「大震災の復旧・復興のための財源の在り方」に関する論争がある
と思います。しかしながら、被害額16~25兆円、復興所要財源30兆円とも言わ
れる後者の論争については、「復旧・復興待ったなし」で取り組まなければならない
状況の下で、財源に関する論争が被災地の復旧・復興プランの策定を遅らせることに
なったのでは、本末転倒になります。


 そこで、復旧・復興プランの策定は政府・与党(できれば、野党も含めた超党派
で)でできる限り早急にまとめることとし、その財源論については、その議論は引き
続き行っていくものの、その決定は、来年9月に行われる民主党代表選挙(ちなみ
に、自民党総裁選挙も来年9月に行われます。)における主要な争点として決着させ
てはどうでしょうか。代表選挙までの間に、政府・与党の中で財源問題についての
様々な提案をしっかり議論し、代表選挙においてそれぞれの候補者が各人の提案を国
民に訴えていくこととし、民主党に所属する議員は、その選挙結果を尊重していくこ
ととしていくのです。これにより、民主党の結束が実現されれば、民主党を支持して
きた人たちにも納得してもらえるのではないでしょうか。


 ここで、復興財源の在り方について、今までに出ている議論をちょっと整理してお
こうと思います。


 第1の論点は、復興財源を「借金(国債)」に求めるかどうか、についてです。民主
党の中にも、「埋蔵金」や「歳出削減」にその財源を求める意見もありますが、民主
党政権下でのこれまでの「歳出予算の見直し」等で実現できなかったことができるか
は疑問です。具体的な提案を提示してもらって、シッカリと検証する必要がありま
す。


 第2の論点は、国債(「復興国債」等)で賄うとする場合の復興国債の消化方法につ
いてです。①財政法の原則に基づいて「市中消化」とするか、「日銀引受け」とする
かの議論、②「市中消化」の場合でも、「市場条件での消化」とするか、「無利子国
債」等によるメリットを付した消化とするかの議論に分かれます。「市場条件での消
化」が困難な状況ではないので、副作用が大きい「日銀引受け」や「無利子国債」等
は避けるべきと思います。


 第3の論点は、復興国債を発行する場合その償還財源をどこに求めるのかについてで
す。大きく分ければ、①「増税(復興税)による償還」をせざるを得ないとするか、
②「国債発行で景気刺激しての税収増による償還」で可能とするか、の議論がありま
す。後者であればそれに越したことはないと思いますが、多額の国債発行による財政
運営が長年続いても日本経済がデフレ傾向を克服できていない状況からは、多くを期
待できないと思います。ある経済学者は、①「復興国債+復興事業」の組合せは
「(復興税+復興事業)+(赤字国債+納税者へのバラマキ)」と同じ経済的意味で
ある、②「義捐金で被災地支援」と「税金を集めて被災地支援」とは同じ経済的意味
を持つ、と言っています。


 第4の論点は、復興国債の償還を増税(復興税)に求める場合でも、どのような税金
にするかについてです。「被災者に課税されないように所得税や法人税にする」、
「国民皆で復興を支援する意味で消費税とし、被災者に課される消費税は被災地や被
災者に還元する」、「税目にかかわらず税負担できる人に幅広く負担してもらう」
等々、色々な意見があります。この点こそ、菅政権がこれまで進めようとしてきた
「社会保障と税の一体改革」や「財政運営戦略」とどのように関係づけて結論を出す
か、ある程度の時間をかけて議論をする必要があることだと思います。


 復興のための財源論についての結論を1年余りも先に延ばすこととなる私の提案に
は、与党の一部が主張する「復興国債+復興事業」による経済成長効果をみながら増
税所要額を検討するという効用もあると思います。皆さん、いかがですか。