本日の朝刊によりますと、二井関成・山口県知事は、昨日の記者会見で、宇部市出身で衆院東京18区選出の菅直人首相について「(山口県)9人目の宰相とはならない」と述べたそうです。どのような経緯でそのような発言となったのか定かではありませんが、二井知事の発言の意図がどこにあるのか、ちょっと疑問に思います。山口県のためを考えると、敢えてそんな発言をすることに何のメリットもないのではないかと思います。

 報道によれば、県内政界に「9人目」論争が起きる中、二井知事が「地元選出を条件」とする見解を示したそうです。二井知事は、「選挙区がどこかで判断し、地元選出が条件と考えればいい」と指摘し、菅首相が宇部で生まれ、高校2年まで過ごしたことを踏まえ、「県とゆかりがある」としたそうです。同じく、報道によれば、自民党山口県連側も「政治家の地元は選挙区」として、二井知事と同じ見解を示しているそうです。

 私は、菅首相が選出された時、「9人目の山口県出身の総理誕生」とコメントしました。その時の思いつきや、参議院議員選挙への影響を考えて、そうコメントしたわけではありません。元々、私が2000年1月に衆議院議員選挙への出馬表明をした際、私は、「山口県出身の総理大臣として、8番目は高村正彦氏か菅直人氏がなると思うので、私は9番目の総理大臣になる覚悟で衆院選に出馬したい。」と抱負を語りました。

 その後、2000年当時の政界の予想を全く覆して、安倍晋三氏が「山口県から8人目の総理大臣」になりました。安倍晋三氏は、山口県出身の安倍晋太郎氏のご子息ですが、「生まれも育ちも東京」と聞いています。知事の「見解」を聞くと、安倍晋三氏は、安倍晋太郎氏の選挙地盤を「世襲」して山口県4区を選挙区にしているだけではないのか、そんな人を「山口県出身」と本当に言えるのか、と言いたくなりそうです。

 考えてみれば、明治維新後の山口県出身の歴代総理大臣は、初代総理大臣である伊藤博文公を始めとして、選挙で選ばれた国会議員である人は戦前にはいません。まさか、二井知事や自民党山口県連は、「選挙区が山口県ではないから、戦前の『山口県出身』と言われる歴代の総理大臣は、山口県出身ではない」と言おうとしているのでしょうか。そんなことはないと思います。

 菅総理は、総理就任初の国会での所信表明演説で、「私は、山口県宇部市の出身」と言明しました。そんなことを所信表明演説で言った総理大臣は、私の記憶では他になかったと思います。また、総理大臣就任直後の今月13日には、「故郷(ふるさと)」宇部市にやって来て、恩師のお見舞いをし、宇部市にある同級生たちを中心とする後援会の歓迎会を受けています。このように、菅総理は、正に「山口県は故郷」と考えているのです。

 山口県で生まれ、人格形成に大きく影響を受ける高校2年生まで山口県で育った人が、自ら「山口県(宇部市)出身」と名乗りを上げているのに、なぜ、山口県の人々が「山口県出身」と認めてあげないのでしょうか。まさか、選挙区が山口県でなければ「地元への利益誘導をしてくれないから」ということでもないでしょう。菅総理には、「山口県出身」の気概を持って、大きな視野でこの日本の舵取りをして欲しいと思っています。