昨日、在日米軍の再編問題に関して、二つの大きな出来事がありました。その1つは、全国版で大きく取り上げられた「米軍普天間基地の移設問題での鳩山総理の2度目の沖縄訪問」であり、もう一つは、全国的には大きく取り上げられることはなかった私の地元・岩国市で開催された「米海軍第7艦隊の空母艦載機の移駐に反対する大集会」です。

 鳩山総理は、沖縄で、普天間基地の移設問題に関して、「代替地は辺野古付近にお願いせざるを得ないとの結論に至った」と説明し、「私(鳩山)自身の『できるかぎり県外』という言葉を守れなかったこと、県民に大変な混乱を招いたことを心からお詫びする」と陳謝しました。これに対し、沖縄県知事は、「大変遺憾で、極めて厳しい」と応答し、辺野古のある名護市長は「断固反対だ」と拒否をしたと報じられています。

 確かに、鳩山総理が「5月末までに決着させる」と言い続けてこの結論で説明したのでは、沖縄県民にとっては「これまでの総理の発言は、一体何だったのか」という気持ちになると思います。私たちですら、「総理は、何の根拠があって『5月末までに決着させる』と言っているのだろうか。余程しっかりした根拠があるのではないか。」と思っていました。しかも、沖縄県内に引き続き移設地を求める根拠も釈然としません。

 鳩山総理は、この点に関し、先の沖縄訪問時に、「学べば学ぶにつけて、沖縄海兵隊の抑止力が必要であることが判った」との発言をしていましたが、その「抑止力」の具体的内容がはっきりしません。沖縄海兵隊の「抑止力」の内容がよく判っているはずの自民党の石破・政調会長も、昨日訪問先の岩国市内で「なぜ、こうなったのか言わなければならないのに、欠けている」と言っていたそうです。安全保障通の石破氏でも、沖縄海兵隊の「抑止力」は説明できないのでしょうか。

 ところで、石破氏は、同時に、米軍再編問題に関し、「日本はどうあるべきか、負担を負いながら言うべきことを言ってきた岩国は1つのモデルだと思う。」と言ったそうです。石破氏は、彼が防衛大臣時代に進めた米軍再編の中で、厚木基地から岩国基地に空母艦載機59機を移駐させるために、既定の市役所建設補助金35億円をカットする等の「アメとムチ」の手法で受入れを迫って岩国市民の分断作戦を取ってきた人です。そんな過去を持つ人が言える言葉か、と怒りを感じます。

 その岩国市内で、昨日、「見直せ!米軍再編 5・23岩国大集会」が行われ、大雨にもかかわらず約4000人(主催者発表)が集まりました。私は、「鳩山政権を批判することになるような集会になぜ出るのか」と指摘する人がいる中で、参加し挨拶もしました。「空母艦載機の岩国移駐」についての検証結果が住民に説明される前に、前政権が引いた路線通りに平成22年度予算計上が行われ、未だに政府が十分に説明責任を果たしてはいないと考えているからです。

 その説明責任の対象となる項目の大きな一つが、やはり、「米軍の抑止力」の具体的内容です。空母艦載機を搭載する米原子力空母ジョージ・ワシントンを有する米海軍の第7艦隊がどのような役割を果たしているのか、岩国基地を現在使用している米海兵隊航空部隊(ジェット戦闘機等)はどのような役割を果たしているのか、その役割を果たすためには岩国基地以外に適地はないのか等、現在の岩国の負担が倍加することを受容れるに十分な説明がされているとは思えません。

 私は岩国大集会の挨拶の中で、「沖縄の人々が大きな基地負担(日本の0,6%の面積しかない沖縄に、在日米軍基地の75%がある。)で苦しんでいるにもかかわらず、その負担を分かち合おうという国内の地域がない。実は、日本国民は、海兵隊や在日米軍の抑止力が必要だとは本当は思っていないのではないか。北朝鮮や中国の脅威を強調するより、むしろ、北東アジアの緊張を和らげて、日本にある米軍基地を縮小していくべきではないか。」と呼びかけました。

 例えば、「普天間基地機能をグアム・テニアンに移す」との案(社民党、民主党沖縄問題議員懇談会)に対しては、「普天間基地のヘリ部隊は海兵隊地上部隊と一緒でないと移せない」、「沖縄海兵隊がグアム等に移ると抑止力が無くなる」などと説明されていますが、それなら、「岩国の海兵隊航空部隊をテニアンに移す。岩国には九州の自衛隊を移す。九州の自衛隊基地に沖縄海兵隊を移す。」という玉突きの移設案はどうでしょうか。これに類似した案は、橋本輝和・教授や田岡俊次氏が提案していますが、「米国がダメと言っている」という程度の拒否理由しか聞こえてきません。

 日本国民の中に、米海兵隊や在日米軍の抑止力についてその必要性が納得されていない(「自分のところに基地負担が生じるくらいなら、そんな基地は要らない」と考えている)以上、日本国内に、今以上の米軍基地を作ることなく、また、今以上の米軍基地負担を生じさせることなく在日米軍の再編を考えていくことが、国民の選ぶ選択肢だったのではないでしょうか。


写真は岩国集会

平岡秀夫のブログ「至誠通天」-岩国集会3 平岡秀夫のブログ「至誠通天」-岩国集会1