昨日、米国のオバマ大統領とロシアのメドベージェフ大統領は、チェコのプラハで、「第一次戦略兵器削減条約」(START1)の後継となる核軍縮条約(新START)に署名をしました。プラハは、昨年4月5日に、オバマ大統領が「核なき世界」を演説で訴えた場所であり、その約一年後に、同じ場所で具体的な成果を上げたわけです。また、6日には、オバマ政権は、今後5~10年の核政策の指針となるNPR(核体勢の見直し)を発表しています。

 「今日の一言」で何度も核不拡散・軍縮に関する話題を取上げて恐縮ですが、前にご紹介したように、今年は、5月にニューヨークの国連本部で5年に一度のNPT(核不拡散条約)再検討会議が行われることになっている重要な年です。私自身は、5年前の8月に結成された民主党・核軍縮促進議員連盟の事務局長として核軍縮問題に取り組んで来ましたが、昨年のオバマ大統領と鳩山総理の誕生によって、核軍縮の機運が一気に高まってきたと思います。

 その中で、新STARTは、その内容として、米ロの戦略核弾頭配備数の上限を、それぞれ現行の2200から1500に制限し、核弾頭の運搬手段である大陸間弾道ミサイル(ICBM)、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)、戦略爆撃機について、その配備数の上限を700とするとともに、戦略兵器削減の検証体制も盛込んでいます。米国が欧州に配備を計画しているミサイル防衛の問題が残っていますが、核軍縮に向けて大きな進展となったと言えます。

 また、今回のNPR(米国政府が米議会に報告するもので、過去1994年、2002年の2回報告されています。)の内容も、画期的なものとなっています。その最大の新戦略は、「米国は、NPT加盟国でNPTを遵守する非核保有国に対しては、核攻撃をしないし、核攻撃の脅しもしないと宣言する」(消極的安全保証)というものです。この新戦略については、鳩山総理も、岡田外相も、「核兵器のない世界」に向けた具体的な第一歩であると高く評価しています。

 2月19日付けの「今日の一言:オバマ大統領への手紙」でもご紹介したように、私たち204名の国会議員は、同日、オバマ大統領に対し、「米国は、核兵器保有の目的を核兵器使用の抑止のみに限定する『唯一の役割』政策をとるべきである」と要請しましたが、その要請が、NPRの新戦略の導入に大きな役割を果たしたのではないかと自負しています。

 本日エレベータで会った岡田外相も、昨年12月24日にクリントン国務長官宛に出した書簡で、「『核不拡散・核軍縮に関する国際委員会(ICNND)』の報告書の中には、すべての核武装国による措置として核兵器の目的を核兵器使用の抑止のみに限定すること、NPT非核保有国に対する核兵器の使用を禁止すべきことなどの提案が含まれている。これらに関し、『核兵器のない世界』への第一歩として、私は強い関心を有している。」と述べたことが効果を出したと思っているのか、大層喜んでいました。

 しかし、私は、ここで喜んでばかりではいけないと思います。オバマ大統領は、世界に注目される形で行動を起こしているのに対し、世界で唯一の被爆国である日本のトップが、未だ世界の人の目に見える具体的な成果を上げることができていないからです。昨日、総理公邸で衆議院予算委員会の民主党議員と鳩山総理が懇談した際に、私は、鳩山総理にそのことを申し上げ、次のように提案をしました。

 「総理。本日(8日)オバマ大統領とメドベーチェフ大統領は、プラハで新STARTの署名をしました。これから、今月にはワシントンで核セキュリティー・サミットが、来月にはニューヨークの国連本部でNPT再検討会議が開催されますが、唯一の被爆国として大きな役割を果たして戴きたい。そのために、是非、『北朝鮮の核廃絶後』という条件付であっても良いので、『北東アジア非核地帯条約』の実現を提案して下さい。」

 私が昨年5月に国連軍縮部を訪問してホッペ軍縮部長と面談した際に聞いた話は、「北東アジア非核地帯条約は、まだどこの国の政府も公式の場で提案したことがないため、核軍縮に熱心なパン国連事務総長も、公式の場で、中東、中央アジア、アフリカなどの地域の非核化の話をできても、北東アジアの話ができないのだ。」との話です。鳩山総理には、是非、世界の要人が「北東アジアの非核化」を口に出す魁(さきがけ)となって欲しいと思っています。