先月25日にご紹介したように、国の来年度予算には、岩国飛行場の民間空港再開に関する予算が計上されています。国土交通省の「空港等機能高質化事業」175億円の中に20億円弱程度含まれていると見込まれていますが、具体的な額は、来年度予算成立時に配分されることになります。この民間空港再開については、政府は「空母艦載機部隊の移駐受入れが条件となっているというものではない」と説明していますが、別途、赤字問題も心配されています。
その心配の原因の一つには、今年3月11日に開港する茨城空港に見られるように、当初予測と実際とに大きな差が出ている空港が誕生していることがあります。茨城空港は、当初の需要予測では、国内4路線に1日12便運行し年間81万人の利用を予測していたにも拘らず、現時点では、定期便としては、アシアナ航空(韓国)のソウル便1便のみで、国内線はゼロとなっています。これで、県が実質的に運営するターミナルビルの経営赤字は決定的となっています。
更に、我が国で最大の航空会社である日本航空の経営危機が大きな関心を集めつつあることも、心配の原因の一つになっています。政府が出資する「企業再生支援機構」は、日本航空の支援要請に対し、近く支援決定する見込みが報じられていますが、その再建計画の中には、国際・国内路線の不採算路線からの撤退、子会社など約50社の売却・清算、グループの3分の1近い15、700人の人員削減が含まれているそうです。
このような状況ですから、市民の中に、「岩国飛行場が民間空港再開しても、赤字でやっていけないのではないか」という心配があることも不思議ではありません。
この点に関し、国土交通省が行っている岩国飛行場が民間空港として再開した場合の需要予測は、「新幹線利用又はその他空港利用からの転換により、供用開始時(平成24年)には、35、3万人の需要が見込まれる。なお、1日4便(岩国~羽田路線)の制約があるため、需要はほぼ横ばいで推移(平成34年でも36,5万人)」となっており、その需要予測の限りでは、十分に採算が取れるものとなっているそうです。なお、1日4便の羽田間の路線を有する庄内空港(山形県)は、平成20年度で36,7万人の旅客数となっています。
また、昨年1月に山口県知事の就航要請に対し、全日空(山元峯生社長:当時)は「前向きに検討したい」としていましたが、その後の情勢を踏まえ、全日空がどのように考えているのか、再確認する必要があると考えます。そこで、本日、昨年4月に社長に就任された伊東信一郎・社長にお会いして、全日空の方針を私なりに確認しました。
伊東社長及び全日空幹部は、「岩国空港の路線は、山口県周南市から広島県西部地区までの工場立地や居住人口を考えると有望な路線と考えており、従来から、早期の開設をお願いしてきた。空港の利用形態から、一日4便までしか取れないが、4便を全部全日空でもらって、効率的な運航をしていきたい。需要不足を指摘する向きもあるが、強力なライバル(福岡空港)を有する佐賀空港でも、需要創出に努力しており、同様の努力をしていくつもりである。なお、全日空は、採算性が低いと言われる地方空港路線の多くを抱えているが、経営は着実に行っており、能登空港で行われているような『搭乗保証』(地元自治体が一定の搭乗率(例えば、60%)を保証すること)を求めることは考えていない。」と説明してくれました。
会社の経営に責任を有する人の説明ですから、十分に社内での検討が行われた上での説明であると思いますが、この説明にある通りの運航が確保されるか注視していく必要があると思います。