平岡秀夫のブログ「至誠通天」-海賊対処法案への反対討論2 平岡秀夫のブログ「至誠通天」-海賊対処法案への反対討論1


 本日の衆議院本会議で、政府与党が「今国会でどうしても成立させて置かなければならない」としている法案のうち、「最後の3法案」と言われる①海賊対処法案、②租税特別措置法改正法案、③国民年金法改正法案が、再議決に付され、3分の2以上の多数で再議決、成立しました。私は、このうち、海賊対処法案について「再議決すべし」との動議に反対する討論を行いました。

 衆議院での再議決も珍しくない昨今の国会状況となりましたが、海賊対処法案の衆議院での再議決は問題が大きいと思います。と言うのは、「自衛隊の海外派遣」は、シビリアン・コントロールの観点から、本来、衆議院、参議院の両院の議決で承認を行うことが最低限の条件であると思います。承認を与えるべき参議院が本法案を否決した状況で、衆議院で再議決することは、その参議院の意思を踏みにじることとなるからです。

 以下、本日の衆議院本会議での私の反対討論をご紹介いたします。

「海賊行為の処罰及び海賊行為への対処に関する法律案」再議決動議反対討論


民主党の平岡秀夫です。民主党・無所属クラブを代表して、「いわゆる『海賊対処法案』を再議決すべし」との動議に対し、反対の立場から討論を行います。

海賊行為は犯罪行為であり、国連海洋法条約においても、旗国主義の例外として全ての国に取り締まりの権限が与えられていることから、民主党としても、各国が連携して対策を講じる必要があると強く認識しています。特に、ソマリア沖・アデン湾の海賊対策は、累次の国連安保理決議も発出されており、我が国としても我が国に相応しい取り組みを行っていくことが必要であると考えます。

しかしながら、本来犯罪行為への対処であるべき海賊対策についての政府の対応は、「始めに自衛隊の派遣ありき」であったと言わざるを得ません。そのため、多くの国民の皆さんは、大きな不安を感じているのです。

 その不安は、大きく別けて三つあります。

 
その第一点は、今回の政府の対応が「安易な自衛隊の海外派遣への道」を開くことにならないかという点です。麻生総理は、2年前の著書で、「自衛隊の洋上補給を始めて5年半」「『ネイビー』をこれだけ長い間遠方に展開したことは、我が国の歴史始まって以来のことです」と誇らしげに書いています。
 民主党は、法案修正で示したとおり海賊対策は第一義的に海上保安庁の責務と考えていますが、麻生政権は、本法案提出前に、海上保安庁では対応ができないのかという検討を先送りにしたまま、海上警備行動として、「遠方での終わりなき任務」に海上自衛隊を泥縄式に派遣しました。海上警備行動は、本来、わが国周辺海域を想定し、かつ恒常的活動とは考えられていない活動です。極めて遺憾なことです。


 不安の第二点は、ソマリア沖で自衛隊が武力紛争に巻き込まれることはないのかという点です。我が国が今回自衛隊を派遣している海域近くのソマリアは、内戦状態にあり、昨日も、自爆テロで治安大臣を含む25人が死亡しています。
 既に、米軍は、一昨年昨年と、ソマリア領内で軍事攻撃を行っており、国連の安保理決議1851号では、「ソマリアにおける必要なすべての手段をとることができる」とされています。米軍のソマリアでの軍事行動など、ソマリアでの武力紛争に自衛隊が巻き込まれる虞が懸念されます。


 不安の第三点は、自衛隊を海賊対策として海外派遣することにシビリアン・コントロールが確保されているのかという点です。今年3月から始まった海上警備行動が、海上自衛隊の艦船の派遣に加えて、今や、国会関与が全くないまま、海上哨戒機
PCの派遣や陸上自衛隊の派遣へと拡大しています。
 本法案が成立すれば、「海賊対策」という名目の下で、単に国会報告だけで、ソマリア沖・アデン湾近辺での自衛隊の活動が拡大されていきます。我々が法案修正を求めた「国会の事前承認」は、自衛隊に対するシビリアン・コントロールの確保から不可欠のものです。


 このような不安を残したまま、本法案の成立を認めることはできません。また、本来であれば国会の衆参両院での議決による承認に基づいて行われるべき「自衛隊の海外派遣」について、「『とにかく自衛隊を派遣すればよいのだ』という法案を再議決すべし」として、憲法第59条第2項の規定を軽々に使うことは、参議院の意思を踏みにじることとなります。再議決を求める本動議には、到底賛成することはできません。

 
民主党は、海洋国家・日本の姿勢として、海賊がいない平和な海をもたらすための根源的な対策に努力すべきと考えます。その意味で、海賊行為への対処に止まらず、海賊発生の原因の一つであるソマリアの混乱や貧困を克服するための努力こそ我が国が行うべきものです。
 ソマリアのいわゆる海賊ビジネスでの収入は年間約30億円であるのに対し、自衛隊の派遣にかかる費用は平成
21年度で約145億円も計上されています。にもかかわらず、今の自公政権には、平和な海をもたらすための根源的な努力を行おうとする姿勢は伺えません。
 速やかに解散総選挙を行って国民の信を問い、国民が望んでいる海賊対策を図るべきであり、その任に応えられるのは我々民主党であることを申し上げまして、私の反対討論と致します。