本日、今通常国会で2回目の党首討論が行われました。前回の党首討論が、応援団の気迫が凄くて、討論に立った両党首も相手方が言っていることがよく聞こえなかったという状況であったことから、その反省に立って、今回は、ある程度節度を持った応援(野次)に止まっていました。しかし、党首討論のあり方としては、国民がよりレベルの高い討論を聴くためには、もっと改善が必要だと感じました。今日はその観点から、一つの提言をしたいと思います。

 今通常国会で二人の党首の間で行われた今回を含む2回の党首討論で共通して感じたのは、二人の主張が噛み合わない場面が多くあるということです。議論したいことの前提となる数字がお互いに違っていて、その違いを指摘しあったり、(特に、麻生総理に関してですが)事務方が用意した想定問答を見ながらの発言なので、相手の問いかけに正面から答えていなかったりしているのです。例えば、次のような場面がありました。

 その一つは、日本郵政株式会社の西川社長の続投を巡る問題の議論の時です。鳩山代表が、「間違った方の首を切ったのではないか。民主党が政権を取れば、西川社長には辞めてもらう。」と問いかけたのに対し、麻生総理は、「民間会社の人事に政府が介入すべきではない。」と答えていました。しかし、日本郵政株式会社は、形式的には民間とは言え、現在の株主は国だけ、社長就任の認可権を国が持っていることを考えれば、筋違いの論です。

 その二つは、民主党の財源論を議論した時です。鳩山代表が、「一般会計と特別会計を合わせて210兆円のうち、70兆円近くが削減検討の対象となる。天下り先の団体での随意契約も4兆円ある。」と主張したのに対し、麻生総理は、「210兆円のうち、削減検討の対象となるのは30兆円程度。随意契約も2兆円程度だ。」と反論していました。その先にある議論が大事なのに、数字の食い違いを二人で言い合うのは、時間の無駄のような気がしました。

 その3つは、生活保護の母子加算を議論した時です。母子加算は、以前は2万3千円ありましたが3年間かけて削減されました。鳩山代表が、「アニメ館で117億円を使うくらいなら、母子加算の200億円を維持すべきだ。」と主張したのに対し、麻生総理は、「母子加算は無くしたが、それとは別に、高校に通う子供がいる場合の加算などを行った」と答えました。政策の優先度を議論しようとしている時に、数字の積上げの議論をしても噛み合いません。

 そこで、私の提案ですが、本番の党首討論を行う前に、二人の党首にそれぞれの陣営の数人の政策担当者を交えて、論点整理を行うための事前の意見交換をしてはどうでしょうか。それぞれ、党首討論で取上げたいテーマを3つずつ持ち寄り、事前の意見交換の中で、数字の確認、お互いの主張の確認等を行うのです。これによって、党首討論の本番では、議論が噛み合いやすくなり、見ている国民にも分り易い討論となるのではないかと思います。

 本日の党首討論の最後に、麻生総理は、「次回は、財源論と安全保障を取上げて、党首討論を行いたい。」と申込み、鳩山代表も、「是非、実施したい」と応じていました。次回の党首討論では、事前の意見交換を行って、本番では噛み合う討論が行われることを期待したいと思います。