本日、衆議院本会議で、「海賊行為の処罰及び海賊行為への対処に関する法律」案の趣旨説明と各党からの代表質問が行われました。「既に、海上自衛艦がソマリア沖に派遣され海賊対策に従事しているのに、何で今頃そんな法律を審議しなければいけないのか」と思われる方もあるかもしれませんが、その理由は、後で説明します。そして、明日から、海賊・テロ等特別委員会で審議されますが、私も、早速、明日質問をすることになっています。

 現在、海上自衛艦は、自衛隊法の海上警備行動としてソマリア沖に行っていますが、「警護の対象が日本船籍など日本と関係のある船舶に限られている上に、武器を使用する基準が厳しいために十分な活動ができない」と言われています。そこで、海賊対策新法では、警護の対象を全ての船舶に拡大すると共に、制止の警告を聞かず海賊行為をしようとするものに停船させるための射撃(船体射撃)を認めようとしています。

 確かに、海賊行為は、犯罪行為であり、その抑止や取締りをしっかりとやる必要がありますが。今回のソマリア沖への自衛隊の派遣は、海賊対策新法の制定も含めて、多くの国民が色々な不安を持っていることも事実です。明日からの法案審議では、その不安に関して政府を問い質していきたいと考えています。以下、国民の皆さんが持っていると思われる不安の主なものについて、説明します。

 第一の不安は、自衛隊がソマリア沖で武力紛争に巻き込まれないか、です。

 ソマリア沖の海賊対策に各国が行動を起こすように要請している一連の国連安保理決議(1851号等)は、国連憲章第7章の下での行動を要請しています。この国連憲章第7章は、「平和に対する脅威、平和の破壊及び侵略行為に関する行動」を規定している章で、武力行使を認めることもあります。ソマリア沖の海賊に関する安保理決議でも、各国に「とりわけ、海軍艦船と軍用機を派遣するよう」要請をしているのです。

 しかも、最新(08,12,16)の決議(1851号)では、「ソマリアにおける必要なすべての手段をとることができる」としており、「ソマリア領土内にある海賊基地に対して空爆や地上攻撃もできる」と解釈している国もあるそうです。となると、戦争であれば典型的な攻撃である空爆をある国が海賊基地に加えている一方で、自衛隊がその仲間の海賊を海で機銃操作をしているという事態も予想されます。まるで、戦争をしているようではありませんか。

 ところが、政府は、「海賊は私的集団であるから、憲法が禁じる武力行使には当たらない」との論を展開しています。「海賊が私的集団か否か」については、先月の国連事務総長報告書が、海賊のことを「海賊民兵」と表現し、「海賊グループの幾つかは、今や、その軍事的能力と資金的基盤からすれば確立されたソマリア当局(複数)とライバルになるほどだ」と報告しています。まさに、海賊が、武力行使の相手方となる「国に準じる組織」である可能性もあり得るのです。

 第二の不安は、海賊対策新法が、武力行使を伴う自衛隊の海外派遣への途を開くことにならないか、です。

 政府は、「既に発令されている海上警備行動も、新法で規定されようとしている海賊対処行動も、『軍事行動』ではなく、『警察活動』であるから、自衛隊が海外で行っても憲法違反にはならない」と主張しています。しかしながら、その論理で行けば、「外国における治安維持活動も警察活動の一種なので、その外国の要請等がある場合には、自衛隊が出動しても憲法違反にならない」との理屈が成り立ってしまわないでしょうか。危険な感じがします。

 また、新法で、海賊対処行動の場合に拡大された武器使用基準が、PKO法(国連平和維持活動法)、補給新法などで規定された自衛隊の武器使用基準を拡大することに繋がる虞もあります。海外での自衛隊の武器使用は、当初「自己保存のための自然権的権利」から始まり、その後、「職務を行うに伴い自己の管理に入った者の防護のため」へと拡大されました。海賊対処行動での武器使用基準の拡大が、他の場合に拡大されていく虞があります。

 第三の不安は、海賊対策として自衛隊が海外に派遣されることに、シビリアン・コントロールが確保されているのか、です。

 本日の総理答弁でも「海賊行為への対応は第一義的には海上保安庁の任務」としていましたが、それを制度的に担保するものは何もありません。防衛大臣は、「海賊行為に対処するため特別の必要がある場合」には、総理大臣の承認を得て、海賊対処行動をとることを命じることができることになっていますが、「特別の必要」の第一次的判断は、防衛大臣だけが行うこととなっています。なぜ、第一義的に任務を負っている海上保安庁の要請などが要件となっていないのでしょうか。

 この疑問に加えて、PKO法やイラク特措法では、自衛隊が活動を実施する場合には国会承認が必要とされているのに、海賊対策新法では国会承認が必要とされていないのは何故でしょうか。政府は、「自衛隊の海上警備行動は国会承認なしで行動できることとのバランスだ」と言っていますが、そもそも近海での活動で、国民の生命財産の保護等のためのものを念頭においていた海上警備行動を引き合いに出して論じるのは、不適当です。

 以上、三つの不安について説明しましたが、それ以外にも海上保安庁の対応能力の問題、海外での司法手続の進め方の問題、ソマリアの内戦状態をどう終結させるのかの問題など、多くの問題点があります。これからの国会審議の中でシッカリ議論してまいりたいと思います。